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自分以外の全ての生き物はエイリアン(異星人)なのかもしれない…。

いきなりなんだというタイトルなんですが、これ最近読んだ小説の端的な感想です。
で、じゃあ何を読んだのかと言いますと、チョン・セランさんという韓国の作家さんの『地球でハナだけ』というSF恋愛小説になります。今回はその感想を思うままにつらつらと…。

あらすじ

やさしい心を持つハナは、つき合って11年になるキョンミンに振り回されてばかり。
この夏休みだってハナを置いて、流星群を見にカナダへひとりで出かけてしまう。

そしてカナダで隕石落下事故が起こり音信不通に。

心配をよそに無事帰国したキョンミンだが、どうも様子がおかしい。
いつもとは違ってハナを思いやり、言葉づかいだってやさしい。
嫌いだったナスも食べている。

ついには……口から青いビームを出しはじめて……。

書籍表見返しより引用

上記引用は書籍のそで(表紙カバーが巻いて内側に折れたところ)に書かれた本書のあらましと言いますか内容説明になります。
もっとしっかりとした話の筋については通販サイトの説明書きや書籍紹介なんかの記事がネットにあるかと思うのでそちらに譲るとして、以下ざっくりとした内容をネタバレにならないように書きたいと思います。
主人公は韓国人の女の子の『ハナ(韓国語でハナは「一つ」という意味で本書のタイトルはダブルミーニングらしいです)』さんで、環境問題への意識が高く古着のリメイクなどを手がける仕事をしています。関係性が少し停滞してきた長年付き合っているキョンミンという彼氏がいるのですが、その彼氏がある日を境に突如宇宙人と入れ替わってしまった!?というところから物語が始まります。

全体的な感想

先にも触れたようにジャンルとしてはSF恋愛小説になるかと思うので、”異星人との恋愛”や”国家情報院”、など非日常な単語が踊ります。ただ物語の舞台が韓国で登場人物も韓国人ということで、異国の事として割とすんなり受けいれられることができました。
※私が日本人ゆえに日本が舞台だと色々突っ込みたくなる性分というだけかもですが…。
また、会話の中で飛び交う単語はSF的なのですが、物語の軸は宇宙人(他者)の介入よるハナを取り巻く人間関係の変化ですので、普遍的な内容であり、SFの突飛さとは反して起伏の少なくでも誰の心にも感じるものがあるストーリーだった様に思いました。

個人的に感じ入った箇所について

で、ここからがちょっと僕がとても個人的に喰らったパンチライン的な部分の感想になります。
ネタバレに触れているものもあるかもなので未読の方はご注意ください。

①愛の表現
今作では彼氏が宇宙人と入れ替わってしまうんですが、その宇宙人がまぁハナさんの事を熱烈に愛していまして、しかも凄くハナさんの考え方に理解があるんですよね。で、そんな相手から「君に会いたくて、二万光年を飛びこえたんだ」と愛の告白を受けてハナさんも「宇宙人だけど悪い気はしないし、まぁ付き合ってみるか!」という感じで、交際、結婚と関係を深めていきます。
「愛」という数値化できない定性的な感情を、光年という時間・距離でなんと定量的にそしてその想いの大きさを伝えるセリフだ!と思いました。ヒップホップでいうところの「韻の飛距離」というものに近いかもしれませんが、例えるものと例えられるもののイメージがかけ離れているほど綺麗に表現できた時の完成度は高くなる様に思いました。

②誰もが「宇宙人≒エイリアン(自分とは異なる存在)」なのかも…
前述の彼氏(地球人)とハナさんの関係に始まり、その二人とそれぞれの両親との関係、周りを取り巻く友人関係など、同じ地球人同士においても少しの変化で没交渉になったり大親友や夫婦となる姿を読むと、性別・人種・惑星の別を問わずエイリアンたりうるのかなと読後に思いました。
最後の最後でお互い完全に理解しあえてると思っていた宇宙人からびっくりする様な提案(半ば強制)をされるオチには笑いましたが。

最後に・・・

韓国人作家さんの作品を読むのは初めてだったのですが大変面白く良い読書体験になりました。
この感想を見た方で本作品を読む方におすすめのBGMを最後に…
キリンジ-エイリアンズ
キミとボクという2者の関係性を叙情的ででも断言しない曖昧な歌詞で歌った名曲です。歌詞内に”〜そうさ僕らはエイリアンズ〜”とあり、ダウナーな曲調といい本書とすごくマッチした曲でおすすめです。
空音 / Hug feat. kojikoji
こちらは宇宙人の侵略に愛(曲中の意味は音楽の力)で応えるといったような物語性のある曲で、一つ目に紹介した曲とは異なりキラキラした雰囲気の上がる曲になります。

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