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吉松真理|FLY_027

お菓子という”おいしい”ツールを通して、つくる人とたべる人の距離を縮めたい。

吉松真理(bon pin gâteaux店主)自由大学では「お店をはじめるラボ」を受講。今年3月、代田橋商店街でカーゴバイクが目印のキュートな焼き菓子屋さん「bon pin gâteaux(ボン・パン・ガトー)」をオープン。でも「お店を出すことや、焼き菓子屋さんになることが夢だったわけじゃない」という吉松さん。吉松さんが「焼き菓子を通して伝えたいこと」って? じっくりインタビューしてきました!

Q.お店をはじめる前はどんなお仕事をしていたんですか?

昔からお菓子をつくるのが好きで、以前は料理教室の講師兼営業の仕事をしていました。でも、そこでは料理を教えることよりも「生徒をいかに集めるか」や「売上をいかに上げるか」という数字を求められることの方がウェイトが高かったんです。自分がいいと思っていないことでも、自分の目先の利益のためにお客さんにすすめなければならない。それが自分の中で大きなストレスでした。ある時糸がぷっつり切れてしまって、会社を退職。その後お菓子作りの勉強のために、フランスへ短期留学をしました。

Q.フランスでどんなことを学んだんですか?

お菓子作りはもちろんだったのですが、フランスでは大きな街でも小さな街でも日常的にマルシェが行われていて、生産者と消費者の距離がすごく近いのを感じました。日本のようにスーパーで食材を買うよりも、マルシェのような場所で買った方が生産者の顔も見られるし、人と人とのつながりも感じられる。そのときに、日本でももっと生産者と消費者の距離を縮めたいなって漠然と思いました。

Q.短期留学から帰ってきたあと「お店をはじめるラボ」を受講されたんですよね。

留学から帰ってきたときに偶然「お店をはじめるラボ」の開講を知り、ピンときて申し込みました。授業では小さくお店を始めている方たちのお話を聞くことができて、中でもカーゴバイクのケーキ屋さん「POMPON CAKES」を営んでいる立道嶺央さんのお話は印象的でした。そして、なにより自分と同じようにいつか小さなお店をひらきたいと思っている仲間と繋がれたことも大きな財産になりました。

Q.授業を受けたあと、お店を始めるために動き出したんですか?

いいえ、違うんです。フランス留学がすごくよかったので、その時はお金を貯めてもう一度フランスへ留学しようと思っていました。でも当時、留学のお金を貯めるために自分の好きなこととかけ離れた仕事をしていて、「お金のためだけに仕事をする」ということにすごく違和感を感じてモヤモヤしてしまったんです。

前職(料理教室)の上司で、焼き菓子屋さんを営んでいる方に悩んだ時よく相談をしていて、その時も相談をしたら「いずれ苦労する時は絶対に来る。お金のためだけに働くことにモヤモヤしているんだったら、今自分ができること、やりたいことをやった方が絶対にいい。やりたいことをやって、いずれお金が貯まったらまた留学すればいいよ」というアドバイスをいただいて、無理せず、今自分ができることをすればいいんだ! って背中を押してもらいました。

じゃあ、今の自分にできることってなんだろう? って考えたときに思い浮かんだのは、やっぱりお菓子作りでした。さらに「お店をはじめるラボ」で立道さんが低資本でできるカーゴバイクでお店を始めたというお話を思い出し、カーゴバイクなら私にもできるかも! と思い、POMPON CAKESのカーゴバイクを作っている「サンリン自転車生活社」の三輪さんに連絡をして、まずはカーゴバイクでの販売を模索しはじめました。

Q.では、そのあとここにお店を?

それも違うんです(笑)。その少しあとに仕事を辞めて、気持ちをリフレッシュするためにまた1ヶ月だけフランスへ行きました。そこでWWOOF(ウーフ:食と住を無料で提供してもらう代わりに、農業や仕事を手伝うしくみ。金銭の授受がいっさい発生しない)から紹介してもらった、自給自足をするホストのお家に2週間お世話になりました。日本にいたらお金を払って食べ物や欲しいものを買うのは当たり前だけど、それをお金の支払いではなく、自分たちで自然につくり出していくっていう体験がすごくよかったんです。

その後日本に帰ってきて、カーゴバイクで販売をするための工房用の物件を探しはじめました。フランスでの体験から、農業もできるような少し田舎がいいなと思い、千葉県の松戸で出会ったすごく素敵な物件を借りました。でも、なんとその場所では食品衛生許可が下りなかったんです! しかも借りてみたはいいものの、住んでみたらいまいちピンとこなくて。これから一体どうしよう、と思いまた前職の上司に相談したら「あなたはけっこう都会が好きだし、そういう自分を認めなさい」って言われて。田舎に住んでみて、自分には合ってなかったんだなってその時にやっとわかりました。

そのあとは都内でいろんな物件を探し続けて、今年の1月にやっとこの物件と出会いました。

Q.すごく素敵なお店ですね! ここでこれからどんなことをしていきたいですか?

私の一番の目標は、生産者と消費者の距離ををもっと近付けること。自分がいいなと思っている生産者さんが生産しているものを使ってお菓子を作って、それをカーゴバイクで販売しながら、買ってくれる人にきちんと伝える。だから、これからもカーゴバイクでの販売を大事にしていきたいです。このお店も本当は工房として借りたのですが、せっかくなのでお店という形にしました。でもせっかく場所があるので、これからは生産者さんを呼んでワークショップをしたり、自分でお菓子教室も開きたいなと思っています。

【編集後記】失敗にもへこたれず、自分がいいなと思ったことにどんどんチャレンジしていって、すてきなお店をつくりあげた吉松さん。失敗や、「これじゃない」という経験があるからこそ、自分が「本当にやりたいこと」がだんだん見えてくる。頭で考えることよりも心で感じたことを大事にしながら、自分の直感を信じて、とにかく一歩踏み出してみることが大事なんだって、教えてもらいました。吉松さんのこれからの活躍が楽しみです!

(インタビューした卒業生: #増田早希子

【関連サイト】
焼き菓子店「bon pin gâteaux」Facebookページ

FLY(フライ)は、自由大学の卒業生が登場するインタビューコーナー。自由大学に通い、新しく見つけた自分の姿。卒業して、踏み出した一歩は小さくても確かな手応えをもって、新しい日常の扉を押し広げます。卒業生が体験した、自分らしい転換期の話をお届けします。

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