見出し画像

宮崎〜日本のひなた〜 vol.1

 みなさん、おはようございます。こんにちは。こんばんは。改めまして、食トレンド研究センターで研究員をしています、片岡です。

 今回からこのnoteという媒体を使って、“食文化探訪”と称して全国津々浦々、さまざまな地域の食文化を、その地域の歴史や地理的条件などから深堀していきたいと思っています。

 記念すべき(?)初回は、やはり弊社にとって欠かすことのできない『宮崎県』について、さまざまな側面から理解を深めていきたいと思います。では早速どうぞ!

はじめに

 この食文化探訪では、大きく分けて2つの観点から深掘りしていきます。

❶地理的条件(気候的条件)
❷歴史的条件

 この2つの観点から、さらに細分化したりします。そしてそれらをもとにその地域にある食文化や特産品を例に挙げながら、なぜそれがその地域に根付いたのかを、解説していけたらと思っています。今回のvol.1では、まず宮崎の地理・気候から整理していきたいと思います。

地理・気候から見る宮崎

 宮崎県は日本列島の南西、九州の南東に位置しています。総面積は、約7,735平方キロメートルで、全国14位の広さ(九州だと2位の広さ)。山地が多く、北西に走る九州山地の谷間から、豊富で良質な水がいくつもの川となって日向灘に向かって流れ込んでいます。広い平地としては宮崎平野都城盆地があります。

 日向灘を望む海岸線は、約405キロメートルで、中央から南部にかけて続く「日南海岸」はドライブコースとしても人気です。

日本トップクラスの日照時間

 宮崎の気候を調べると、必ず通るのがこの「日照時間の長さ」です。それにプラスして「平均気温」「快晴日数」もトップクラス。

平均気温:17.4℃(全国3位)
日照時間:2,116時間(全国3位)
快晴日数:53日(全国2位)

いずれも平年値 / 気象庁(統計期間:1980年〜2010年)

 明るくて暖かい、まさに日本のひなたです。上記の通り快晴日数が多いことが、日照時間が長い大きな要因となっています。気象庁の基準では、快晴・晴れ・曇りを以下の基準で定めています。

雨や雪といった降水現象がないときに、空全体に対する雲の量の割合から区別します。 雲の量が1割以下(0~1割)の状態を「快晴」、2割から8割の状態を「晴れ」、9割以上の状態を「曇り」といいます。

気象庁

 つまり文字通り“雲一つない”晴れが多いが故に、日照時間も長くなるということですね。
 わたしたちにも馴染みの深い、日向夏日南レモンなどの柑橘類は、日照時間が長いことが良い品質の柑橘類を作る重要な条件になっています。
 今や宮崎を代表する果実として有名な完熟マンゴーもまた、日照時間が十分に必要な植物です。
佐土原ナスちぐさピーマン湯ノ口さんのオクラなどの野菜は 一日中(およそ6時間以上)直射日光が当たるところを好み、日陰では育たない“陽性植物”に属し、こちらもまた日照時間が長いことが重要な条件になっています。

晴れも多けりゃ雨も多い!?

 日照時間・快晴日数ともに全国有数の宮崎ですが、実は降雨量も全国でトップクラスに多い地域なのです。

 九州は太平洋側気候郡に属しますが、その中でも宮崎県は九州で唯一“南海型”に属する県です(そのほかはほぼ九州型気候郡)。南海型は暖流である日本海流(黒潮)の影響を強く受けて気温は1年中高めになるのが特徴です。夏は南高北低の気圧配置となり、南よりの高温で湿った季節風が吹き、梅雨と台風の影響も強く受けて、大量の雨が降ります。

宮崎県は南海型(3)
(出典:https://blog.goo.ne.jp/kumonoueniwa)

 太平洋側気候であれば、夏に降雨量が多くなるのは自然の摂理です。それにプラスして、宮崎のすぐそばを通る暖流、日本海流(黒潮)の影響を受けた偏東風(南東から吹く季節風)が吹き、宮崎を囲む山々にぶつかり上昇気流が発生しやすくなるため、降雨量も多くなるというメカニズムです。

宮崎を囲む山

 宮崎の中心地である宮崎平野は北西を九州山地に、南西を霧島連山に、そして南を鰐塚わにづか山地に囲まれているのが特徴です。

出典:宮崎県
(https://www.pref.miyazaki.lg.jp/kids/sunderu.html)

  県土の約75%を山地が占める山岳県でもある宮崎。九州山地は大分・熊本県境に祖母山そぼさん(標高1756m)、国見岳くにみだけ(同1739m)、市房山いちふさやま(同1721m)など1700m級の山々を連ねています。また、南西部には鹿児島県境に霧島山(標高1700m)を中心とする霧島連山がそれぞれ展開しています。
 この山々に雨が降り注ぎ、脈々と濾過され蓄積されてきたのが、次の項目で紹介する、宮崎の美味しい水です。

山から湧き出る美味しい水

 宮崎では多くの湧水があり、地元の人達に利用されるおいしい水が多くあります。先述した通り年間降雨量が多い宮崎ではその恵みの雨が山々に降り、深い森と山に磨かれ、長い歳月をかけ豊富なミネラルをたくわえた清澄な名水となって、湧き出てきます。
 北は延岡の比叡山湧水高千穂峡の湧水。南は、日南市の榎原湧水よわらゆうすいなど、宮崎には20ヶ所以上の有名な湧水や名水が今も大事に生活の中に溶け込んでいます。
 中でも有名なのは宮崎の南部・綾町の「綾川湧水群」ではないでしょうか。九州中央山地国定公園の綾町一帯にある照葉樹林の森を源として流れ出す水全てが環境庁の名水百選として指定されています。涌き出る湧水は綾北川、綾南川となり、本庄川を経て大淀川に流れ込み、生活用水、農業用水、さらに綾町が産地である紬の染織にも利用されています。木挽BLUEでお馴染み『雲海酒造』がこの綾町に蔵を持っています。

雲海酒造株式会社:綾蔵
(出典:https://www.dareyami.jp/brewery/unkai/)

大自然の恵み・黒潮

黒潮は北赤道海流がフィリピン、台湾の東沖で天候北上し、西南諸島の西側、日本列島の太平洋側を流れ、犬吠埼沖に至って陸から離れ、太平洋中央部に向かう太平洋最大の海流です。
 黒潮は赤道からの海流ですので海水温が高く、夏場は30℃、冬場でも20℃を超えることもあるそう。これが、宮崎の平均気温が高いことと夏に雨が多い要因にもなっています。

黒潮は暖流
出典:https://katekyo.mynavi.jp/juken/5308

 この黒潮に乗ってカツオマグロブリなどが宮崎に到達。例えば県南の南郷町、油津がカツオやマグロを主とする沖合・遠影漁業の一大拠点になっています。宮崎のブリも有名ですが、厳密にいうとブリの稚魚である「もじゃこ」が黒潮に乗って多く回遊してくるため、養殖に回すことができ安定的に生産できるということなのです。

まとめ

 今回は宮崎の気候や地理の条件をあらためて深掘りしてみました。

特徴❶日照時間が長い

理由:全快晴日数が多いため(53日/365日中)
結果:植物の生育に大きな影響を与え宮崎の柑橘類、果物類、野菜類の生産に大きく寄与している。

特徴❷夏の雨量が多い

理由:黒潮の暖かい海水上を、暖かい偏東風が通り、その水蒸気が宮崎を囲む山々にぶつかり上昇気流となって、夏に雨をもたらすため。
結果:十分な雨量で、山に湧水が蓄積される。

特徴❸山に囲まれた宮崎平野

結果:霧島山をはじめとする火山群の灰などを伴った山々のおかげで、夏に多く降り注いだ雨が濾過され、清澄な水が生成される。

特徴❹山から湧き出る美味しい水

理由:夏の大雨が周辺の山々で濾過されるため
結果:全ての生産現場において水が生命の源となる。畜産で使われたり、焼酎や醤油などの食品の品質を向上させたりしている。

特徴❺黒潮がもたらす海の幸

結果:黒潮に乗って、マグロやカツオ、ブリなどの魚が宮崎に到達。黒潮の海水温で宮崎の平均気温も高めになり、温暖な気候がもたらされる。

 日常の業務の中で、当たり前に存在している食材が、その土地の気候や地理に影響を受けたことを再認識すると、さらに商品への愛着が湧いてくるような気がしますね。次回は宮崎の歴史から食文化を紐解いていけたらと思っています。お楽しみに!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?