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「やしまーる」屋島山上交流拠点施設

用途が不思議な建築

交流拠点施設という名前から連想すると、大きめのロビー空間みたいなところをイメージするんだけれども、そうではなく、
細長い空間が環状になっていて、一周ぐるっと回れるようになっている。
環状の空間は床の高さが登ったり降りたりすることと外壁が基本的に全てガラスなので色々な視点場が生まれる。下から眺めたり、上から眺めたり内部への視点と外部への視点が生まれる。

変化のある建築

床の高さ、通路の幅、天井の高さ、屋根の高さ、勾配、さまざまな要素のパラメーターが一定でなく、常に変化する、これをコントロール仕切るのは至難の業であったのだろうと推測する。アーキフォーラムではデジタルツールがあれば出来ると仰っていたけれど、ツールがあってもこの建築を本当にいい空間として成立させるには全ての要素をイメージの中で統合する必要があると思うので圧巻だ。
疑問に思ったのは、全ての部分に内部空間が準備されていて、部分部分では内部と外部が並行するような場所があるのだが、ここまで内部空間を作る必要があったのか、たしかにエントランス受付やカフェや展示スペースは内部空間でなければならないので、分散させると入ったり出たりになる。そして一連の内部空間を経験して、中から外を見るという感覚、そして外に出られる扉がたくさんあることで外にも出られるということが一連の空間に抑揚を与えているような感じがするので、設計者がどう考えたのかを聞いてみたくなった。

外との関係を取り込む建築

開放性が高く、環状の廊下のような建築は外との関係をたくさん作り出す。海への眺望を生み出す高い場所、この建築で囲われた部分を中庭のように感じる場所、山の木々に囲まれた暗さを感じる場所、建築に囲まれた部分の向こうに空が見える場所、これらの場所は上記の建築の変化が外部とどう関係するかが緻密に計算されたできたものであることが実感できた。

囲まれた中庭のような場所
暗さがある場所

この場所であればこその建築

体験する人によっては、この環状空間の勾配のきつさが気になると思う。環状空間すべてをたとえば車椅子で周ろうとするときついと思う。しかしここは山の上であるのだから、そもそも車椅子で来ることが難しい。だからといって勾配が緩い方がいいということは否定できないのだが、勾配があることで生まれる高さが魅力的であることを実感する。子どもたちはきつい斜路を逆に楽しむかのように、次の魅力的な場所を探すようにこの建築を巡っていた。現実的にバリアフリー法上どうしているのかが気になるところではあるが、スロープ勾配で行けない場所はないという設計になっているのだろう。

うきうきと斜路をのぼる息子


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