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『法善厳一郎 拾うは生者の反響』   第四話 確証とは 四

 ここまで来たらやるしかない。よし、押そう。優希は意を決して黒いインターホンのボタンを押した。家の中でチャイムが鳴る。
はーいと言う聞き慣れた声が廊下に響き渡る。正直なところ、優希の心臓は今にも破裂しそうなぐらい、強く、早く、脈打ち、思考はとっくに活動を停止していたが、もう後戻りすることはできない。声出るかな? ちょっと不安。優希は喉の辺りを軽く抑えながら小さく咳払いをし、玄関が開くのを待った。

 一方優希の後ろに立っていた霧野は家の外観をチェックしていた。瓦を用いた屋根に横長の二階建て。外壁はツートンカラー。一階は漆喰しっくいを連想させる深みのある白。それとは打って変わり焼き板と見間違える程に黒い塗装が施された二階部分。その要所には一目で金属製だとわかるシルバーのサッシが嵌め込まれていた。
 この家のコンセプトは和モダンってやつだな。それで何処どことなく懐かしい印象を受けたのか。ああ、そうだ間違いない。俺の爺ちゃんの家は古民家だからな……いやはや、お洒落な家を持ちで。
 霧野が一通り家の考察を終え、干渉に浸っていると、木目鮮やかな和モダン引き戸がなめらかに開いた。
「こんにちは。お久しぶりです。おばちゃん」
 優希の張った声が霧野の意識を現実へと引き戻す。
「あら、優希ちゃん久しぶり。元気だった」
 か細い声がよく似合う細身の女性が、引き戸から上半身だけをひょっこりと出して、優希に優しい笑みを送っている。そこから二人の他愛もない世間話が続いた。いつ以来なのか……その時の状況は……それから現在に至るまで……こんな具合である。その間も時田真奈の視線がチラチラと自分に向けられいるのを、霧野は見逃さなかった。さて、脈絡的にも彼女の関心的にも、そろそろ俺の事に触れる頃合いかな。そう思った時、優希の左手が一歩後ろにいた霧野をさした。
「それでねおばちゃん、急な話で申し訳ないんだけど、私、結婚することになったの。こちらが婚約者の霧野さん。まだ式の日取りは決まってないんだけど、するのは間違いないから」
「へえ! そうなの! 優希ちゃん結婚するの! まあ! 大変だわ。あっ、取り乱してすみません。私は時田真奈ときたまなと申します」
 時田真奈は引き戸から全身を出し、細長い指を両膝に当て、深々と頭を下げた。霧野も姿勢を正し、いつもより若干低い声で、
「初めまして、霧野文和と申します。以後お見知り置きを」
 日常では絶対に使わないであろう丁寧な言葉を用いて、紳士を装った。時田真奈はニコッと微笑み、
「そういう事なら、どうぞお上がりください」
 と物腰柔らかく中に入るよう促してきた。すごいですね、計画通り。我ながら驚いてるよ。などとアイコンタクトを取ったあと、優希と霧野は『お邪魔します』と息の合った声で、玄関ホールへと足を踏み入れた。

 幾つかの部屋を通り過ぎた後、二人はリビングへと案内された。霧野は扉を背にした状態でさらりとリビングを一瞥いちべつした。広さはおおよそ十畳ほど。右手には明るい色味のダイニングテーブルと椅子が置いてあり、その奥には灰色のカウンターキッチンが見て取れた。最初にリビングに入った時田真奈が、備え付けの戸棚を開けて何か作業をしている。
 次に左手を見ようと視線を動かした時、革張りで作られた白くて大きなL字型のソファーに、優希がドスっとまあまあの勢いで腰を下ろした。
「やっぱりおばちゃん家は落ち着くなあ。それにお洒落」
 本当に通い慣れてるんだな。まるで自分の家に帰ってきたみたいだ。微笑ましく思えた霧野であったが、ソファーの正面に置かれた大きな壁面収納テレビ台を見て思わず、おいマジか! いくら何でもデカ過ぎるだろ! と叫びそうになった。最早もはや元の壁など両脇の僅かな部分しか見えていない。そのせいであろう、真ん中に置かれた液晶テレビもそれに引けを取らないぐらい立派な代物であった。まさに圧巻の一言。霧野はポカーンとした表情のまま、ソファーでくつろいでいる優希の隣に腰を下ろし、目の前に置かれた小型のガラステーブルに、俺もお前もこの家には不似合いなのかもな。お前が不憫でならないよ……と優しく語りかけたのであった。それにしても……霧野は視線を眼前に置かれたテーブルからそのまま先へと伸ばし、あの大き過ぎる壁面収納テレビ台に移した。離れすぎじゃないか? ソファーとテーブルが部屋の中央付近まで来てるぞ。まあ、テレビが大きいから仕方ないのかもしれんが……陽気にくつろぐ優希を尻目に、霧野は一人困惑した表情を浮かべ、下を向いて思考を巡らせた。

「はい、お飲み物よ。熱いから気を付けてね」
 そう言いながら、時田真奈はブラックチェリーで出来た長方形のお盆を持ってカウンターキッチンから出てきた。小型のガラステーブルに優希と霧野のコーヒーが入った白いカップとソーサーを置き、空になったお盆を左手に、自分のコーヒーが入ったマグカップを右手に持ち、L字型ソファーの一番伸びている部分に腰を下ろした。
「いただきまーす」
 コーヒーカップを手にした優希は、二、三度息を吹きかけ冷ましたあと、口をすぼめてコーヒーをすすった。
「美味しい」
 優希の頬に笑窪ができた。
「優希ちゃんは昔からコーヒー好きだもんね」
 時田真奈はコーヒーの入った白いマグカップを手にし、母親が娘に向ける温かい眼差しで優希を見つめた。
「優希ちゃんから聞きましたが、時田さんと優希ちゃんは長い付き合いなんですよね。どのぐらいになるんですか?」
 コーヒーを一口飲み、喉を潤した霧野が、手に持ったカップとソーサーを置きながら尋ねた。
「そうね、確か優希ちゃんが家に通うようになったのが四、五歳ぐらいの時だったから──もう十五年ぐらいの付き合いになるかしら」
「そうですね。私が去年二十歳を迎えましたから、だいたいそのぐらいになりますね」
 右手でカップの取手を摘み、左手で飲み口の部分をさすりながら、何気なく優希は答えた。しかし、時田真奈はある事に気付き、はっとした表情で優希に問いかけた。
「ちょっと待って優希ちゃん。あなた大学に通ってたわよね。ということは学生結婚するってこと。お、お母様は何と? 当然ご両親は了承済みなのよね?」
 困り顔で慌てふためく時田真奈を見つめ、優希は固まってしまった。こいつはマズイ──ここまで突っ込まれるとは思ってなかった。そもそも俺は結婚した事がないから、手順がわからん。まさかこんなところで未婚が仇になるとは……思ってもみなかったぜ。どうする? これ以上嘘を重ねるのは危険か? まあいい。取り敢えず、いま頭に思い浮かんだ事を言ってみるしかないな。霧野は一つ咳払いをし、平静を装い答えた。
「それにつきましてはご安心ください。私達が結婚するのは、あくまでも優希ちゃんが大学を卒業したあとの話しであり、今すぐにという訳ではありません」
 霧野の隣で小刻みに頷いていた優希が、言葉をつむいだ。
「まだ親には言ってないんですよ。だってほら、失敗しちゃうと印象悪くなっちゃうじゃないですか。だから──おばちゃんに練習相手になって貰いたいなあ。なんて思いもあって、それで今日来たんですよ。ねえ、霧野さん」
 優希が見事なフォローをしてくれた。霧野は直ぐに頷き、同意を示した。
「それなら問題ないと思うわ。良かった。それじゃあ──始めましょうか。いいのよ、私が練習相手になってあげる。さあ! 本気できなさい!」
 その後、快く二人の申し出を受け入れてくれた時田真奈と、ありもしない『娘さんを僕に下さい』練習が続いたのであった。

 いや、疲れたな。今何時だ? 霧野はだいぶ軽くなったコーヒーカップを手に取り、壁に掛けられた時計へと目をやった。十七時三十分か。ということは、かれこれ五十分近くやってたのか。そりゃあ疲れるよな。霧野は最後の一口を飲み干すと、
「ご馳走様でした」
 弱々しく呟いた。
「はい、お粗末様でした。お代わりはいかが?」
 練習を経て距離が縮まった時田真奈が、悪戯っ子のように聞いてきた。霧野は頭をぺこぺこと下げながら、
「いえ、大丈夫です。これ以上飲むと、帰りにコンビニのトイレを借りることになるかもしれませんので……」
 謙遜と自虐を込めて返した。時田真奈は、空になったカップをお盆に乗せて、含み笑いを交えながら、
「そうなったら大変ね。トイレに行きたくなったら、いつでも使っていいからね。場所は廊下を出て一番手前の扉だから」
 と言い残しカウンターキッチンへと姿を消した。霧野は笑顔で会釈したあと、トイレに向かう為、リビングをあとにした。
 扉を閉めて振り返ると、大きさの違う三つの扉と、僅かに姿を見せる階段の手すりが、天井に取り付けられたLEDライトの暖色に照らされていた。この建物は横長の長方形だから、もっと部屋数が多いと思っていたが、三つしかないのか。その内一つはトイレ。もう一つはおそらく洗濯機や洗面所、脱衣所と風呂場が一緒になった水回りのスペース。ということは、残りの一つは『客間』か『書斎』といったところか。まあ、どちらにせよ、確認する事は難しいだろうな。いくら仲良くなったとはいえ、今更ルームツアーをお願いするのも変だし、だからと言って探偵の真似事をして他人の家の中を見て回るのは、気が引けるしな。
「いやはや、どうしたものか」
 大きな溜め息を吐くと、霧野はトイレへと向い歩き始めた。
 トイレまでやって来た霧野がドアノブを掴もうと手を伸ばした時、いきなりトイレのドアが開き、優希が出てきた。
「はあ、スッキリした」
「おっ! 入ってたのか。すまん」
 霧野は道を譲るため半身になった。が、ある事を閃き、すれ違い様に優希の左腕を掴んだ。驚いた優希は身を固め、怪訝けげんな表情で霧野の顔を見つめ返した。
「──どうしたんですか? 霧野さん」
「おっと、すまん。急に掴んでしまって」
 霧野は謝罪の言葉を述べ、掴んでいた手を離し、真剣な眼差しで優希を見つめ、
「実は一つ聞きたい事があるんだ」
 リビングに聞こえぬよう囁くように言った。何かを察した優希は、
「何ですか?」
 顔を近付け小声で聞いた。
「トイレ以外の二つの部屋なんだが、一番奥の玄関に近い部屋は水回りで間違いないだろう。だが、もう一つの部屋がわからない。あそこは何だ?」
「一つは水回りで正解です。場所も完璧。手前にあるもう一つの部屋は、亡くなった一男おじちゃんの書斎です。確か、おじちゃんが亡くなったあと直ぐに片付けを行った筈です。でも、あれ以降この家に出入りしていないので、今はどうなっているかわかりません」
「そうか、ありがとう。助かったよ」
 会話を終えた二人は無言で頷き、霧野は優希と入れ替わるようにトイレへと入り、優希はフローリングとスリッパが擦れる乾いた音を響かせながら、リビングへと戻って行った。

 用を足しリビングに戻った霧野は、会話が弾んでいる時田真奈と優希を尻目に、まだ入念に調査していない庭の方へと足を向けた。
 霧野の身長よりも高い掃き出し窓から見える庭は、やはり家の形に沿うように横長の形を成していた。殆どの面積は砂利で覆われていたが、かろうじて掃き出し窓の反対側にある細長い花壇から地面を見る事ができた。そこには四つの紫陽花が植えられており、梅雨が待ちきれないのか、もうだいぶ蕾が開き、赤い花が顔を覗かせていた。
 うん? みょうだな。こんなに広い庭なのに少し殺風景すぎやしないか。絶対他にも何かある筈だ。霧野は両手を後ろで組み、硝子に額が着いてしまうのではないか、というぐらいに身を乗り出し、食い入るように庭を見つめた。すると案の定、庭の奥側に、鉄筋コンクリートで出来た円柱形の物体を発見した。敷かれている砂利からニョキっと上に伸びているような印象を受ける。ということは下はもっと長いのか。それに加えてあの形状と位置──井戸か。そうとしか思えん。でも普通住宅街に井戸なんて掘るか? うーん……駄目だ、一人で考えてもらちがあかん。一丁聞いてみるか。くるりと反転した霧野は右手の人差し指で井戸らしいき物をさし、時田真奈に問いかけた。
「時田さん、お話中すみません。庭の端に見えるのは、井戸ですか?」
「あーそれね。そうなの、井戸なのよ。その……亡くなった主人が、家を建てる時にどうしても欲しいって言ったものだから、作ってもらったのよ」
 時田真奈は先程の位置に腰掛けながら答えた。しかし、霧野はその様子に拭い切れぬ違和感を覚えた。答えに窮したかのような返答、落ち着きのない瞳、こすり合わせるように動く両手。なんか怪しいんだよなあ。でも、これだっていう確証も確信もない。これ以上は詰められないか。それなら──霧野は爽やかな笑みを浮かべ、
「そうなんですか、亡くなられたご主人が。ということはあれですか、昔は家庭菜園もされていたんですか?」
 取り敢えず相手の話に乗ってみることにした。すると案の定、時田真奈は直ぐに同調してきた。
「そうなのよ! 昔はよく主人が庭に出て、野菜の面倒をみたりしてたのよ」
 渡りに船とはこのことか。霧野は安堵の笑みを浮かべる時田真奈を見てそう思った。が、ここで二人の会話を静聴していた優希が、突如口を開いた。
「あれ、そうでしたっけ? 私よくそこのお庭で遊んでましたけど、畑なんて見たことないですよ」
 霧野は瞬時に優希から時田真奈へと視線を移した。時田真奈は口をあんぐりと開けたまま固まっていた。この反応を見る限りでは、優希が言っていることが正解のようだな。さて、今度は何て弁解をするのかな。霧野は敢えて何も言わず時田真奈を注視し続けた。声にならない言葉を幾つか並べたあと、時田真奈は震えた声で、
「それは、あの、あれよ、そう! 優希ちゃんが家に遊びに来る前の話だからよ。だから見たことがなかったのよ」
 最初は弱々しく、最後は自信を持って力強く答えた。なるほどな、喋っている内にひらめいたか。ある意味では悪運が強い。ならば、最後にもう少しそいつを試させてもらおうか。
「なるほど、そうでしたか。ちなみにあの井戸はまだ使えるんですか? 昔、私の祖父母の家にもありましてね。懐かしいなあ。もっと近くで見てもいいですか?」
 そう言って霧野が掃き出し窓の鍵に指を掛けた時、
「その窓は開けちゃ駄目よ!」
 鋭い声が飛んできた。霧野は急いで振り返り時田真奈の表情を確認した。今までとは打って変わって鬼のような剣幕で霧野を睨んでいる。近くに座っていた優希は恐怖を感じたのであろう。身体を縮こませ、両手で耳をふさいでいた。張り詰めた空気が三人を包み込む。数秒後、我に返ったのか、時田真奈がはっとした仕草をしたあと、霧野と優希をチラッチラッと交互に見て、以前の穏やかな表情で話し始めた。
「やだ、大きな声を出してごめんなさい。実は以前あった大地震で家が少し傾いちゃったの。それで、開け閉めが大変だから、その窓は閉めっぱなしにしてあるのよ。だからね、開けないでちょうだい」
「そうとは知らず、開けようとしてしまい、すみませんでした」
 霧野は鍵から手を離し、軽く頭を下げ、定位置とかしたソファーに腰を下ろした。だが、追求の手を緩める事はなかった。
「しかし、そうなると庭に出る時はどうなさっているんですか?」
「その時は玄関から行くのよ。玄関の近くには物置きもあるからちょうどいいのよ」
 時田真奈は時折り右の頬をヒクヒクとさせながら、取り繕った笑顔で質問に答えた。
まあいいだろう。得られたこともあったからな。よし、今日はこの辺りでお暇しよう。これ以上質問を続けて押し問答になっても面倒だからな。霧野はまた楽しく会話を始めた優希に、もう日が暮れたし、帰るとしよう。と告げ、優希と共に時田真奈の家を後にした。

 日が沈み夕暮れを迎えた優希家の駐車場で、霧野と優希は今日の成果について話し合っていた。
「それで、霧野さん。何かわかりましたか?」
「間違いなく言えることは、あの人が嘘をついてるってことだな」
「それについては同感です。庭の話題になった瞬間、明らかに動揺してましたからね。問題は……」
 両手をポケットに突っ込んでいた霧野が、あとを引き継いだ。
「問題はそれが何なのかって事だろう」
「はい」
 優希は短く返すと、霧野の答えを待った。
「それについては──すまん、俺にもわからなかった」
 霧野は苦笑を浮かべ、ポケットから出した右手で頭をいた。
「フフフ、清々しい返答ですね。霧野さんらしいです。でも、謝らないで下さい。無理難題を押し付けたのは私ですから」 
 冷たく湿った微風に吹かれ、ひらひらとなびく触覚を、優希はそっと耳にかけた。落日と豪邸から漏れる明かりが、詫びしさ漂う表情を一段と際立たせた。こりゃあマズイな。やはりアイツに協力を要請するしかないか。霧野は落ち込む優希に優しく語りかけた。
「しょうがない。アイツにご登場願うとするか」
 優希は目を大きくし、にんまりと笑みを浮かべた。
「例の本格推理小説家のご友人ですね」
「そうだ。まずは俺が出来るか否か試してみたが、結局このざまだ。とはいえ、依頼人は優希ちゃんだ。どうする?」
 霧野は優希の返答を待った。優希はフフッと不適な笑みを溢したあと、真剣な眼差しで、
「わかりました。その人に会わせてください」
 と引き締まった表情で答えた。
「わかった、必ず会わせるよ。だが、今日は無理だな。もうお月様が顔を出してるから。後日連絡するよ。そういえば、番号交換してなかったな。いい?」
「構いませんよ。ていうか、今更ですか?」
 笑い合いながら、二人は携帯電話を取り出し、電話番号とメールアドレスを交換した。
 愛車に乗り込んだ霧野は、エンジンをかけヘッドライトを点けた。闇に飲まれそうな円形のモニュメントと銀杏並木が二つの光に映し出される。霧野は運転席側の窓を三分の一程開け、優希に別れの挨拶をした。
「それじゃあ、あとで連絡するから。お疲れ様」
「はい、連絡待ってます。お疲れ様でした」
 窓を閉めた霧野は愛車を発進させた。健気に手を振る優希の姿が、バックミラーに映る。視線を前に戻した霧野は、自身の不甲斐なさを鼻で笑った。結局、俺一人では無理だったか。優希ちゃんにはすまないことをしたな。でも、いや、だからこそ、
「頼んだぜえ、厳一郎君よ!」
 霧野は自信に満ちた笑みを浮かべ、静かに開いた西洋風門扉を出て、友人宅へと車を走らせたのであった。

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