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あゝ私の青春、いざゆけ若鷹軍団

突然だが、私は福岡ソフトバンクホークスのファンである。
1月に上映が開始された、ホークスが福岡にやってきてからの30年間のドキュメンタリー映画「思い出を、超えていけ」を見てきた。

ちなみに九州では多くの映画館で上映されるものの、関西ではなんばパークスシネマのみ。
南海ホークス時代のよしみだそう。
会社にも、阪神ファンでもオリックスファンでもなく、ホークスファンのおじさんが何人かいたりする。
不思議に思って聞いてみると、南海ホークスの時代からファンだそうだ。
いつもその人は鷹の祭典の時期に5連休を取るので、覚えてしまった。

なんばの映画館には鷹党のおじさま、(恐らく?)野球全般が好きそうな若年層、坊主頭の野球少年たち。老若男女問わずいた。
ホークスは言わずとしれた常勝軍団。
(最近はオリックスの勢いがあるけれど・・・)

この映画はホークスが福岡にやってきてからの30年間の歴史を追いつつ、往年のスター選手のインタビューを交えながら構成されている。
王会長、小久保新監督、工藤、秋山、和巳、杉内、和田、松田、長谷川、柳田、牧原、甲斐が出演。
個人的には、日本球界の元気印の川崎と平成の3冠王松中が出なかったことは少し寂しかったものの、昔の映像が多く使われていて懐かしかった。
自分が小学生時代、福岡ドームや宮崎キャンプ、西戸崎の練習場、雁ノ巣球場で追っかけをしていた時期の映像も多くあった。
柴原、大村、多村、本多、渚、などなど。
途中、応援歌も入っていて、つい口ずさんでいた。
例えば、小久保が4番でスランプで打てない時期を経て、ようやくヒットが出た場面。
「鷹のプレイグラウンドに帰ってきたんだ、小久保闘えよ勝利のために~かっとばせ小久保」
子供の時の記憶はずっと覚えているものなのかもしれない。

ホークス史の様々な出来事の当時、どんな心境だったのかを出演者たちが答えていく。
草創期。ホークスは弱小チームでファンから生卵を遠征バスに投げつけられることもあった。
日本ハムとのプレーオフで和巳が負けて、マウンドから立てなくなった場面。
リーグ優勝はできても、プレーオフで勝てず、中々日本シリーズに進出できない年が続いたこと。
当時選手たちがどんな思いだったのかを聞くことができるのはとても貴重だし、面白かった。

この映画を通して、特に面白いと思った場面は3つある。

1つ目はスポーツチームといえど、選手をどう使うか、チームの雰囲気や士気を上げるためにはどうすればいいのか、それは一般の企業と似ているということだ。
例えば、ホークスの草創期から常勝軍団を作り上げた王会長はどの選手も尊敬をしていて、「王会長のために勝ちたい。勝って、会長を喜ばせたい」この気持ちが共通していることだ。
自分自身、この場合王会長にあたるような上司のために、会社のために働きたいと思えるような忠誠心がある自信はない。
ただ、これはひとえに王会長の持つカリスマ性とホークスや勝利に懸けてきた想いが浸透しているからだと思うし、同じ方向を向いている組織は強いと感じた。
小久保も王会長が大病を患ったタイミングで最後はホークスで王会長を胴上げしたいと巨人からホークスに帰ってきた。
人生で、「この人のためにしたい」と思える存在に出会えることはとても素晴らしいことだと感じた。

2つ目は杉内VS涌井の投手戦で勝ち越しタイムリーを打った長谷川の「俺じゃないとあの場面で打てなかったと思う」発言だ。
長谷川はよっぽどコアな野球ファンでないと知らないと思う。
選手人生はホークスで全うしたいぶし銀の職人肌な選手だ。
ドラフト順位が高いわけでも、甲子園や大学野球で活躍したわけでもない。ただキャンプでも最後まで残って練習されていたのを覚えている。
※キャンプでは最終練習まで出待ちをしてサインや写真を貰っていた。
最後まで残っている選手は必然的に沢山サインを頂いた。
長谷川や明石、福田や本多には沢山頂いたので覚えている。
地道に練習を重ねて、大事な場面で確実に決める。
実はこの時、長谷川は肩を骨折していたそう。
それでも気合いで出場したのはかっこよかったし、自分の職業・役割に誇りを持って、「自分じゃないとできなかった」と言えるのはとてもかっこいいと思ったし、自分も社会人として、仕事にプライドを持てるように努力をするべきだと反省した。

3つ目は牧原のホークス3軍制度について
「綺麗ごとで済ましてほしくない。俺は死ぬ気で練習したし、努力をした。」この発言だ。
ホークスの3軍制度は言わずとしれた名物制度だろう。
補足するとプロ野球は1軍2軍育成選手があり、ドームで行われる試合に出場できるのは1軍登録された29人のみ。
他の2軍の選手は2軍リーグで試合を行う。
3軍は社会人野球チームや四国アイランドリーグなど独立リーグと試合を行う。
勿論環境は2軍よりも十分とは言えず、3年間活躍できない場合、戦力外通告を受ける。

千賀、甲斐、牧原は3軍制度の1期生として、入団した。
今の3人の活躍はご存じの通り。
千賀はメジャーリーガーとして活躍しているし、甲斐は日本代表としてWBCで闘った。牧原も複数の守備位置をこなすユーティリティプレイヤーとして欠かせない存在だ。
そんな3人もスター選手を輩出したとなると、まるでホークスの3軍制度が素晴らしいものであるかのように感じる。
実際、私もそうやって思っていた。

けれど、その裏には同期入団の柳田や山下へのメディアの注目度の高さと比較して悔しい気持ちをバネにして人一倍努力をしていた。
牧原がこの発言をするのも、それだけ練習したんだという自負があるからで、気合いと根性と努力が単純だけど、一番大事なことだと思う。
この発言の後に千賀と甲斐の勝利後のマウンドでのハグや3人揃ったヒーローインタビューの場面を見ると、ただ凄いだけでは表現できない気持ちになった。
野村監督の言葉ではないが、「雑草魂」これが一番強いものかもしれない。
環境は違えど、自分も会社の中では期待をされているわけでもないし、周囲の能力の高さに怯むことばかりだが、愚直に努力することしかできない。と励まされた。

勿論、ホークスファンにとって、秘蔵エピソードの詰まった面白い映画であることは間違いないが、全国の社会人にみて欲しいと思った。
マネジメント層、若手、中堅、どの人が見ても、それぞれに刺さったり共感できる部分が多くあるはずだ。

最後に。
映画の中でも取り上げられていたが、スポーツには人を、世の中を元気にして、夢や希望を与えることができると思う。
冗談なしで。
特に地元にあるチームならなおさら。
改めて、映画を通して野球の素晴らしさに気づいたし、3塁側外野席でいざゆけ若貴軍団を歌いたくなってしまった。

最近は映画を沢山みている。
映画館のスクリーンで、その映画が好きな人と同じ空間で見るのは、一人でipadの小さい画面で視聴するより、感動や感じるものが大きくなると気づいた。

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