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(7/20更新)ロシアの穀物協定延長拒否の結果はどうなるのか

18.07.2023 / 18:54 
What will result in Russia's refusal to extend the grain deal (rtvi.com)

ロシアは、黒海の港からのウクライナ産穀物の輸出を許可する
7月18日からの穀物協定の更新を拒否すると発表した。
参加国であるトルコ、ウクライナ、国連はこのことについて知らされた。
モスクワでの取引完了の理由は、
イスタンブール合意に基づくロシアの要求に従わなかったことである。

RTVIは、穀物協定は誰に、どのような利益をもたらしたのか、
協定の破棄はどのような結果をもたらすのかを解明した。

穀物取引とは何だったのか

穀物協定の一環として、
ロシアはウクライナの穀物やその他の農産物を輸出する貨物船の
オデッサ港からの航行の安全を保証した。
協定の当事者はロシア、ウクライナ、トルコ、国連であり、
文書は2022年7月22日に署名された。

国連とトルコの代表は、
黒海穀物イニシアチブに基づく船舶が武器や弾薬の輸送に
使用されないようにすることを約束した。
要件のロシア部分(ロシアと国連の間の覚書)は、
ロシアの農産物と肥料の輸出制限を解除する際の国際機関の支援を
前提としている。

合意の完了により、黒海地域の一部を支配するロシアは、
オデッサとイスタンブール間の航路における船舶の航行の安全を
正式に保証しないことになる。
2022年に協定が締結されるまで、
穀物の輸出に対する障害の1つは黒海にある鉱山であった。

ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、
ロシアの参加なしでの穀物協定の見通しを評価し、
安全保障上のリスクを慎重に検討するよう求めた。
「我々は戦闘地域に直接近い地域について話している。
そして、適切な保証がなければ、そこには一定のリスクが生じる。
したがって、ロシア抜きで何かが正式に策定される場合には、
これらのリスクを考慮する必要がある。」

ウクライナ穀物を受け取った国はどこか

穀物協定の実施は、
敵対行為により混乱した貧しい国々への食糧供給を増やす必要がある
と公式に説明された。
ロシアとウクライナは世界の穀物市場の19%を占め、
小麦のシェアは27%に達する。

ロシア政府は、穀物協定に基づいて輸出される食料の大部分は
先進国に送られるが、飢餓国に届くのは少量である
と繰り返し指摘してきた。
これに対して国連は、商品が加工され再輸出される可能性がある
と指摘した。

協定の開始から2023年7月16日までに、
3,290万トンの貨物がウクライナから輸出され、
そのうち半分以上(1,690万トン)がトウモロコシ、
さらに27%(890万トン)が小麦、
6%(1.9 100万トン)-ヒマワリ粕、
5%(170万トン)-ヒマワリ油、
11%は大麦、菜種、ヒマワリの種、大豆などのその他の貨物でした。

主な貨物の受取国は
中国(800万トン)で、
次いでスペイン(600万トン)、
トルコ(320万トン)、
イタリア(210万トン)、
オランダ(200万トン)となった。

2022年9月、ベドモスティは、
穀物協定に基づいて西側諸国とNATOが供給量の57%を
受け取ったのに対し、アフリカはわずか17%を占めたと書いた。

ロシアのどのような条件が満たされていないのか

2023年4月、ロシア外務省は協定延長のために
解決する必要がある協定の「5つのシステム上の問題」を挙げた。

その中には、特に、Rosselkhozbank を
SWIFT に接続する問題も含まれていた。

ロイター通信は7月中旬、EUにはそのような決定を下す準​​備が
できていないが、欧州当局者らはロセルホーズ銀行の子会社を
同システムに接続する可能性を検討していると書いた。

このほかの要求には、
食料や肥料の輸送に関連するロシア企業の海外資産や口座の解放、
農業機械やスペアパーツの供給再開、トリアッティ-オデッサ間の
アンモニアパイプラインの復旧などが含まれた。

2023年2月、セルゲイ・ヴェルシニン外務副大臣は
RTVIとの会話の中で、ポイントの1つであるアンモニアパイプラインの
作業再開はキーウの立場によって妨げられていると述べた。

「肥料とアンモニアを含むその製造用原材料の世界市場への供給に関する
条項は、イスタンブールの両協定に詳しく規定されている。
「黒海イニシアチブ」の発足とウクライナ食料の輸送の開始に伴い、
トリアッティ・オデッサ間のパイプラインを通じたアンモニアの積み替えとその輸出も再開されることになった。
しかし、アンモニアパイプラインの復旧を政治的条件で取り囲む
キーウの立場のため、これは実現しなかったし、現在も実現していない」
とヴェルシーニン氏は語った。

これに先立ち、ウラジーミル・プーチン大統領は、
ロシアの穀物協定の条件履行をとりわけ「一方的なゲーム」と批判し、
次のように批判した。

全てがワンサイドゲームだ。
ロシア連邦の利益があるという事実に関連する項目は
何一つ履行されていない。」

プーチン大統領
西側諸国は穀物協定を頓挫させる為にあらゆる事を行い、
その為の努力を惜しまなかった。
最貧国へのロシア製肥料の無償譲渡さえ妨害されている。
ロシアは
商業ベースでも無償ベースでもウクライナの穀物を食糧市場で代替する。
穀物取引の継続は意味を失った。
ロシアは穀物取引への参加に関する全ての原則が考慮され例外なく
実施されるならば、穀物取引への復帰を検討する。

クレムリンのウェブサイトによると、
週末の南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領との電話会談で、
プーチン大統領は「ロシアの食料と肥料の輸出に対する障害を
除去するというロシアと国連の関連覚書に定められた義務は
いまだ履行されていないことを強調した」と述べた。

ロシアの協定離脱に世界はどう反応したのか?

クレムリンは、ロシアの要求が満たされれば、
ロシアは協定に復帰する可能性があると述べた。
ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、
「合意された黒海協定のうちロシアに関連する部分が履行され次第、
ロシアはただちにこの協定の履行に戻るだろう」と述べた。

トルコのレジェム・タイイップ・エルドアン大統領は月曜、
合意延長を望むプーチン大統領の意向に期待している
との期待を表明した。

トルコの新聞ヒュリエットは、エルドアン大統領の発言を伝え、
「今日の声明にもかかわらず、友人よ、私はそう信じている…
プーチン大統領はこの人道回廊の活動を継続したいと考えている」
と伝えた。

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は
ロシア政府の決定を非難し、「冷笑的な措置」と呼んだ。
同氏はまた、欧州連合はウクライナ食品の供給に
引き続き取り組むと付け加えた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、
キーウはロシアの参加なしで穀物の輸出を続けると述べ、
「我々にはウクライナ、トルコ、国連という2つの協定があり、
もう1つはロシア、トルコ、国連という協定だ。
したがって、ロシアが(合意を)停止すると言うとき、
グテレス国連事務総長やエルドアン大統領との合意を
台無しにすることになる。」

同時にロシア側は、
穀物協定外の貧困国に穀物を供給する意向も表明した。

このテーマに関する交渉は、
協定離脱の翌日、ロシアとトルコの外相の間で行われた。
「閣僚は、『黒海構想』の代替案として、
最も必要とする国々に穀物を供給するための他の選択肢を検討した。
キエフとその西側後援者の破壊的行動には依存しない
とロシア外交部のメッセージは述べている。

ドミトリー・ペスコフ氏はまた、
ロシアはアフリカの貧しい国々に
「穀物取引」から無償で穀物を供給する用意があると述べた。

そしてもちろん、ロシアはここでの立場を維持しており、
アフリカのパートナーと連絡を取り合っている」
とロシア大統領報道官はコメルサント紙の質問に答えて語った。

契約解除で誰が勝ち、誰が負けたのか

ロシア穀物組合のアルカジー・ズロチェフスキー委員長の試算によると、
この取引の過程で業界が被った年間の損失は約10億ドルに達したという。
これは、ロシアの穀物の価格が世界レベルにまで割引された結果として
起こった。

ズロチェフスキー氏によれば、
協定の停止はロシアの穀物生産者の利益にプラスの影響を与えるだろう

これはロシアの穀物生産者が失っている資金だ」
とズロチェフスキー氏は言う。
「取引が始まる前、私たちはプレミアムで取引していた。
少なくとも割引率は下がると予想していたが、
いつか配達料金にプレミアムが戻ることを願っている。」

同時に、今年の農業年には、
ロシアは記録的な量の食料を輸出することができた -
6000万トン、今年、ロシアは、ウクライナでの戦闘勃発前の量に匹敵する
肥料供給レベルに達することができる、
とアンドレイ氏は述べた。
ロシア肥料生産者協会の会長、グリエフ氏はフォーブスとの対談で語った。

エゴール・アレエフ/タス通信

独立専門家のレオニード・カザノフ氏も、
協定からの離脱は
ロシア穀物の輸出にマイナスの影響はないと信じており、
「国内の供給業者はすでに制裁下での業務に適応しているため、
既存の問題にもかかわらず販売は続くだろう」としている。

SovEcon分析センター所長のアンドレイ・シゾフ氏によると、
穀物価格の上昇はロシアの輸出にとって有利になる可能性がある。

農業専門家らは、
協定の終了はウクライナ経済に最も強い影響を与える可能性がある
と述べている。

農産物の輸出はウクライナ予算の歳入の大きな部分を占めているため、
キエフは現在、黒海経由での輸出を継続する意向を表明している
にもかかわらず、代替ルートの開発を進めている。

国際食糧政策研究所のアナリストらは、
陸上輸出を含むこれらのルートは輸送手段が限られており、
輸送コストが高いため、海上ルートを完全に補うことはできない
と指摘している。

さらに、ハンガリーとポーランドは、
ウクライナ産穀物のせいで輸送・保管サービスのコストが上昇し、
地元農産物の価格が下落したことを受けて、
ウクライナからの穀物の輸出を禁止した。

RIAノーボスチによると、
国連とウクライナ農業関税省のデータに基づいて、
穀物協定が破棄された場合、
キエフは月に約5億ドルの収入を失うことになる。

IMFは報告書の中で、
取引終了によるさらに悪影響が予想されている。
専門家によると、黒海構想の終了によりウクライナ予算の歳入は
月額2億9000万ドル減少するという。

さらに、近隣諸国への輸入制限が続けば、
ウクライナ貿易の方向転換が複雑になる可能性がある。
「輸入禁止措置が延長され、穀物流通ルートが混乱した場合、
関連する物流上の問題を伴う累積的な影響により、
月あたり8億ドルを超える損失が発生する可能性がある」
と文書には記載されている。

【視点】テロと武器密売の隠れ蓑 ウクライナに利用された穀物合意

2023年7月19日, 15:43 (更新: 2023年7月19日, 15:55)
【視点】テロと武器密売の隠れ蓑 ウクライナに利用された穀物合意 - 2023年7月19日, Sputnik 日本 (sputniknews.jp)

17日に期限を迎えた「穀物合意」で設定されていた海上人道回廊は、
これまで度々ウクライナによって、ロシアの軍民インフラに対する
テロ攻撃や武器密売に利用されてきた。
ロシアの軍事専門家らが、スプートニクに対し語った。

ロシアは17日、ウクライナ産穀物とロシア産農産物などの輸出を定めた
穀物合意について、ロシア側が提示する延長の条件を西側諸国が
履行しなかったため効力が停止したと発表した。

軍事目的での利用

ロシア軍退役大佐で軍事専門家のビクトル・リトフキン氏によると、
ウクライナは穀物などの輸出のみに使用すると約束していた
海上人道回廊を軍事目的で使用していたという。

「武器は民間船で運ばれた。
ウクライナ当局か当局に近い者たちが中東やフランスへの武器転売のために、闇市場を積極的に利用していた。
フランスでは、実際にウクライナから渡った武器が発見された。
それらは元は西側諸国によってウクライナに供給されたものだった。
彼らはこれらの兵器の一部を西側諸国へ逆輸入、
またはアフリカ、中東に転売したのだ」

また、ロシアの独立系軍事シンクタンク
「軍事政治ジャーナリズムセンター」のボリス・ロジン氏は、
ウクライナの無人機(ドローン)によるクリミア半島への攻撃の一部は
安全が保証された海上人道回廊から行われたと指摘する。

「無人機攻撃の一部は穀物回廊が通過する海域から実行された。
航行する民間船舶も隠れ蓑として使用された。
敵が軍事目的で穀物回廊を使用していることは当初から明らかだった。
セバストポリへの攻撃やその他の攻撃で使われた無人機は、
この海域から出発するか通過していた」

17日未明、ロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋に対して、
ウクライナの水上ドローン2機によるテロ攻撃があった。
露国防省は18日、ウクライナ側がテロ活動の拠点としていた
オデッサの船舶修理工場に報復攻撃したと発表した。

ロシアのオプション

ロシアは西側諸国による露産肥料や農産物の輸出制限解除に関わる協定が
履行されれば、直ちに「合意に戻る」としている。
それがかなわない場合、黒海での防衛力を高めるために
措置をとることになる。

リトフキン氏は考えられる

オプションの1つとして、
黒海北西海域全体を戦闘地域と宣言する
ことを挙げた。
そうなればロシア軍は「1隻たりとも、軍艦だけでなく民間船でも
そこへ行くことを許さないだろう」と予測する。

第2のオプションとして、
オデッサとニコラエフの港を標的にし、
その稼働を停止させる可能性
を指摘している。

理想的には2都市をウクライナの「バンデライト(バンデラ派の右翼)」
政権から解放できれば、クリミア半島や黒海を航行するロシアの船舶の
安全を守れるとリトフキン氏は説明した。

一方、専門家らは総じて、
穀物合意の停止がロシアの特殊軍事作戦に劇的な変化をもたらすことには
ならないと指摘。
ロジン氏はドンバス、ザポリージャ方面での激しい戦闘が続くと予測し、「数ケ月以内に黒海北西部で大きな動きが起こる可能性は低い」
としている。

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