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ろうそくの物語

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非日常のろうそく屋さんで販売されているキャンドルの物語。 商品説明欄に書くには長すぎる、少しダークでファンタジーなお話。 短編小説メインです。 ファンタジーが好きな方、キャンド… もっと読む
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2022年10月の記事一覧

【短編小説】5.かがみの、とびら【その角を通り越して。】

←前の話 それからしばらく経ったある夜。 今日は満月のようで、いつもより明るい夜だった。 僕は古い本棚を整理しながら、 おばあちゃんが残した本や書き物を読み返していた。 何か変わったことは書かれていないかと 本の隅々まで読み込み、ゆっくりとページをめくる。 あの日。 扉が見えたあの瞬間、夢を見ただけかもしれない。 でも僕は昔、おばあちゃんから言われた言葉をしっかりと覚えている。 暖かいろうそくの灯りに包まれたこの部屋で。 僕はページをめくるのを止めて鏡を見た。 何か

【短編小説】6.こえのぬし【その角を通り越して。】

←前の話 僕は立ち上がり、鏡に触れた。 期待は裏切られ、鏡の中にある扉に触れることは出来なかった。 後ろで灯してあるろうそくの明かりに囲まれるように、 扉は鏡の中に映っている。 とても綺麗だ。 ゆらゆらと、揺らめく炎を鏡越しに見つめてどのくらい経ったろうか。 ふと、なにかの気配がして僕は後ろを振り返った。 「あんたの願いは叶った。さあ、これからどうする?」 僕は驚いて肩を震わせた。 振り返った後ろはいつもの本棚だ。 「お前もこっちの世界に来て、ばあさんの手伝いで