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他人の不幸は蜜の味【水の魔物と悪夢】

学芸大学のマンションに一人で住んでいた頃、水災に遭った。
あの日は日中は家にいなくて、夜帰ってきてからテレビでバラエティ番組を見ながらゲラゲラと一人笑っていた。

するとユニットバスから、『ゴボゴボ』と音がした。上の階の部屋がトイレを使うと、そんな音がうちまで響くのでいつものことだろうと気にせずにそのままテレビを観ていた。

するとまた『ゴボゴボ』と音がする。
いつもと何が違う予感がして、ユニットバスの扉を開くと、排水溝から生温いお湯が逆流して溢れ出ていた。

私は焦って、湯船に溜まりだしたお湯を洗面器て掬い、洗面台に流す作業を繰り返した。
しかし、掬っても掬ってもお湯は減らない。
どんどん溢れ出す。
途中から私が掬ってるお湯がまた、溢れ出してることに気づく。

まるで悪い夢を見ている感覚に陥った。
夢であってほしい。
このままでは部屋が水乱しになる。
容赦なく、お湯がどんどんどんどん別の部屋に移動していく。

ここままだと部屋にもお湯が浸水すると察し、とりあえず水に触れて欲しくない電化製品や物をとっさに高いところに置くことにした。

そして慌てて、一階に住む管理人の老夫婦にところに助けを求めに行く。

するとおじいちゃんが急いでうちに来てくれて、溢れ出す排水口を覗いてみるが、全く原因が分からない。
そんなうちにユニットバスを飛び越えて、とうとう部屋も浸水。あれよあれよと自分の部屋が水浸しになっていった。

電気カーペットは水の絨毯と可し、地面に置いてるものは多くの水分を含んだ状態になった。

なんて地獄絵図なんだ。
東京に暮らしてはじめての家でこんな水災に遭うなんて。

数十分で排水溝からの逆流は止まったが、原因は分からずじまい。
管理人さんが呼んで、一時間後くらいに一人目の業者が登場した。

しかしこの業者が見当違いな人で、原因究明できないまま、あれやこれやと水回りの設置を解体していく。
台所の排水口から出てきた水菜の細長い切れ端を見つけて、これがユニットバスを詰まらせた原因だと私のせいにしようとした。

待て、私はこの日は家に戻ってから、一度も蛇口を捻ってはいないし、水菜ではここまで浸水は起きない。
私が原因とは少し難しい。
一人目の業者は部屋を壊したあげく、何もできないまま帰り、二人目の業者がやってきた。

時間は既に夜中の2時くらいになっていた。
疲れ切った私と管理人の老夫婦。
地獄絵図のまま途方に暮れてると、老夫婦から『まだ時間がかかりそうだから、うちで今夜は休んでください。客間があるので。』と言わられる。

水浸しの家も気になるが、業者が出入りする状態では休むこともできない。
私は甘えて管理人の家の客間で休むとことにした。

客間のベッドで横になってみるが、家のことが気になって眠れない。
ようやくうとうとしたときには、悪夢を見て目が覚めた。

結局作業は朝までかかった。
今回の水災は、自分より上の階の人が原因だったようで、石か何かを流したせいで、私の部屋だけが水浸しになったらしい。

おかげで部屋はフローリングのリノベーションが必要となり、私は数週間の間、家で生活ができなくなってしまった。
あの頃、彼氏がいたはずなのに、彼氏に助けてもらった記憶もない。
多分、また浮気でもされていた時期なんだろう。

その間、私は友達の家や実家を転々とする生活をしていた。あの時、頼れる男とかいなかったんだろうな。

原因だった家の人から謝られることもなく、火災保険が何故か降りることもなく、私だけがとてつもなく被害にあった思い出。
馬鹿になった電気カーペットと水で腐った食器棚の金額だけ、管理人さんから負担してもらえることに。

私は東京で一人暮らしを始めてから、あまり家運がない。水災から別の家に引っ越しても、初日に下の階の住人に怒鳴りつけられたり。

2年の更新のタイミングで新たな家に映るのは引っ越し貧乏と言えるだろう。
またそろそろ更新のタイミング。

色々あって、この町で生きてると辛くて辛くてどうしようもないので、一駅でも二駅でも違う町に行こうと思ってる。
大好きな町なんだけど、親友も近くに住んでいてとても大好きな町なんだけど。

東京で一人で暮らすと言うことは決して容易いのことではない。

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