【雑記】クイズ表現論

ここではクイズ表現論について検討する。

1.前提

1.1.クイズ企画

 まず、以下のようなクイズ企画を考える。

(Step1)
 順番の並べ替え問題をK問用意し、ペーパー形式で参加者に解答してもらう。
例1:次の3つの川を、流域面積が大きい順に並べよ。
a:長江 b:ミシシッピ川 c:ナイル川

 なお、企画上答え合わせは最後だが、説明の理解のしやすさのために正解を記載しておくと、b→c→aの順番である。今後(b,c,a)と記載する。

(Step2)
 参加者全員参加、エンドレスチャンス形式(誤答時はその問題の解答権を失う)の早押し問題をL問行う。正解者は以下の操作を行う。
 Step1のペーパー問題の1つを指定する。
 その問題がN個の事象の並び替え問題であった場合、N次対称群$${S_n}$$の要素をひとつ選び、現在の正解について操作を行う。
例2:例1の正解は(b,c,a)であった。
 この問題について$${(1 3)∈S_3}$$(1と3を入れ替える)の操作を行うと、(a,c,b)となる。以後この企画内では長江、ナイル川、ミシシッピ川の順で流域面積が大きいものとして扱う。

(Step3)
 ペーパーの採点を行う。順番が全て合っていれば1点、それ以外は0点。得点が高い人が優勝である。

1.2.企画の補足

 ペーパーの問題数や早押しの問題数は調整可能。参加人数に応じて決めてほしい。
 参加者としては、正解を知っている問題をわざと誤答状態でペーパーに書き、後で正解をねじ曲げることで単独正解を狙ったり、全く分からない問題をさも知っているかのように正解を捻じ曲げて他の参加者を混乱に陥れるなどの戦略が考えられる。

2.Step2の群としての性質

 ここで、$${G}$$={Step2において正解者が行う選択}とすると、これは群である。
練習1:$${G}$$が群であることを示せ。
群について忘れてしまった読者は、前回の記事を参照頂きたい。

 また、$${G_k}$$={Step2において正解者がペーパーのk問目に対して行う操作}とすると、これも群である。$${G_k⊂G}$$であるから、$${G_k}$$は$${G}$$の部分群で、さらに正規部分群である。
練習2:$${G_k}$$が$${G}$$の正規部分群であることを示せ。

3.Step2の群の表現

 以後、簡単のために例1に対してStep2の操作をすることを考える。これは$${S_3}$$の操作であった。また、群の表現についてはWikipedia参照とする。

$${V=\{(x_1,x_2,x_3)∈\Bbb{C}^3|x_1+x_2+x_3=0\}}$$とする。
練習3:これは(複素)2次元ベクトル空間であることを示せ。
$${\Bbb{e_1}=\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix},\Bbb{e_2}=\begin{pmatrix}1\\0\\-1\end{pmatrix}}$$とすると、$${(\Bbb{e_1},\Bbb{e_2})}$$は$${V}$$の基底である。練習3でVは2次元であることを示したので、線型独立であることを示せば良い。
$${a\Bbb{e_1}+b\Bbb{e_2}=\begin{pmatrix}0\\0\\0\end{pmatrix}}$$となる組みを求めると、
$${\begin{cases} a+b=0\\-a=0\\-b=0\end{cases}}$$
であるから、(a,b)=(0,0)であることが分かるので、線型独立である。

 σ∈$${S_3}$$から$${\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}∈V}$$への作用を$${σ\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}x_{σ(1)}\\x_{σ(2)}\\x_{σ(3)}\end{pmatrix}}$$と定義する。
この時、
ρ:$${S_3\longrightarrow GL_σ(V)}$$は群準同型である。
練習4:ρが群準同型であることを示せ。
よって、ρは$${S_3}$$の2次元表現となっている。
例3:(1 2)∈$${S_3}$$に対応する表現を求める。
$${(1 2) \Bbb{e_1}=(1 2)\begin{pmatrix}1\\-1\\0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}=\Bbb{-e_1}}$$
$${(1 2) \Bbb{e_2}=(1 2)\begin{pmatrix}1\\0\\−1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\1\\−1\end{pmatrix}=\Bbb{-e_1+e_2}}$$
$${((1 2) \Bbb{e_1},(1 2) \Bbb{e_2})=(\Bbb{e_1},\Bbb{e_2})\begin{pmatrix}-1 & -1\\0 & 1\end{pmatrix}}$$
以上より、
$${S_3∋(1 2)\longmapsto \begin{pmatrix}-1 & -1\\0 & 1\end{pmatrix}∈GL_2(\Bbb{C})}$$
練習5:$${S_3}$$全ての元に対応する表現を求めよ。なお、ρが群準同型であることを用いて良い。

4.後書き

 ぼたん(筆者)は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。ぼたんには表現論がわからぬ。ぼたんは、(元)幾何学専攻である。ケツを拭き、クイズで遊んで暮して来た。けれども無茶振りに対しては、人一倍に敏感であった。先週未明ぼたんは群論を出発し、教科書を開き動画を見て、十里はなれた表現論にやって来た。
(※最後はぱたさんの動画ほぼそのままです。この場を借りて感謝いたします。)

 最後に、調べていく中で比較言語学における群論の応用というものがあるのが分かった。これを使えばもう少しクイズ表現論として面白いものが出来たと思うが、今の私には理解が無理だった。(そもそも北海道大学理学部HPのサイエンストピックスに元記事があると記載されていたが、見つからなかった。もしわかる人がいれば教えてほしい。)

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