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若者や既存のクレジットカードを持てない人向けに独自カードを提供するPetal(米)

今日は、アメリカのクレジットカード スタートアップ Petalを紹介します。Petalは、若者や既存のクレジットカードを持てない人など信用スコアが低く、審査落ちしてしまう人向けに独自のカードを提供しています。

Petalとは?

Petalは、2016年に設立されたスタートアップです。直近では、2022年1月のシリーズDラウンドで$140Mの資金調達を実施しており、時価総額は$800Mです。
Petalは、信用スコアが低くて通常のクレジットカードが持てない方にクレジットカードと支出管理をするためのスマホアプリを提供し、過剰な支出や支払いの延滞を起こさないようサポートすることで信用スコアを積み上げてもらうことを意図しています。
通常のクレジットカードでは、加盟店からの手数料収入がメインとなりますが、Petalではそれに加えて支払いが延滞された場合の利息収入を主な収益源として捉えていることから、消費者金融やカードローンを変革するサービスとも言えるかと思います。

Petal 1とPetal 2

Petalのクレジットカードは、上図の2種類です。緑色のカードがPetal 1で、黄色のカードがPetal 2です。2つの違いは、Petal 2は、日常的な利用金額全体に対してのキャッシュバックがあることと、APR(21日間の支払猶予期間から延滞した場合に発生する年利)と利用枠が優遇されていることです。
Petal 2 が上位カードであり、一定の信用スコアを築けていない場合は、Petal 1からのスタートになることが多いようです。また、通常のクレジットカードと比較してAPRが高いことやキャッシュバックの条件も良くないため、信用スコアが一定ある(通常のクレジットカードを作成できる)人にとっては利点がないようです。

アメリカのペイデイローン

Petalが2018年に正式ローンチしたとき、彼らは既に10万人以上のウェイティングリストを抱えていました。
アメリカは、クレジットカード大国ですが、信用スコアがなく、カードを作ることができない人が若者を中心に4,500万人程度いると言われています。ホテルの予約など信用を担保するためにクレジットカードの登録を求められたりクレジットカードがないと決済ができないECサービスも多いです。そのため、クレジットカードがないことでサービスを利用できない層が一定割合発生してしまうというのは事業者にとってもユーザーにとっても課題です。

また、クレジットカードを持てない低所得者に対し、次の給料を担保に短期で少額融資を行うペイデイローンというサービスがあります。(日本で言う消費者金融のようなサービスです。ちなみに、日本の消費者金融利用者は、約1,000万人です。)
アメリカでは、二週間に一度給料が支払われるのが一般的なので、ペイデイローンで借りたお金は、二週間後に利息と加えて返済する仕組みで、返済期日に全額返さなければなりません。
このペイデイローンによる高利貸しは社会問題(悪質なケースでは、商品券などを組み合わせて年利300%以上というのもあるようです。ちなみに日本の利息制限法では20%まで。)にもなっており、これらの受け皿(低所得者の資金調達ニーズへの対応)としてもPetalは期待をされています。

Prism Data

Petalは、信用スコアの低い低所得者層の独自のクレジットカードの提供を通して信用スコアを高める支援を掲げていますが、収益のメインは消費者金融と同じく延滞による利息収入と考えられます。そのため、利息収入で一定の利益は確保しやすいですが、利益を最大化しようとすると、掲げているビジョンと矛盾してきてしまいます。
そこで、次の一手が2021年に新会社を設立したPrism Dataというトランザクションインテリジェンスプラットフォームです。このサービスは、CashScoreと呼ばれる独自の信用スコアをクレジットカード会社など金融サービス提供事業者が与信に活用できるようAPIで提供しています。

CashScore

CashScore は、リアルタイムの金融取引履歴を使用して、消費者の信用リスクを評価する革新的で予測性の高い方法です。データ活用によって、収入、資産、支出、財務変動など、消費者の主要な財務要因を説明します。CashScores は、従来の信用履歴を持たない何百万もの消費者データが利用できます。信用履歴が利用可能な場合、CashScore は、全体的な信用判断を改善する示唆を提供します。

Petalのところには、信用スコアが低い消費者が許可した未加工の銀行口座取引データが集まっているため、信用履歴(過去に何らかの支払い遅滞などでブラックリストに載っているなど)がない方のデータも多いです。
与信では、デフォルトリスク(返済不能に陥るリスク)が高い方を見極めるところが最も難しいので、シンプルにデフォルトリスクが高いかどうかを見極められるこのサービスは、従来審査で落とさざるを得なかった顧客を獲得できるチャンスになります。

SmartApproachも一般的には与信が難しいスタートアップ向けに特化した金融サービスという意味で、Petalのアプローチは大変勉強になる事例でした。また、今後どのような成長戦略を描いていくのかもとても興味深いです。

SmartApproachとは?

よいサービス、製品が、きちんと世に広まる社会の実現を目指して、これからサービス、製品を広めていくスタートアップ(挑戦者)のマーケティングとその資金をサポートするSaaSプロダクトです。


SmartApproachのテスト利用に付き合ってもいいよ(無料です)という企業さんや、事業立ち上げ手伝ってもいいよ(今6人ですが、ほぼ副業メンバーです)という方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただけますと嬉しいです。よろしくお願いいたします。