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市川京太郎はお行儀がいい 【僕ヤバ 小ネタ】


 市川って、お行儀いい感じしますよね。どことなく品がある様子。
 いや、別にこのツイヤバ見てそう言ってるわけじゃないですよ。


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この桜井ギャグな山田の驚き顔、大好き。
(以降の画像は秋田書店・桜井のりお「僕の心のヤバイやつ」各エピソードより)


 さすがにこれは言葉のアヤっていいますかね。山田との距離感に迷う市川が、悩んで出した苦肉の策。
 まだ初々しいとこあります。
 懐かしいですね。
 Karte.17直後の作品です。彼が「山田」と呼べるようになるには、Karte.22でカッパの彼女を追いかけるまで待たなければいけません。

 思い起こせばあの日のカッパ……って、感慨に耽って脱線してしまいました。すみません。

 市川はお上品で、お行儀いい匂いがする。
 この仮説に基づき、過去の描写を振り返っていきます。

 内心と違う一人称「俺」を使ってみたり、露悪的に殺人本を読んだりする市川ですが、育ちの良さは隠しきれません。
 何より、一番距離の近い山田に発見されています。


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 冷たいパピコを持て余す彼女の前で、余裕しゃくしゃく、ハンカチ巻きにしてみせたあのツイヤバです。
 このあと彼女の妙手で余裕をぶち殺されるわけですが、お上品であること変わりないでしょう。

 うん?
 雑なとこある山田の “お上品” って、ちょっとアレなんですかね。
 普通レベルと大差ない?

 うっそ。
 そうかも。
 なんだか書いてるそばから怪しくなってきました。

 そういえば山田、この時もハンカチ持ってないんですね。Karte.60を経た今読むと、当時と違う響きを感じます。ここで気づきがあったなら違う未来もあったんじゃないか、と。
 まあツイヤバだから因果関係どうこう言うのも野暮な話ですが……って、また脱線してますね。

 お上品でお行儀な件。
 山田は一応本編でも指摘しています。Karte.7「僕は練りに練った」。


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 とは言え、これは「ねるねるねるね」の作成に苦闘する山田を救うため(ヒロイン史上屈指のどうでもいいピンチ)市川が空足を踏んだ話。はるばる2フロア往復してコップを用意したものの、既に問題解決済みで、格好がつかなかったからのアクションでした。彼の本性ではなかったんです。


 どうもしっくりきません。仮説が間違っているんでしょうか。あるいは山田に頼るのがよくないのかもしれません。少し、彼女の証言以外も見ていきましょう。


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 中学生で扇子とか、お上品っぽい(Karte.8)。時代や地域にもよるんでしょうが、僕のクラスにそんな小癪なやつはいませんでした。


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 現在の目黒第十二中でも、山田グループにおいては下敷き3うちわ1です。そもそも用意しているだけでも、お行儀いい感あります。


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 また、この自転車二人乗りのときの想像膨らまし加減(Karte.16)も、お行儀の良さの片鱗じゃないですか。
 ルールを破ってはいけないと、身に染みている感じ。
 これまで既に山田のせいで、いろいろルール破りに加担していて、今回も結局破ってしまった(お話上は、お行儀よい市川がそこでルールを破ることに意味があった)わけですが、それでも気にはなっていたということです。


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 あとはこれ。
 校内清掃中のツイヤバ
 足立や関根らが何もやっていない中、「掃除なんて業者がやればいいのに」と悪ぶりつつ、一人真面目に掃除するのです。
 山田のサボりの誘惑もいったん断り、終わらせてからの誘い受け。
 そういう面倒な行儀よさに、山田はまたグッとくるのでした。

 瑣末なことと言うなかれ。
 神は細部に宿ると言います。細かいところにこそ、その神髄が現れるというもの。こういう積み重ねが真実を支えていく、はずです。

 ただ敢えて言うと、本当に細かいところを言うとなんですが、二人乗りの例は人目を気にする気持ちが優っていて、“お行儀的には” 物足りません(結果としてルールも守りきれませんでした)。

 行儀は作法にかなうかどうかが問題。今そこにある他者の目うんぬんではなく、規範を守る心のありようとシンクします。ある意味自分との闘いです。自分を見つめる心の目で行動を律してこそ、芯からお行儀がいいのだと言えるでしょう。

 と書いていて思い出しました。そういう心の目との対話。



 Karte.49「僕はモヤモヤする」のイントロです。

 渋谷のイブを経た年の暮れ、部屋でひとりモヤモヤしている市川。そこに姿を見せたのが、イマジナリー京太郎です。


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 “心の中のもう一人の自分” 的な存在である彼は、モヤモヤする市川に、その原因である渋谷での出来事を反芻させます。


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 結果、よこしまなことばかり考えてしまう市川ですが、これはもうしょうがない。健康な中二の男の子です。劣情だって催します。
 そして次の瞬間。


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 イマジナリーに、やんわりと退去を促します。
 一人になりたいということです。
 頬を赤らめ股間に手を挟みモジモジするその姿からして、目的はずばりアレ一つ。

 いや自分の部屋だし、目の前のそいつは自分だし、いいんだよ好きにして!

 しかし市川は自分を律します。心の目が自分を見つめ続けていると知るや、全てを諦め、イマジナリーとの対話に没入していくのです。求められる作法のレベル以上の振る舞い。いやこんな状況に作法も何もないんでしょうが。
 うぅん、これは文句無し。必要以上のお行儀です。やっぱり彼はお行儀がいい。特にイマジナリーを意識した彼は。



 次回、Karte.62では山田家でお風呂をご馳走になる市川。バスルームは刺激に満ちています。お行儀いい彼ならそつなくこなすと思われますが、万が一にも粗相の無いようするためには、イマジナリーの緊急登板(中4回)が必要かもしれません。


おまけ:
 最新回Karte.61に関する言及をスキップしてしまったので、関連tweetを引用しておきます。


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