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5.私は犬小屋で生活することになった

バスの停留所から荒野の中、車を飛ばして5分。
Drorの住む農場は所謂キブツ(社会主義コミュニティ・農場)のようなもので、その中心に彼の家があった。とはいえ小さな農場で、Dror夫妻はあまり農作物を育てたり、家畜を飼っている様子もなかった。

衝撃的だったのは私の寝床だ。彼らの家に到着して荷物を置くために寝床へ連れていってもらったが、私は彼らの家ではなく、そこから少し下った小屋だと言われた。しかし、実際に見てみるとこれは殆ど犬小屋だ。ドアこそあれど、竹と木で手作りされた小さなこの小屋は天井さえなく、上部を布で覆っただけである。中には埃だらけのマットレスが一つだけ。そしてこの寝小屋の入口にはしっかりと犬が繋がれており、もはや犬小屋でしかない。無料で泊めてもらうのだから仕方ないと思いながらも、今まで私が経験してきたホームステイ先の中でダントツのワースト1位になる気しかしなかった。

寝小屋の横には作業小屋があり、Drorの奥さんのChenが居てペイントをしていた。彼女はここで土器などを作っている。
Drorは北欧系の顔で背が低く(165cmくらい?)、Chenはアラブ系に近い見た目で身長はDrorと同じくらい。2人ともフレンドリーで話しやすいのはせめてもの救いと言えるか。。

彼らに居住のルールを一通り教えてもらいながら、敷地を一周する。この日はユダヤ教の休息日にあたり、リラックスした雰囲気だった。

私は履いてきた靴からビーチサンダルに履き替えると、イスラエル式の植物栽培方式を見学・手伝うことになった。雨の少ないイスラエルではホースに穴を開けて、中央集中システムからコンピューター制御で1日2回の給水が行われる。荒野の中にある草木や街中の木々も同じような手法で育っているそうだ。

植物の作業を15分くらいで終えると、長旅で疲れた身体をしっかり休めるようDrorに促された。私は母屋でシャワーをかりてから、ありがたく言葉通り、夕食まで少し身体を休めることにした。

夕食の時間になるとChenが皿を並べて準備を始めた。休息日の夕食は食前酒としてワインを嗜むようだが、Drorはワインが飲めないらしくぶどうジュースを口に含んでいた。料理はチキンとポテトのさっぱりとした味付けで、問題なく美味しかった。

夕食後はすぐに寝小屋へ戻った。疲労が溜まっていたのと、夕食時のワインも手伝って、私はすぐに深い眠りへと導かれていった。

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