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ニンジャ読書感想文【フラッシュファイト・ラン・キル・アタック】2023年ニンジャソン夏

はじめに


この投稿は、ニンジャスレイヤー公式/ダイハードテイルズ様が主催するイベント、『ニンジャソン夏』への参加作品です。

今回私は、ニンジャスレイヤー第3部のエピソード、【フラッシュファイト・ラン・キル・アタック】について感想を書きました。

家がなくても生活は続く

 20××年、寒風吹きすさぶ12月。私は唐突に住処と引っ越し先の当てを失いました。大学を出た2年後のことでした。それから数年が経ち、アラサーを目前にしてニンジャスレイヤーと出会って読んだエピソード、『フラッシュファイト・ラン・キル・アタック』のエーリアス=サンの境遇は、他人事とは思えないほどかつての私にそっくりでした。

 仕事を辞めた途端に行先も決まらぬまま社宅から追い出されても、鉄球でアパートを破壊されて生活の拠点を失っても、生活は続きます。どんな時も働かなくては生きていけません。私は途方に暮れて海を見ながら泣いたりもしたけど、エーリアス=サンはそんなハードな状況でも友人のフジキド=サンを助けるために過酷な潜入任務に挑みます。自分が困っている時でも、迷わず(しかし弱音は吐きつつ)他人に手を差し伸べられる心の強さは、エーリアス=サンの一番かっこいいところだと思います。

 ナンシー=サンと一緒にジツを活かした戦いを繰り広げるシーンは、普段のエピソードと違う緊張感があって手に汗握ります。クローンヤクザや敵のニンジャに憑依しながら戦うシーンは、アクションゲームのような面白さも感じました。緊迫した戦闘中もであっても、つい家がなくなったことを思い出して落ち込むところには、とても共感しました。家がないということはそれだけで気持ちを大きく落ち込ませるからです。そんな状況でも仕事はきちんとやるところ。それはそれとして弱音はバンバン吐いてしまうところ。エーリアス=サンの姿は、私にとってこの上なく身近に感じられました。

 また、このエピソードの中にはエーリアス=サンが着替えるシーンや飲み食いするシーンが数多く入っているのも、すごく心に残っています。「衣・食・住」は暮らしそのものです。そのうちの「住」を失っても自暴自棄にならず、きちんと身なりを整えて食事を摂ったからこそエーリアス=サンは戦えたのだと思いました。私も社宅から追い出されるその日に、勤務地で仲良くなった友人から餞別として栗ご飯と和菓子を貰って、車の中で食べたことを今でも覚えています。何があっても生活は続くからこそ、ご飯を食べることと好きな服を着ることは疎かにしないでおこうと思った瞬間でした。

 『フラッシュファイト・ラン・キル・アタック』を読んだ私は、その中で描かれるエーリアス=サンの姿を通じて数年前の自分の姿を見つめなおしました。当時は訳も分からぬままに乗り越えた出来事ですが、本当にオツカレサマ!と声をかけたくなりました。家がなくても仕事がなくても、ツテさえあれば意外と何とかなるものです。着の身着のままの私を居候させてくれた友人の優しさをかみしめながら、私もエーリアス=サンのようにどんな時でも友人に手を差し伸べられる優しさを忘れずにいたいと思いました。


これは多分なんらかの活力となるでしょう。