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4/1世界を多極化したプーチン

世界を多極化したプーチン

投稿日:2022年 4月 1日(金)19時43分45秒

2022年3月28日  田中 宇

ウクライナに侵攻したロシア軍は、
ウクライナ側の軍勢(主に極右民兵団・アゾフ大隊)を掃討していき、
戦闘は終わりつつある。

これまで最も激しい戦闘が行われていたのは
アゾフ大隊の中心地であるドネツク州のマリウポリだった。
そこでは極右たちが市民を人間の盾にして市街地に立てこもった。
市街を包囲した露軍が人道回廊を作ったのに、
極右は市民が人道回廊を通って市外に避難することを許さず、
事態が膠着していた。

しかし露軍はしだいに人道回廊を機能させて
人間の盾にされていた市民を避難させ、
市民の避難後に露軍が極右を制圧し、市街地を少しずつ解放した。

3月24日にはマリウポリの中心街や市役所から極右が排除され、
露軍の占領下に入った。
極右は市内の南部に退却し、
そこを最後の拠点として露軍に対抗しようとしている。

中心街から極右が排除されたことで、マリウポリの戦闘は山を越えた。

ウクライナの空軍と海軍はすでに消滅し、
地上軍も装備の多くを失って弱体化している。
政治的にもゼレンスキー大統領がロシアへの譲歩を重ねている
(彼は欧米向けの発言だけが好戦的だ)。

ロシアはウクライナで非武装化と非ナチ化(極右の排除)という
侵攻の目的を達成しつつある。
露軍は今後、ウクライナの中でロシア系住民が多い東部2州
(ドネツクとルガンスク)の安定化に力を入れていく。

東部2州はすでにウクライナからの独立を宣言し、
ロシアは2州を独立国として承認した。
今後2州は住民投票をやってロシアに併合してもらうことを正式に希望する。
それを受けてロシアは2州を併合する。

ロシアは、2州を併合する形でウクライナの国境線を変更し、
すでに新たな国境線の近くにいる露軍がそれを防衛する。

いずれゼレンスキー政権のウクライナは国境線の変更を承認する。

しかしその後も米国やNATOはロシアを敵視し続ける。
露軍が東部2州以外のウクライナから出ていき、
ウクライナの制空権をロシアが手放したら、
すぐにNATO諸国がウクライナに戦闘機やミサイルを支援し、
ロシアの傀儡に転向しそうだったゼレンスキーが
再び米国の傀儡に戻ってロシアに宣戦布告する。

ウクライナ各地で、
隠れていた極右が出てきて再びロシア系などの住民を殺し始める。
そうなるのを防ぐため、露軍は今後もずっとウクライナから撤兵できない。
間もなく戦闘が終わり、
露軍はウクライナに駐留する兵力数をかなり減らせるが、
駐留自体はずっと続けざるを得ない。

露軍がウクライナに駐留している限り、
米英はロシア敵視の経済制裁をやめない。
英国の外相は、ロシアが撤兵だけでなく、もう近隣諸国に対して攻撃的な態度をとらない(もういじめません。いい子にします)と
約束(国際社会=米英に対して謝罪)しない限り対露制裁を
やめないと言っている。

ロシアがウクライナやグルジア(ジョージア)に対して
攻撃的な態度をとったのは、
米英がウクライナやグルジアを操ってロシアに敵対させたからだ。

先に悪いことをしたのは米英だから、
ロシアは「お前らこそ二度と世界の諸国をいじめませんと約束しろよ。
そしたら許してやる」と言い返すだけだ。

米英(脱落しない限り欧日も)とロシア(や中国など非米諸国)の対立は
ずっと続く。
日欧は資源をロシアに頼っているので、すでに半ば脱落している。

露軍がウクライナにいる限り、米欧日のマスコミ権威筋は、
あたかもウクライナで戦闘がずっと続いているかのような意図的な
誤報を喧伝し続ける。

激しいロシア敵視と、厳しい経済制裁が続けられる。

今後、米英がウクライナの極右にこっそり渡した塩素やアンモニアなどを、
露軍が駐留する場所の近くの市街地で極右がそれらの化学薬品を
市民に向かってばらまき、多数の市民が被害を受けると、
米欧日マスコミがっせいに「露軍が市民を化学兵器で攻撃した」と
濡れ衣のウソ報道を大々的にやる、という展開があるかもしれない。

市民の被害を出さないようにして極右をうまく排除した露軍が、
市民を化学兵器で攻撃するはずがない。

それは少し考えればわかるのだが、
マスコミ権威筋は今回の戦争で、
ウソでいいからとにかくロシアを悪者にすることしかやっておらず、
何が事実かを全く考えていないので、ひどい濡れ衣が堂々とまかり通る。

米政府は戦争当初から、
露軍が生物化学兵器を使いそうだと言い続けており、
露軍に化学兵器使用の濡れ衣をかけたくてしょうがない感じだ。

バイデン大統領の息子のハンター・バイデンが、バイデンがオバマ政権の副大統領だった時に、
父親の代理としてウクライナの政府や財界とのパイプ役をやっており、
ハンターが紹介した案件の中に、米国防省傘下の企業が
ウクライナに生物兵器の研究所群を作る事業があったことが
最近明らかになっている。

英国の新聞も報じている。
バイデン(というか米政府)は、
ウクライナに生物兵器を作らせようとする戦争犯罪を犯していた。

米国がウクライナに作った生物兵器の研究所群の存在は、
当時の駐ウクライナ米大使だったビクトリア・ヌーランド
(2014年のウクライナ政権転覆の現場首謀者)も認めている。

露軍は、ウクライナに侵攻した直後に、
ウクライナの極右が生物兵器を使わないよう、その研究所群を接収した。

バイデンが「露軍がウクライナで生物科学兵器を使いそうだ」と
言い続けているのは、
自分が犯した戦争犯罪がバレないようにする目くらましのためだろう。

そういう問題はあるものの、
ウクライナでの戦闘はロシアの成功裏に終わりつつある。
しかし、激しい米露対立はずっと続く。

米国は、自国中心の経済覇権体制からロシアを完全に排除したい。

ロシアも今や米国覇権を全否定しており、
米国の経済覇権体制から完全に離れたところで、
ロシアと中国など友好諸国(BRICSや途上諸国)との非米的な
新たな世界経済体制を作っていきたい。

ウクライナ戦争の開始とともに、
米国の覇権は、全世界を支配するものから、
米欧日など先進諸国だけを支配するものへと、領域が半減した。

米国側(先進諸国)では引き続きドルが基軸通貨であるが、
非米側ではドルが決済通貨として使われなくなる。
ドルや米国債を備蓄していると、
いつ米国から敵視されてロシアのように
資産凍結されるかわからないので使えない。

非米側は当面、各国の通貨や金地金を決済通貨として使う。
ドルは、世界の半分でしか通用しなくなった。
世界経済は、ドル側と非ドル側に分裂した。

EUはロシアから石油ガスの輸入を全面的に止めることを
いったん決めかけたが、ロシアの代わりの輸入元は見つからず、
米国が新たに送ってくれるLNGも比率的に微々たるもの
(欧州の需要量の4%)だ。

そのためEUは、今後もロシアから石油ガスを輸入し続けることにした。
日本もロシアのサハリンから天然ガスを輸入し続ける。

欧日は、ロシアからの石油ガス輸入をやめたら経済が止まり、
国民の生活に大きな支障が出る。
欧日は、米国からいくら加圧されてもロシアからの輸入を止められない。
韓国も、ロシアとの貿易を続けると発表している
(韓国は安保的に米国側だが、経済的には中国への依存が高く非米側だ)。

今後の分裂した世界において、
石油ガス鉱物の利権の大半は露中サウジイランなど非米側が握っている。

欧日など米国側の諸国は今後ずっと、
ロシアなど非米側から石油ガス鉱物を買い続けねばならない。

ロシア政府は、非友好諸国(米国側)に石油ガスを売る時には
代金をルーブルで払ってもらうと宣言した。
露政府は、非友好諸国の通貨(ドルやユーロ、円)を
もう使わないとも宣言している。

欧日はユーロや円をルーブルに換金できないので、このままだとロシアから石油ガスを買えなくなる。
欧日は、ロシアから石油ガスを輸入し続けていると米国から非難される。

米国の同盟国であることの苦痛がだんだん大きくなっていく。

今回のウクライナ戦争では、資源大国ロシアを経済的にまるごと傘下に入れた中国が最大の勝ち組だ。

そして米露両方に小突かれる欧日が最大の負け組になっている。

これまで石油ガスを国際取引するための通貨は米ドルと決まっていた。
石油の国際価格はドル建てで表示され、ドルがないと石油を買えなかった。

このドルの機能(唯一の基軸通貨・国際決済通貨としての地位)が
「ペトロダラー」であり、
それが米国の経済的な強さ・覇権の象徴だった。

ところが今、ドル決済のSWIFTから追放されたロシアが報復として
「非友好諸国には石油ガスをルーブルでしか売りません。

ドルやユーロはもう使いません」と言い出している。
これはロシアがペトロダラーと米国覇権を否定し、
代わりに「ペトロルーブル」を掲げ出したことを示している。

これは「ペトロダラーや米国覇権を終わりにしてやるぞ」という政治的な表明であり、
実際の決済時のロシアの対応はもっと柔軟なはずだ(買い手がロシア敵視を扇動せずいい子にしている限り)。

米国が対露制裁に協力しない非米諸国全体を敵視し始めているので、
今後、非米諸国間の貿易におけるドルの比率は大幅に減る。
ペトロダラーは本当に終わる。

ロシアだけでなく中国も最近、米英やNATOに対する非難を強めており、
米国側と非米側が互いに敵視し合う状況が加速している。
両者間の貿易決済はどんどんやりにくくなる。
しかし、欧日など米国側はロシアから石油ガス鉱物を
買い続けねばならない。
良い決済通貨がない。
ドルは非米側で使用禁止にされうるし、
ルーブルは米国側で使用禁止にされうる。
使用禁止にされ得ない通貨はないのか。
実は、ある。
金地金だ。

金塊は、ロシア勢の刻印が押してあるものでも、
中立国でいったん溶かして中立国の刻印を押せばロシアと無関係になる。

米英は、ロシアの地金取引を禁止すると発表したが、
金取引は禁止できない。
中国はロシアの地金を全部買ってもいいと言っている。

金地金(金銀)は、
取引相手との信用(互いにいい子にしていること)に
価値が立脚していない唯一の資産だ。
相互に信用が失われていく今後の米国側と非米側の国家間の貿易決済で、
金地金は威力を発揮する。

ロシアや中国やインドなど、
近年金地金を貯め込んできた国々は優勢になる。

米欧日は金地金を軽視し、米国債を資産の中心にしてきた。
しかし今、米国債の価値はどんどん落ちている
(金利がどんどん上がっている)。

近いうちに米連銀のQEが終わると、米国側はもっと激しい金融崩壊になる。
米国側のレバレッジ(金融詐欺)がぜんぶ剥げ落ちる。

ここでも、非米側が勝ち組で、米国側が負け組だ。

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