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リースバックの妙味

かねてからリースバック物件に興味があり、3月頃に不動産ポータルサイトでよさそうな物件を発見したので、実際に買付を入れてみた。

※リースバック・・・売主が自宅を売却し現金化しながら、売却後も賃貸契約により住み続けることができる仕組み。住み慣れた自宅での生活を続けながら、まとまった資金を調達することが可能。買主から見ると利回りが高い・入居付け不要・空室リスクが低いなどのメリットがある。

リースバックというと、競売前の任意売却や生活資金に困窮した売主の生活再建というイメージが強く、一部に業者の詐欺まがいの買取もあると聞く。そんなネガティブな印象もあって、売主にどれだけのメリットがあるのかは正直なところ疑問だったりする。

が今回、申込みを入れ資料を取り寄せたことで内情が見えた部分がある。
物件の買付自体は、別の現金一括買いの希望者が現れたため流れてしまったが、リースバックの妙味には触れられた気がするので、少し書いておこうと思う。

対象の物件概要

物件は東京都足立区の築28年のRCマンション。間取りは3LDKで70㎡程度、最寄り駅は私鉄2線で、いずれも徒歩20分程度という立地。

・物件価格:1,600万円

・家賃:120,000円/月(144万円/年)

・管理費:12,500円

・修繕積立金:16,500円

・固定資産税:92,500円(令和4年)

上記から、表面利回りは9.0%、実質利回りは賃貸管理を委託しないとして、6.2%程度。
リースバック専門業者が売主となっているため、仲介手数料はなし。(その分、売主からの買取価格は1,500万未満くらいかなと想像)
5年目以降10年以内で、物件価格と同額の買戻し特約あり。

ローン返済と賃貸契約とで比べてみると

売主から見ると1千万円超のまとまった現金が手に入るのは大きいと思うが、家賃12万はどうなのだろうか。
買主から見たら利回りは高いに越したことはないのだが、周辺の相場から見ても若干割高であり、売主側が被っているように見えなくもない。

なのだが。

業者から連携してもらった全部事項証明書を見てみると、売主は1995年の物件購入の際に融資を受けていて、その金利がなんと3.3%。
(いまは変動金利であれば0.2%台の金融機関もあるので、ちょっと考えられない金利だが、当時はそういうものだったんだろう・・)

抵当は外れていないのでローンの支払いは継続しており、35年ローンと仮定するとおよそ103,000円/月程度のローン返済を行っていることになる。それに管理費・修繕積立金を加えると、132,000円/月程度。

売却後の賃料は120,000円なので、月の支払いは1万円ちょっと安くなり、固定資産税も含めると年間では24万程度、売主側もランニング負担が減ることになる。

今後、リースバックは増えていくと予想

もちろんローン返済完了後は、管理費・修繕積立金のみの支払いになるので、この物件を終の棲家と決めていたら、売却のメリットはあまりないかもしれない。

けれど、事情がありまとまった資金が必要で、将来的にも住居を移す選択肢を取れるのであれば、資金調達の方法としてリースバックは機動的でなかなか有用だと思う。売却と引っ越しの手続を同時に進めなくていいし、引っ越しも時間をかけて検討ができる。

ちなみに今回の売主は遠方の親戚が介護施設に入所するにあたり、まとまった資金が必要になったのがリースバックでの売却理由とのことだった。

今回の物件に関していうと買主も売主も1995年設定の高金利の金貸しから還元を受けているような形ではあったが、そういったケースに限らず、今後リースバック案件は増えていくのではと予想している。

少し遡るが、そう思ったきっかけは、昨年横浜の築古1Rマンションを購入した際のこと。
売主が80代くらいの高齢夫婦で、売却の理由で「資産整理して身軽になりたかったから」と言っていたのを聞いたからである。

これを聞いて思ったのは、生活資金に困窮した売主という文脈だけでなく、「相続を前に生前に遺産を整理したい(減らしていきたい)売主」の文脈も相当数出てくるのでは、ということだ。
さらに言うと、資産整理の文脈であれば売値への強いこだわりより、自分が判断できるうちに手放したいというタイミングへの気持ちのほうが強く、価格面で買主側に交渉優位性があるとにらんでいる。

と言った理由から、しばらくの間はリーズバック案件のウォッチを継続していきたいと思う。


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