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なんか元気がない、NIKEの逆襲はあるのか

□NIKEに異変を感じる

2017年のあのBreaking 2以来、レーシングシューズに新たなカテゴリー『スーパーシューズ』という呼称まで作り上げ、日本でも箱根駅伝でも90%以上のランナーが履く厚底フィーバーなる現象を引き起こしたNIKE(ナイキ)。とにかく、Vaporfly(ヴェイパーフライ)フィーバーが凄かった。

E・キプチョゲ選手が、ヴェイパーフライ4%を履いて最高の条件下で走った2時間00分25秒の後、イネオス159ではついに人類初のフルマラソン2時間切りを果たすのであるが、その時に彼が履いていたのが『AlphaflyNext%(アルファフライNext%)』であった。

そして、その技術は、果てにはトラック長距離スパイクの『Dragonfly(ドラゴンフライ)』まで波及して(もっと言うとスプリントスパイクにも)ドラゴンフィーバーも起こって、飛ぶように商品は売れた。

そして、それは販売価格よりもはるかに高価な価格で取引されるなどヒートアップしていく。そういった影響からか、長年ランニングスペシャリティーショップでランニングシューズ部門首位を走っていたBrooks(ブルックス)の、その牙城までついには崩したのだ。

しかし、2023年現在地点、その貯金は大きくないと感じる。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いがあったNIKEにやや元気がない、わたしはそう思っている。NIKEの逆襲はあるのであろうか。

□モデルアップデイトが少ないのが気になる

何故、元気がないように思うかというと、モデルチェンジしたプロダクトにパンチが足りないこと、また、はっきり言って競合他社の商品クオリティーも上がり差がなくなっていて、かつての大幅なアドバンテージはないように思うからだ。恐らく第100回の箱根駅伝でもNIKEのシェアは減ると思っている。

とは言え、Infinity Run 4(インフィニティラン4)やInvincible Run 3(インビンシブルラン3)のような力の入ったアップデイトもあったが、それらもサステナブルな要素を強く打ち出すイメージだったように感じた。

NIKEと言えばの定番『Pegasus40(ペガサス40)』が40代目の大きな節目を迎えたが、パンチの効いたアップデイトはなかった。やや肩透かし感(アッパーとソールの剛性が良くなったので、40は好きだが)があったことは否めない。

また、2003年から続くナチュラルシューズコンセプトの定番『Free RUN NN(フリーランネクストネイチャー』はアップデイトされたが、かつてのような力のこもったモデルチェンジでなかった。

『ZOOM FLY5(ズームフライ5)』『Pegasus Turbo NN(ペガサスターボネクストネイチャー)のアップデイトも予定がなく、市民ランナーに人気の『Tempo Next%(テンポネクスト%)』は廃盤になっている。開発の投資マネーがないのか?

□アスリートの契約打ち切りも目立った

一時はトラックに、ロードにNIKE(ナイキ)アスリートだらけであったが、かなり絞られてきているように感じている。アディダス、アシックスの他に中国系のブランドの選手も目立つようになってきている。

そして、ビックリだったのは、あのエチオピアの帝王ケネニサ・ベケレがNIKEから離れて中国ブランドANTA(アンタ)との契約したこと。ただの心変わりなのか、契約金なのか、分からない。しかし、NIKEとはいい関係であったはずだ。

また、元オレゴンプロジェクトのクロスターファルフェンがプーマに変わるということに象徴されるようにナイキ契約アスリートの整理もあったようだ。日本でも新谷仁美選手はアディダス所属になったのは目立った変化(彼女は整理されたわけではなく自ら選んだ)

そして、そうこうしているうちに大事件が起こる。

ドイツベルリンマラソンで、ついにアディダスアスリートのT・アセファ選手が女子のフルマラソン世界最高記録を更新して、ナイキシューズで達成したB・コスゲイの記録をそれも2時間11分53秒と大きく更新したわけだ。

これはとてつもないインパクトになり得る。

このアディダスのアディゼロアディオスEVO1は512足、82500円の抽選販売という形で市場に出て話題もさらった。これはなかなか面白い試みだと思う。512足×82500円の4200万ほどの売り上げはきっと開発費なのかもしれないが、しかし、こういった話題作りもNIKEの専売特許であったはず、世界記録も、そして、話題も持っていかれてしまった形だ。(ベルリンマラソンのスポンサーがアディダスであったことも大きい)

□わたしはこれからNIKEに逆襲を期待したい

ただ、追い風もあった。

その1週間後、今度はアメリカシカゴマラソンでE・キプチョゲの世界最高記録をK・キプタムが大きく破ることになる。2時間00分35秒は、2017年のE・キプチョゲがマークした2時間00分25秒に僅差であった。

これは、キプチョゲがペーサー、コンディションなどとてつもなくいい条件出した記録に肉薄するタイプだけにこの記録のインパクトはとてつもなく凄いと思う。2017年のような、これがそのスタートになるのか?

彼はとっても23歳と若いし、NIKEとっても期待の星になった。彼のために作ったモデルではないが、今回彼が着用した未発売モデル『 Alphafly3(アルファフライ3)』は久々のブレイクの予感。1月発売の予定だから、きっと箱根駅伝でも履く選手は出るのかもしれないが販売のタイミングもあり少数か。

しかし、わたしがNIKEが覇権を再び握るとしたら、このぐらいのことでなくて、“速く走る概念の再構築“が起きたときだと思っている。

例えば、NIKEが繰り返しプロトを作っていって画像を露出している薄底レーシング、Streakfly2(ストリークフライ2)、そのようなプロダクトにその鍵があると思っている。

それがヴェイパーフライ3やアルファフライ3を超えるものでなくても、せめて5Kや10Kロードではそれらより優位な助力感がある薄底レーシングになれば、十分ゲームチェンジャーになり得る。これから世界的にトレンドになるショートディスタンスロードレースで選手が活躍することになればそれは大きい。

現状、ストリークフライはロードランニング世界選手権でも、NY5thアベニューのロードマイルでも履いているNIKE選手は皆無だった。

自らそれを積極的に選手が使うようなプロダクトになったとき、2017年のようなことが起こるかもしれない。

風は吹いている、NIKEは、覇権を再び握ることはできるだろうか。

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