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市川京太郎は Karte.58 で我々に何を見せてくれたのか 【僕ヤバ ツイヤバ3】
「僕の心のヤバイやつ」最新エピソードが、一昨日、公開されました。Karte.58「僕は頼りたい」。相変わらずの面白さです。
【更新】思春期ラブコメ「僕の心のヤバイやつ」最新話が更新されました。面倒な山田
— 桜井のりお@僕ヤバ④1/8発売 ロ⑦発売中 (@lovely_pig328) November 17, 2020
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色々と感じるところはありました。でも、現時点では、それをうまく整理することができていません。これはこういうことなんだ、と自分の中で結論づけられない部分が、まだまだ残っています。
そんな中、ひとつ、確かなものとして感じられたのは市川の成長です。いや、そんなに大仰なものじゃないんですがね。
はっきり長足の進歩を遂げたスキルが、まずは一つあるな、と思いました。
危機察知能力です。
今回、市川の迂闊な言動(情状酌量の余地大)で山田が拗ねてしまいました。結果、スンしか言わなくなりました。後悔しきりの市川ですが、まずは目先の問題です。怪我で書けない授業ノートを山田以外からもらわねばいけません。他の同級生とあまり人間関係が無いのが、この状況では響きます。
「原さんなら」と次善の策を思いつく市川。“普通であれば”ベストチョイスです。温もりの人だし、真面目に書いてそうだし、ふだん普通に喋れてるしで適合率100パーセント。“ある意味”「字がブス」な山田より適任かもしれません。
と、ここで発動されるわけですよ。
「ダメな気がする なんとなく…」が。
これ、ファインプレーです。
意を決めて他から調達した結果、それきっかけで得るものもありました。スンスン問題も早期解決できました。
仮に異性の原から借りたなら、話は二話連続以上のものになったはず。長期ストレス展開です。山田はボロボロ泣き出し、小林と吉田は大騒ぎ、市川のライフはゼロになり、こじれにこじれたこと必至でしょう。SNSでも今回の判断に多くの歓声が上がっていました。
市川には、かつてKarte.41「僕は見えない」において、原絡みで山田の機嫌を損ねた前科があります。机を寄せ合ってノートを写していたのを、誤解されてしまいました。
その時の彼は山田の嫉妬を認識できず、態度の変化を不思議がっていたものです。しかし今回は一転、事前に認識し、最悪の展開を回避してみせました。長足の進歩と言えるでしょう。
いや、正確にいうと少し違いますかね。認識ではなく、認識より前の段階で、感覚的に不吉なものを察知したふうに見えました。なんとなく、でしたから。
背後に山田の後ろ姿があったので、きっと、そちら方面から不穏な何かを感じたのでしょう。えも言われぬ妖気をキャッチしたんでしょう。
そう。集中線に紛れて立っているであろう、妖怪アンテナで。
女子にイジられた! pic.twitter.com/Nff1q5TQX8
— 桜井のりお@僕ヤバ④1/8発売 ロ⑦発売中 (@lovely_pig328) January 17, 2020
市川といったら鬼太郎。
はい、すみません。ごめんなさい。
でも僕、このツイヤバ、大好きなんですよ。
山田グループ(というか関根)から、フォルムが鬼太郎に似ていることをいじられた市川。彼はそのこと自体よりも「いい返し」ができなかったことを悔しがり、鬼太郎のバディ、目玉おやじをDIYします。
次の有事に、それを使って「いい返し」をしようとの目論見です。
ところがそれを変なタイミングで山田に見つかってしまったから、さあ大変。わちゃわちゃわちゃ。
その後、二人が鬼太郎と目玉おやじのていで小芝居を始めるんですが、これ、抜群なんですよね。二人の初めての共同作業「猫のケンカ」(Karte.3所収)を、知能指数的には遥かに超える逸品です。
小芝居の中では、山田の独占欲が目を惹きます。
この目玉おやじを誰かが見たら、市川の面白さ、可愛らしさが発見されてしまう。自分だけのものでなくなってしまう。
そう思ったゆえの「誰にも見せてはならんぞ」なわけですよね。キャラの口調で甘くコーティングされていますが、実は劇薬。薔薇色の鎖で縛りつける薬効が込められています。用法用量を守ってほしいところです。
おそらく市川は、そういう山田の意図に気づいていません。「………なぜです?」と鬼太郎口調で返したのは、単にキャラを演じたからだけではないでしょう。本当に意味が分からなかったんだと思います。
市川、自己肯定感に乏しいですからね。山田が自分を束縛するなんて、思考の外。思いもよらないことでしょう。少なくとも、冬休み前ならそうであったに違いありません。
これ、今だったらどうでしょうか。鎧を外し、自己肯定感を回復しつつある今なら、山田の意図や思いの質量が分かるでしょうか。鎧を外したばかりでは、まだ難しいでしょうか。
正直、なんとも言えないところではあります。
あるいは市川も同じ欲望を持ってみれば、山田のそれが分かるのかもしれません。自分に無い感情は認識できないのが人間ですからね。持ってみれば、山田の思いに近づきはするはずです。
思えば、冬休みまでの市川に、山田に対する独占欲は見受けられませんでした。少しはあるくらいが自然に思える関係なのにです。
独占欲はどういう状況で起こるのでしょう。相手を愛おしく思うだけでなく、自分に自信を持ち、自分を愛しているからこそ起こるものであって……。って、結局、またそこに戻ってしまいますね。そういうことなんでしょう。
自分に自信を持って自分を愛するに足るだけの、自己肯定感。
何にしても、そこが第一歩になるのでしょう。そこからの独占欲、やがて山田に対する更なる理解というふうに、繋がっていくのかもしれません。
市川がそういう感覚を持ち、山田の思いに到達する足掛かりを得られるのは、いつの日になるんでしょう。もう少し時間がかかるでしょうか。
ここで、話を再びKarte.58に戻します。答えがそこにあったと気づいたからです。
「あ…あと あんまり足立に話しかけるなよ…」
今回、一番、長足の進歩を感じさせるのは、ここなのかもしれません。
足立はかわいそうですが。