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ポルシェ904 カーボンフレームプロジェクトのハナシ。

ポルシェ904は、1964年〜にたった100台余だけ生産されたロードゴーイングレーシングカーです。
今でいうところのGT3的なポジションでしょうか?
でも、もともとの生産台数が現在のGT3と比較して圧倒的に少ないので、今では超絶プレミアで2億とか3億になっているそうです。

このクルマを調べてみると、やっぱり凄いクルマで、スポーツカーの時代を塗り変えてしまったクルマと言えそうです。
904以前のスポーツカーは、まだ戦前車の香りが残る感じで、自動車のパッケージをまだ試行錯誤している発展途上なレイアウトのクルマが多いのですが、904が世に出た事で、縦置きミッドシップレイアウトで、ダブルウィシュボーン、アウトボードブレーキなどなど、904のパッケージの考え方がその後のスポーツカーのスタンダードになったと言えます。
僕も大好きなフォードGT40も、904の後です。

パッケージだけじゃ無く、スタイリングの面でも、現代のスポーツカーの源流となる、フロントウィンドシールドのシルエットの延長線上にフロントアクスルセンターが繋がる流れとか、時代を先取りしたエクステリアデザインは、今でも色褪せず美しいですよね。

本題に移りますと、その後のスポーツカー開発に大きな影響を与えたポルシェ904を現代の技術で再構築する、というプロジェクトが始まります。
極めて合理的に美しく設計された904を、当時の設計者に最大限の敬意を払いつつ、現在の僕たちが持つ解析技術、材料技術を投入して再設計して製作します。
特にメインフレームは、オリジナルは板金プレス部品を溶接で組み合わせた、断面が比較的大きいチューブ構造なので、CFRP(カーボン)への置き換えが上手くできそうな構成になっています。
また、オリジナルはGFRP(グラスファイバー)で製作されたエクステリアボディは、CFRP化する事で20%以上は軽量化できそうです。
サスペンションも動きや強度を解析して、アップデートします。

いずれの工程も考え方としては、Turning(チューニング)やRebuilding(リビルド)では無く、Updating(更新)な姿勢で取り組もうと考えています。
このクルマ、観察すればするほど、合理的に美しく作られています。
今も昔もレーシングカーの設計開発は、時間の制約の中で、どこか諦めたり妥協入れたりせざるを得ないものなので、僕らのようなエンジニアがじっくり観察すると、チラホラとそういうポイントが見つかります。
でも、904はパッケージングが極めて上手く行っているので、極めて少ない。
よほど能力の高い設計者が設計したんだろうなぁ、凄いなぁ、と感嘆しきりです。

でも、60年後の世界に生きる僕たちは、フェルディナント ポルシェ氏が見た事も無かった材料や解析技術、設計技術、加工技術を持っています。
なので、最高の素材(パッケージ)を持つ904に対して、当時の設計者に敬意を表しつつ、僕らなりに更新(Updating)させていただく、そんなプロジェクトになります。
当時の開発者の方々が天国から見てたら、面白がってくれそう、そんな気がします。
「おー、60年後の技術で俺たちの904を作るとこうなるのか!」って。

最近の私たちは、ゼロから設計して全く新しい製品を開発する、という作業ばかりだったので、今回のプロジェクトは「既に誰かが設計したプロダクトをよく観察、解析して、再設計する。」という作業でとても新鮮です。
どんなクルマが出来上がるのでしょうか?
楽しみです。

プロジェクトの様子をこのnoteで、備忘録的にレポートして行きます。
ぜひ皆さまも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

フヂイ エンヂニアリング

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