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デフフットサルの現状

今日、フジテレビのワイドナショーでデフフットサルが取り上げられました。

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まだ観ていない方は、こちらからご覧頂けます!(45分20秒あたりから)

また5年前にも、NEWS ZEROさんに取り上げて頂いたので、こちらもあわせてご覧ください。

デフフットサルの応援団長であるDJはっしーさんが昨年2月のW杯アジア予選のレポートの動画を作ってくれました。
こちらも是非ご覧ください!


大手のメディアで15分間もの特集。
ツイッターでの反響も非常に大きく、一時期トレンド入りするほどでした。改めてメディアの力の大きさを感じました。

テレビの中では、伝えきれていなかった部分も多くあると感じたので、この記事でより深いことをお伝えできればと思い、書くことにしました。


選手はどのようにお金をやりくりしている?


デフフットサルの日本代表選手は、国際大会費用や合宿費用など基本的にすべての活動を自己負担で行っています。

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日本代表の選手と一括りにいっても、年齢層や働いている職場も全く違います。かくいう、私もまだまだ現役の大学生です。
まずは日本代表選手がどのように資金繰りをしているのかを書きたいと思います。

①自分の給与収入
②障がい者アスリート契約
③大学から援助
④都道府県や市町村から援助
⑤障害年金

主にこの5つが挙げられます。

①代表選手の中には、ごく普通の一般企業で働きながら自分で時間をやりくりしてトレーニングしている選手もいます。
フルタイムで働いていて残業などもこなしたうえで、日々練習に励んでいます。自分の生活資金の中から活動費用を捻出しているため、なかなか貯金が出来ない現状があります。
中には、職場に理解を得られず、大会などで長期間休まなければいけない時に、有給が下りずに大会への参加を諦めた選手もいます。
代表合宿は土日や祝日を含めた3連休の時に行うことがほとんどです。

②月1日勤務、週2~4日勤務、残業なしの週5フルタイム勤務、と雇用形態はさまざまですが活動資金の援助や代表活動を出勤扱いにしてもらうというサポートを会社から受けている選手もいます。
元々日本自体が女子サッカーやフットサルの環境が良くないですが、デフ界でも男子に比べて女子の障がい者アスリート勤務の選手は少なく、競技環境はあまり良くないようです。
自分はアルバイトインターンという扱いで株式会社メルカリさんからサポートを頂いています。

③代表選手の中に自分のほかにも大学生がいますが、私立大学であれば大学から活動資金を援助してもらっている選手もいます。
特にスポーツに力を入れている日体大などは、障害者スポーツ選手にも積極的な支援を行っているようです。
学生の場合は、親に負担してもらっているケースも多いです。
それだと親の負担が大きくなってしまいます。

④障がい者スポーツの普及などに積極的な都道府県や市町村の出身だったり、居住している選手は援助してもらっている選手もいるようです。
合宿で三重県や宮崎県などに行ったときには、かなり手厚く歓迎して頂きました。

⑤障がいをもった人に支給される「障害年金」というものがあります。
障害者手帳の等級とは別の内容ですが、判定基準は障害等級が1級・2級に該当する障がい者のみに支給という形がほとんどです。
1級で年間97万円、2級で78万円が国から支給されます。
「障害年金」の本来の使い道は代表活動ではなく、補聴器など生活において障害者が困らないようにと支給されるものです。
しかし、お金をやりくりするためにこの障害年金で活動費用を賄っている選手もいます。
ちなみに私は、障害が軽いため受け取る基準に達していません。

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昨年の年間代表活動費用は約130万円以上でした。
去年の11月のスイスW杯は60万円近くかかりましたし、一昨年のスペイン遠征も40万円近くかかりました。
部活やって、学業もあって、そのなかでバイトをする。
到底無理な数字です。
代表を始めて1年間は寝る間を惜しんでバイトをやっていましたが、それでパフォーマンスが落ちては元も子もないですよね。
初めて参加したデフサッカーのアジア大会後に貯金が底を尽きて、生活も苦しくなりました。
もちろん自炊していて、米ともやしと豆腐と納豆と鶏むね肉とプロテインだけで生活していて、すき家の340円の「まぜのっけ朝食」が贅沢だった時期もありました。
その後参加していた合宿の交通費はクレジットカードのリボ払い、いわゆる借金で対応して、ずっと溜まっていました。

この現状だと、選手の実力での競争の前に金銭面をクリアできるかどうかというところから始まってしまいます。
実際に実力はあっても、お金がないために辞退した選手がいます。

自分は上述した方法では資金繰りが出来ませんでした。
しかし、そこで代表をやめてしまえば、その現状を肯定してしまうことになってしまいます。そこで、その現状を打破すべく、個人でクラウドファンディングに挑戦して成功しました。それだとその場凌ぎにしかならないので、その実績をアピールし、株式会社メルカリさんとアスリート契約を結んでいただきました。

僕は多くの方の支援のおかげで、今でも活動を続けられています。

でも、生活が苦しい選手、辞退しなければならなかった選手もいます。

理想は、選手の自己負担がない状態。

協会として、少しでもそこに近づけるように頑張らなければいけません。



日本ろう者サッカー協会の現状

日本ろう者サッカー協会には多くのスポンサー企業さんから支援を頂いていますが、それでも選手の自己負担額はあまり変わっていません。

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デフサッカーはデフリンピック種目に入っており、デフフットサルはデフフットサルは入っていません。(2023年冬季デフリンピックにてデフフットサルが追加されるという話も出ています)

私はデフサッカーの日本代表選手としても活動していましたが、助成金の対象であるデフサッカーでも自己負担額は高かったです。

デフサッカーもデフフットサルも、金銭的に苦しいことは確かです。

結局のところ、協会の資金が十分にありません。
そのため、理事など協会内部の人間も無給で働いています。
つまり、普段生計を立てている仕事をやりながら、合間を縫って協会の仕事をしています。
つまり、協会の仕事に100%フォーカスできていません。

さらに、理事のほとんどが聴覚障害者で、専門的な知識を持った人がいません。プロモーションや広報なども手探りでやっている状態で、スポンサー獲得に対する効果的な営業方法も知らないというのが協会の現状だと思います。でも、資金がないから仕方ない部分もあります。

自分自身も今の環境に疑問を感じ、なんとか改善していかなればならないと思っていますが、それを協会に丸投げするのは違います。
僕自身、何かできることはないかと模索した結果、
マーケティングやブランディングなどを含めたスポーツビジネスを学ぶために、大学ではスポーツ産業学研究室に入りました。
実際にスポンサーなどの営業やマネタイズしていく方法を知り実践することが重要だと感じて、日本障がい者サッカー連盟でインターンすることにしました。
クラウドファンディングをやった時に、少しでも知ってもらおうと、ビラ配りをしたり、自分から新聞社に連絡して取材してもらったりしました。

有名な那須川天心選手でも、このように言っています。
自己負担をなくしたいなら、協会だけでなく選手ももっと出来ることをやっていかなければならないと感じます。
選手ひとりひとりが自分に出来ることを最大限やる、
それだけでもかなり違うと思います。


デフフットボールの可能性

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デフサッカーやデフフットサルは普通のサッカーやフットサルとルールは変わりません。
確かに、インパクトの弱い障がい者スポーツとも言えますが、健常者と障害者が混じりあうハードルが低い競技だとも言えます。

例えば、健常者が気軽に入れるパラスポーツもありますが、結局はパラスポーツチーム同士でないと試合をすることが難しいです。

しかし、デフサッカーやデフフットサルはルールが全く一緒で、主審もフラッグを使ってレフェリングするだけです。

つまり、デフサッカーやデフフットサルのチームと健常者のチームが試合する事も容易です。

例えば、以前デフフットサル日本代表と福井県リーグ選抜が親善試合を行ったりしています。


これがデフフットボールの利点であり、ここを活かした攻め方をすることが一番効果的だと考えます。


マイナースポーツはどこも厳しい現状がある。

このツイートはオリンピック種目に入っているフェンシング日本代表の三宅選手のツイートです。

オリンピック種目の競技でも、助成金やスポンサーフィーだけでは足りず、自己負担や会社に負担してもらっているのが現状だそうです。

「障害者スポーツは障害者スポーツだから自己負担」というよりも、「障害者スポーツはマイナースポーツだから自己負担」というほうが合っているように感じます。

その競技を見たり、知ったりできなければ、結局のところは支援の方法すらわからないのですから。

ワイドナショーという大手メディアの番組で取り上げてもらい、多くの方に知って頂けたことは本当に嬉しいです。

しかし、これで、一過性なもので終わってしまえば結局意味はありません。

これからも、いかに多くの方に知って頂ける活動を続けられるか。
一過性のものから長期的なものに変えられるかどうか。
より効果的なマーケティングができるかどうか。
より、支援しやすいような仕組みを作れるかどうか。
選手一人一人が最大限知ってもらえる努力を出来るかどうか。
協会がもっとスポンサーを集められるかどうか。

ここにかかっていると思います。


最後に


来年にはブラジルで夏季デフリンピックが開催されます。
2025年には夏季デフリンピックを日本に招致しようという動きが出ています。
その時により多くの方に見て頂けるように、今から自分に出来ることを精一杯やっていきたいと思います。

最後に、
ワイドナショーの特集を見て頂いた方。
この記事を見て頂いた方。
温かいコメントをして頂いた方。

本当にありがとうございます。


デフフットボールがより多くの方に知ってもらえるように、
デフキッズの希望や勇気を与えられるように、
少しでも多くの方に勇気や感動を与えられるように、
未来の代表選手がより良い環境でプレーできるように、

応援して頂いている方への感謝の気持ちを忘れずに、
4年後のW杯(冬季デフリンピック)で世界一を獲れるように、
選手としてのレベルを上げることはもちろん、
環境改善に向けて全力で頑張っていきたいと思います。

そして、デフフットボールだけではなく、
デフスポーツ、
他の6つの障がい者サッカー、
他の障がい者スポーツ、
そしてすべてのマイナースポーツの現状を知って頂き、
少しでも環境を改善できるようにと願っています。

ロンブー敦さん、片耳が難聴であることを告白したJリーガーの町田選手も拡散してくれました。
本当にありがとうございます。

私は力の限り全力で頑張ります。
誓います。

でも、僕の力だけじゃ力不足です。
皆さんのご協力が不可欠です。
マスメディアの皆さん。
応援してくださるファンの皆さん。

どうか皆さんの力を貸してください。

よろしくお願いします。



野寺風吹

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