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スコット・リッター:2国家解決策の核オプション

November 17, 2023 スコット・リッター

https://consortiumnews.com/2023/11/17/scott-ritter-the-2-state-solutions-nuclear-option/

スコット・リッター
Palestine solidarity march in London on Oct. 9. (Alisdare Hickson, Flickr, CC BY-SA 2.0)

隣国イスラエルが核兵器を保有する限り、
パレスチナの新国家が自由になることはない。
「あらゆる手段を駆使してイスラエルに圧力をかけ、
自発的に核兵器を放棄させるべき」

ジョー・バイデン米大統領は
10月25日のテレビ演説で、
パレスチナとイスラエルの関係について、
「10月6日の現状に戻ることはできない」
と宣言した。

バイデンの言葉は、
前日の国連安全保障理事会で、
パレスチナの人々の
"自決と独自の国家を持つ正当な権利の実現 "なしには
中東和平はあり得ない
と語ったアントニー・ブリンケン国務長官の言葉と
重なる。

ブリンケンは11月3日の記者会見で、
米国は
イスラエルとパレスチナの2国家解決にコミットしている
と宣言した。
「実行可能な最良の道は、まさに唯一の道は、2国家解決である。」
「暴力の連鎖に終止符を打つ唯一の方法だ」。

バイデンが大統領に就任して以来、
このホワイトハウスは2国家解決への支持を表明してきた。

しかし、イスラエルが3年間で4回
(2019年4月、2019年9月、2020年3月、2021年3月)の
決着しない選挙を目撃し、
長期にわたる政治的行き詰まりの後、政権樹立に苦戦する中、
ブリンケンはこの政策で牽引力を得るのに苦労した。

2022年11月、イスラエル国民は
5度目の投票に臨み、
今回はベテランのベンヤミン・ネタニヤフ元首相が
極右連立政権を組み立てるのに十分な票と政治的支持を得ることができた。

ネタニヤフ首相の勝利は
イスラエルの選挙での悪夢に終止符を打った一方で、
2国家解決を前提としたパレスチナ・イスラエル和平プロセスという
バイデン政権の願望に致命的な打撃を与えた。

ネタニヤフ首相がこしらえた連立政権は、
イスラエルの急進右派から見れば、
1995年11月4日にイツァーク・ラビンとともに
死滅したビジョンを復活させるよりも、
既存のパレスチナ自治政府を撲滅する方向に傾いていた。

バイデン政権が
紛争後の交渉で2国家解決を推し進めることを口にするには、
ネタニヤフ首相が連立政権を手放す必要がある。
このことはアメリカ政府内でも広く知られている。

紛争後のイスラエル

このように、
バイデンとブリンケンが
これほど積極的に2国家解決を支持する姿勢を見せるのは、
紛争後のイスラエルが、
イスラエルの政治に関する限り、
30年近く前に消滅していたアイデアを支持できる政治指導者によって
統治されることを前提としているに違いない。

このような政権連合が、
イスラエル人とパレスチナ人の共感を得られない
2国家間解決策という考えを
政治的に維持するために共に作り上げられたとしても、
イスラエルとパレスチナの平等という概念を前提とした
国家間の永続的な和平という考え方の前に、
クリアしなければならない究極のハードル、
イスラエルの核兵器プログラムが残っている。

イスラエルの核兵器問題は、
ジョン・F・ケネディ以来、
すべてのアメリカ大統領を困惑させてきた。

この問題は
1968年、米国が核不拡散条約(NPT)に調印した後に
表面化した。

この条約は、
1968年7月1日にリンドン・ジョンソン大統領によって署名された。
しかし、実施の問題は、
彼の後継者であるリチャード・ニクソンに委ねられた。

ニクソン政権が直面した主要な政策課題の一つは、
イスラエルの核兵器開発計画であった。

ニクソン政権はNPTに固くコミットしていたため、
NPTに違反して活動する国や、
イスラエルのようにNPTの枠外で
核兵器能力を保有する国への軍事技術売却を禁止する
米国の法律を遵守する義務があった。

ニクソンは、
国家安全保障顧問のヘンリー・キッシンジャーから、
イスラエルに圧力をかけてNPTに調印させ、
核兵器を放棄させるよう進言された。
しかしニクソンは、国家安全保障の問題で
イスラエルに圧力をかけていると見なされることに難色を示し、
代わりに核兵器の曖昧さを強調する政策に乗り出した。

米国外交カバー

それから約50年半、
米国はイスラエルの核兵器を外交的に庇い続け、
イスラエルが非常に強力な核兵器を保有していることを
熟知しているにもかかわらず、
あいまいさの虚構を維持し続けている。

イスラエル政府が、
自らの曖昧さ政策に関して
ますます攻撃的な姿勢をとっていることを考えると、
この姿勢を維持することは難しくなっている。

2022年、国連によるNPTの定期見直しの際、
当時のイスラエル首相ヤイル・ラピドは
イスラエル原子力委員会で、
イスラエルの「防衛能力と攻撃能力、そして海外メディアで
その他の能力と呼ばれているもの」について演説した。

ラピッド首相は、
イスラエルの核兵器について明らかに示唆しながら、
「これらの能力は、私たちを生かし、
私たちと私たちの子供たちがここにいる限り、
私たちを生かし続けるだろう」
と述べた。

現状では、
イスラエルの核兵器が地域と世界の安全保障にもたらす脅威は、
イスラエルの歴史上いつにも増して大きい。
現在のパレスチナとイスラエルの紛争は、
ヒズボラやおそらくイランにまで拡大する可能性があり、
イスラエルは1973年以来初めて、真の存亡の危機に直面している。

イスラエルの閣僚はすでに、
ガザのハマスに対して核兵器を使用することの魅力について言及している。

しかし、本当の脅威は、
イランが戦争に巻き込まれた場合に起こるものだ。
イスラエルの存続が危うくなれば、
核兵器を使ってできるだけ多くの敵を殲滅する。

イスラエルの核兵器がもたらす現在のリスクを考えれば、
現在のパレスチナ・イスラエル紛争が拡大するのを防ぐことが
不可欠である。

紛争が終結すれば、
自由で独立したパレスチナを含む長期的な解決に向けたプロセスを
開始しなければならない。

しかし、隣人であるイスラエルが核兵器を保有すれば、
パレスチナの新国家は決して自由にはなれない。
パレスチナ国家が誕生すれば、
イスラエルとアラブ近隣諸国との関係正常化が
再び推進されることになる。

南アフリカの例

そこで問題となるのは、
イスラエルが自発的に核兵器を放棄するよう、
どのように説得するかである。

幸い、歴史上の例がある。
アパルトヘイト(人種隔離政策)下の南アフリカは、
1970年代初頭に核兵器開発に着手していた。
米国の情報報告書によれば、
南アフリカは1973年に正式に核兵器計画を開始し、
1982年までに最初の核爆発装置を開発・製造した。

7年後の1989年、南アフリカは
6個の機能的な核爆弾を製造し、
それぞれがTNT火薬19キロトンに相当する爆発力を持つようになった。

南アフリカの核兵器開発は、
イスラエルの核兵器開発と同じように、
非常に秘密裏に行われ、
共産主義者が支援する黒人解放運動が
南アフリカの周辺部全域で活動する脅威を抑止するために計画された。

1989年、南アフリカは
F.W.デクラーク新大統領を選出したが、
彼は政治的な風向きが変わりつつあり、
数年のうちにネルソン・マンデラ率いる
黒人民族主義者の支配下に入る可能性があることをすぐに悟った。

それを防ぐため、
デクラークは非核保有国としてNPTに加盟し、
核プログラムを査察と解体のために公開するという
前例のない決断を下した。
南アフリカは1991年にNPTに加盟し、
1994年までに南アフリカのすべての核兵器は
国際的な監視の下で解体された。

パレスチナとイスラエルの戦争が終結し、
イスラエルが
自由で独立したパレスチナ国家の可能性について誠実に交渉し始めたら、
米国はイスラエル政府に対し、
F・W・デクラークが歩んだ道に従ってNPTに調印し、
イスラエルの核兵器をすべて解体するために
国際原子力機関(IAEA)と協力するように
仕向ける努力を主導すべきである。

もし米国が
イスラエルとパレスチナの間に長期的かつ永続的な和平の条件を
作り出すことを真剣に考えているのであれば、
あらゆる手段を駆使してイスラエルに圧力をかけ、
自発的に核兵器を放棄させるべきである。

これが、イスラエルとそれを取り囲むアラブ・イスラム世界との
和平への唯一の道である。

スコット・リッターは
元米海兵隊情報将校で、
旧ソ連では軍備管理条約の実施に、
ペルシャ湾では砂漠の嵐作戦に、
イラクでは大量破壊兵器の軍縮を監督した。
近著に 『Disarmament in the Time of Perestroika』
(Clarity Press刊)がある。

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