私と息子のおてて絵本
こんにちは、ふうこです。
そう言えば、『創作大賞2024』の締切は今日でしたね。何故か明日だと思っていました。
自分には無縁だと思っていたのですが、一つだけ書き上げた物語がある事を思い出しました。
息子は入眠が苦手で、絵本を何冊も読んだり、マッサージをしないとなかなか寝付けません。
この物語は、息子の寝かしつけの時に生まれました。
あまりにも私が眠すぎて目が開けられない時は、絵本が読めないので、目を瞑ってうつらうつらしながら、即興で自分の作った昔話を話して聞かせていました。
(創作昔話は「おてて絵本」と私達は呼んでいました。まだ時々物語は生まれています。)
だいたいは、私も眠ってしまい詳細は忘れてしまうのですが、この話は忘れてしまうには勿体無いなぁと思って、記録していました。
拙い文章ではありますが、その物語を応募してみることにしました。
寝ながら進んで行った不思議なお話にお付き合い頂ける方は、お進みください。
では、始まり始まり〜。
*****
昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると川上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れて来ました。
「なんて大きな桃だぁ!持って帰って爺様に見せてあげんべぇ。」
おばあさんは、大きな桃を「よっこらしょ」と抱え上げて、家へ持って帰りました。
家へ帰って来たおじいさんは桃を見て驚いたの何のって。
大きい上に、赤く色づいてツヤツヤしています。
あまりにも美味しそうだったので、早速食べてみることにしました。
おじいさんが鉈を振り上げた瞬間、桃がパカッと割れ、中からまるまる太った愛らしい赤ちゃんが泣き声を上げながら、現れました。
「おんぎゃぁ、おんぎゃあ。」
男の子の赤ちゃんは、元気いっぱいに泣いています。
おじいさんとおばあさんは、「子どもが欲しい。子どもが欲しい」と思っていたのですが、子宝に恵まれず、この歳になってしまっていました。
桃から生まれた不思議な男の子を天からの授かりものだと思い、桃太郎と名付けて、大切に育てることにしました。
***
男の子は、おじいさんとおばあさんの愛情をいっぱいに受けてすくすく成長し、9歳になりました。
9歳になった桃太郎は、おじいさんとおばあさんのお手伝いをして過ごしていました。
桃太郎は、ある時から、「自分はどこから来たのだろうか?」と気になり始めていました。
おじいさんとおばあさんは、桃太郎には「お前は神様からの授かりものだよ。」と話していました。桃の中に入っていたことも話していました。
「世の中には、人が生る桃の木などあるのだろうか?もしあるのだとすれば、この目で確かめてみたい。」桃太郎は、そう思いました。
その思いは強くなり、近所の人や旅人に『人が生る桃の木』を知っているか、尋ねて歩く様になりました。
その姿があまりにも熱心だったので、おじいさんとおばあさんは桃太郎を応援することにしました。
尋ね続けて300人目。ようやく、知っている人に巡り会いました。
ただし、よく聞いてみると「そんな話を聞いたことがある」という程度でした。
しかも、『インド』という外国でということでした。
ようやく辿り着いた手がかりに、藁を掴む思いで、おじいさんとおばあさん、桃太郎は『インド』に渡り、そこでまた、『人の生る木』について、色んな人に尋ねて周りました。
今度は『ネパール』で聞いたことがあるという人に会いました。集落の名前まで教えてくれました。
おじいさんとおばあさん、桃太郎はこの話を信じ、ネパールのとある集落に行きました。
ここでは、『人の生る桃の木』の話は皆んな知っていました。
『人のなる桃の木』の昔話があるそうです。
その昔話のことを詳しく知っているおばあさんが村外れに住んでいるとのことでした。
日本を離れて3年。おじいさんとおばあさんには、山歩きはきつくなって来ました。
おじいさんとおばあさんは、ここの集落で待つことにしました。
桃太郎は一頭のヤクを旅の相棒にしました。
村外れにやって来ました。畑に囲まれた家がポツンとありました。
ここには、おばあさんが一人で住んでいるそうです。
桃太郎は、ドキドキする胸を抑えながら、おばあさんを訪ねました。
家の中から、おばあさんが出て来ました。
自分のおばあさんより、さらにおばあさんの様だと、桃太郎は思いました。
思い切って『人の生る桃の木』の話をすると、「実際にその木を知っている人がいるよ。」とお茶を入れながら、優しく教えてくれました。
その人は、このおばあさんのひいおばあさんの妹だそうです。
このおばあさんは、ひいおばあさんの妹にも合わせてくれました。
ひいおばあさんの妹という人は、顔がシワシワで、そのシワ数があまりにも多くて、深く、桃太郎には、どこが目でそれが開いているのかどうかも分かりませんでした。
腰もとても曲がっていて、とても小さく見えました。
ですが、相手方からは桃太郎の様子は見えるようで、「一人で来たのかね?表の黒ヤクはお前さんのかねぇ?」など話しかけられました。
桃太郎は、改めて、ひいおばあさんの妹さんに「『人の生る桃の木』を探しているんです。知りませんか?」と尋ねてみました。
すると「この道をまっすぐ行ってごらん。山を二つ越えたところの山の上にあるよ。お前さんの足では1週間かかるだろうね。」と教えてくれました。
桃太郎はとても喜んで、お礼を言い、一旦集落に戻り、おじいさんとおばあさんに報告をしました。おじいさんもおばあさんもとてもとても喜んでくれました。
干し肉などの十分な食料を持って、桃太郎は教えられた山の上を目指して歩き始めました。
ヤクのペースに合わせて進むと、高山病にもならず、安全に進むことが出来ました。
夕方になり、野宿をする場所を探すと、一軒の山小屋を見つけました。
「岩だらけの山に珍しいな。」と桃太郎は思いながら、山小屋の扉を叩いてみました。
おじいさんが出てきて、親切にも宿を貸してくれました。
桃太郎は、おじいさんが一人でこんなところに住んでいて寂しくないのか心配になり、尋ねてみました。
おじいさんは、桃太郎を窓辺に呼び、夜空を見せてくれました。
星が数えられないほど瞬いていて、キラキラ輝き、まるで宝石を散りばめた様です。
桃太郎の質問に「ちっとも寂しくないよ。昼間はヤクと話すし、夜は星と話すからね。」とおじいさんは答えました。
その言葉に桃太郎はすっかり安心しました。夜は気づきませんでしたが、おじいさんの山小屋の近くには、ヤク達の小屋もありました。
次の朝、桃太郎はお礼を言い、また道を進みました。
不思議なことに、また次の日もその次の日も、岩山に山小屋があり、親切に泊めてくれ、人は違えど、皆、最初のおじいさんと同じことを言いました。
1週間後、とうとう桃太郎は、桃の木のあると言われた山に到着しました。
しかし、ふと、無性に山の麓の集落で待っている、おじいさんとおばあさんに会いたくなってしまいました。
どうしてもどうしても会いたくて仕方がありません。
そこに「桃の木はすぐそこだよ。」と声が聞こえました。
何とヤク君が話をしています。
長い間、ヤク君と旅をしていたので、桃太郎には、ヤク君の言葉が分かるようになっていたのです。
ヤク君は言います。
「あそこの緑の葉っぱが見えるかい?あれが君が探していた桃の木だよ。もうすぐそこまで来ているんだよ。あと、ほんの少しだよ。」
見ると葉っぱが見えます。
目を凝らして見ると、枝も見えました。
ほんのちょっぴりですが、枝葉が見えていました。
でも桃太郎は、どうしてもおじいさんとおばあさんに会いたいのです。
今すぐに会いたいのです。
桃太郎はヤク君に言いました。
「岩だらけの山で、葉っぱが見えた。だから本当に人の生る桃の木はあったんだ。それだけで十分だよ。僕は、おじいさんとおばあさんの所へ帰るよ。」
「本当に良いのかい?」とヤク君は念を押すように言いました。
「うん。」とにっこりして答えると、桃太郎は引き返し、おじいさんおばあさんのところへ向かいました。
不思議なことに、おじいさんとおばあさんの所へは二日で帰ることが出来ました。
旅のお供をしてくれたヤク君とはすっかり仲良しになったので、桃太郎はヤク君を日本に連れて帰りました。
ヤク君の体に合う気候の場所を見つけて、桃太郎は、おじいさんおばあさん、ヤク君と一緒に末長く幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
*****
ここまで、お疲れ様でした。
眠りにつくための物語なのですが、息子はこの話をうつらうつらしながら聞いており、時々、「ヤクは雄がいい。名前はヤク君にして。」とか「(山小屋のおじいさんは)ヤクとお話が出来るんだね。」「(桃の木を見る寸前の場面で)(自分なら)桃の中に戻ることはしないだろうね。」など相槌を打っていました。
おてて絵本は、色々ありますが、この話が唯一、人に話せるくらい起承転結も割とはっきりしていたので、息子との思い出と私の頑張りの浄化のために作品を応募します。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
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