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池袋のガールズバーの浴衣イベント

 こないだ、自分でも気付かないうちにウンコを漏らしていて、右足首の内側にウンコがこびりついていました。柔らかめのウンコでした。幸運なことに、その事件は自宅で起こり、ズボンもそれほど汚れていませんでした。あまりズボンには触れずに右足首まで落下したようです。おパンツはもちろん汚れました。ズボンはほとんど汚れてなかったけれど、気持ち悪いのでおパンツだけでなくズボンも洗いました。洗面所でウンコを丁寧に洗い流してから、それらを洗濯機のなかに突っ込みました。

 そういった内容のことを、ツイッターに呟いたところ、大学時代の後輩のスズキクンクンがたいそう気に入ってくれたらしく、「あれはふちりんの今年一番のツイートですよ!」と褒めてくれました。今年一番のツイートがウンコに関するツイートというのは、恥ずかしくもあるけど、僕らしくもあることだなあ、と思いました。でも向上心は忘れたくありません。もっと面白いウンコツイートを目指します。って、別にウンコと関係ないツイートでもいいじゃんよ~!

 ふつうの飲食店とは違って、ガールズバーでは女の子をテイクアウトすることはできないから、お店に行くしかない。我々がお店に行かなければガールズバーは潰れてしまう。ただ、感染対策がしっかりしたお店に行き、僕もきっちりと感染対策をしよう。そう思って、僕は池袋のガールズバーに行きました。そのガールズバーの推しメンの「さらちゃん」の浴衣姿を見たいというのもありました。そのお店では、8月29日の日曜日、浴衣イベントを催していたのです。

 池袋駅に着いた僕は、駅近くの公園へと徒歩で向かいます。待ち合わせをしていた大学時代の後輩のスズキクンクンに会うと、「ふちりん、ウンコ漏れてますよ」と言われ、ドキッとしました。慌てて足首のところに目をやります。しかしウンコは見当たりません。どうやらスズキクンクンの冗談だったようです。僕はその日、下痢ぎみだったため、ウンコが漏れていてもおかしくありませんでした。だからクンクンの「ウンコ漏れてますよ」という発言は、僕にとってかなりのリアリティーがあったのです。

 たしかに僕はツイッターで、「もしウンコが漏れていたら、『ふちりんウンコ漏れてるよ』と教えてください」と書きました。しかし、冗談で「ウンコ漏れてるよ」と言われることは全く想定していなかったので、本当に漏れてると思ってショッキングを受けました。でもクンクンの冗談だと分かって、心からホッとしました。前回漏らしたときは自宅だったから良かったけれど、自宅から遠く離れた池袋でウンコを漏らしていたら洒落にならないからです。ああ、漏らしてなくて本当によかった。

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 それから僕とスズキクンクンは、一緒にファミリーマートに行って糖分控えめの発泡酒を買い、ファミマの近くの公園でまったり飲みました。僕は2本目の発泡酒を飲み終えると、安物の腕時計に目を落とし、「じゃあそろそろ行こうか」と告げました。腕時計の針は16時ちょうどくらいを指していました。ほろよい状態の僕は足取りも軽く、さらちゃんのいるガールズバーへと向かいます。

 その途中でクンクンにまた「ふちりん、ウンコ漏れてますよ」と言われ、ショッキングを受けましたが、2回目だったのでまあ大丈夫でした。ただ、「もし僕がウンコ漏らしているのがさらちゃんにバレたら、百年の恋も醒めてしまうだろう。さらちゃんの前でウンコを漏らすわけには絶対にいかないぞ!」とは思いました。でも今考えると、これじゃさらちゃんが僕に恋をしていることになりますね。違います。逆です。僕が、さらちゃんに恋をしているのです。とても淡い片想いを。

 我々はいよいよガールズバーに入り、さらちゃんがいるのを目にしました。「ああ、なんて可愛いんだろう! キスがしたい! が人間の本能!」と思いました。モノトーンのおしゃれな浴衣がよく似合っていて、髪型もとても素敵です。さらちゃんはしばらくすると、僕の席の目の前に来たので、ドリンクをあげました。ソフトドリンクです。僕はジンジャエールを頼みました。乾杯して、お互いにドリンクを飲むときだけマスクを外しました。もちろん、着席した際には検温と手指のアルコール消毒も行われました。

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 さらちゃんと普通に会話をしていたら、とても自然に「ふちりんウンコ漏らし事件」の話になり、「さらちゃん、もし僕がウンコを漏らしてしまったらごめんね。もしかしたら今も無意識のうちに漏らしているかもしれない。匂いを発しているかもしれない。自分では自分の匂いは分かりづらいから、もし臭かったら言ってね」と告げました。するとさらちゃんは、両手をあおいで僕の近辺の空気の匂いをかぎました。どうやら大丈夫だったようで、とりあえず安心しました。

 それからさらちゃんは、スズキクンクンに促されて、その場でゆっくりと一回転しました。逆回転もしました。さらちゃんがたおやかに一回転する姿を、僕はじっとりとした目つきで見つめました。僕は今までたくさんの小説を読んできて、けっこう多くの語彙があるはずなのに、「可愛いなあ!」という言葉しか頭に浮かんできませんでした。そしてだんだん頭がぼんやりしてきました。さっき公園で飲んだ酒のせいなのか、さらちゃんが可愛すぎるせいなのか、どちらなのかは分かりませんでした。たぶん両方のせいだったのだろうと思います。頭がぼんやりし過ぎてしまって、そのあとの出来事はよく覚えていません。

 ただ、ガールズバーを出たあとにまたぞろファミリーマートで酒を買い、路上に座り込み、スズキクンクンの仕事の悩み相談に乗り、彼が涙を目にうっすら浮かべていたことは覚えています。労働というものは、どうしてこうも人々を苦しめるのだろう。ツイッターを見ていても、非常に多くの人々が労働によって死ぬほど苦しめられている。労働というものが、「楽しいこと」にまではなり得ないとしても、少なくとも「苦しみ」ではないものになればいいのになあ。そう心から思いました。

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