Ⅱ-2.「肖像の無断使用」とは~2020年6月のできごと

あのねーーーー土曜日は休みにしようと思っていたんですよね!?

訪問ありがとうございます。フィギュアスケートを考えるnoteです。

タイトルコールの前に怒ってしまった。申し訳ありません。

株式会社ユニバーサルスポーツマーケティングさんが、2020年6月19日、所属選手二名の公式サイトにて肖像の無断使用について言及しました。

早いとこ書こ~としていたテーマでしたので、先行してざっくり解説。いやざっくりと言っても長い記事ですけれど。※ちょい文体荒れています。


「肖像」とは

肖像(しょう - ぞう) 引用元:コトバンク

人間の顔貌,姿態を写した絵画または彫刻その他の視覚芸術作品。

まずここから。

肖像というのは、人を個人として判別できる芸術のことです。

写真も芸術です。映像も芸術です。絵画彫刻文章も芸術です。

個人が判別できれば、たとえば指先一部分だけを描いた作品でも肖像

ここまでいいでしょうか?

肖像で考えつく単語:「肖像権」とは?

一社)日本音楽事業者協会の作った「肖像権について考えよう!」のサイトをご覧ください。

https://www.jame.or.jp/shozoken/index.html

内容を忘れないようにブックマークもしておきましょう。

大切なことが詰まっています。本当に。

スポーツ選手の肖像権・超訳

サイトに飛びたくない、飛んだけどなんでダメなのかわからないよ?という人向けのフィギュアスケート選手特化の補足を入れたスポーツ選手の肖像権・超訳&現状(2020.6.20.0時)説明

肖像権は個人が肖像を勝手に使われて不愉快な思いをしないための権利2種類の権利がある。スケート選手特有の事実として、日ス連所属のスケート選手は本人以外に日本スケート連盟も肖像利用について権利を持っています肖像を使う場合は連盟にも要申請ってこと。
1.プライバシー的にアウトな肖像はダメだよと訴えができる権利(=プライバシー権)。
人格を守るという基本的な権利=人格権の内容に近い。オフ中に許可なく写真撮影する、事実ではないが事実に思えるような肖像を作成する、などがNGになりがち。じつは、スポーツ選手がスポーツをしている瞬間というのはプライバシー的な肖像権は発生しない。試合中やショー中=フィギュアスケートをしている間は公人扱いになり、その時プライバシーは存在しないのです。
2.金儲け的にアウトな肖像はダメだよと訴えができる権利(=パブリシティ権)。
USMさんが言及している内容はコチラに該当する(はず)。選手の肖像には経済的な価値がつきます。肖像を商品販売の顧客獲得のために使用することは権利者が認めないとダメということ。今回は、肖像権の権利者である本人方やスケ連の代わりに、肖像本人の所属事務所であるUSMさんが声明を上げ、且つ交渉中なわけですね。

はい。

肖像権のひとつ、パブリシティ権。

最低限これだけは用語を覚えておきましょう。テストに出ます。

(テストはしないですよ!)

なお、勘違いしやすいのですが、著作権と肖像権は違う権利です。似通う部分もありますけれど。

肖像権中のパブリシティ権で保護される『商品』

パブリシティ権で検索すると確実に出てくるのが「ピンク・レディー事件」です。2012年2月2日の判決で、上記「肖像権について考えよう!」サイト内でも言及されています。

この事件ではじめて、パブリシティ権について日本の最高裁判所で争われました。

結論としては、原告であるピンク・レディーのお二方は上告を棄却されました。

しかし、裁判中、この後とても重要になる「こうしたらパブリシティ権の侵害になる」という例が3つ挙げられました。

①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
③肖像等を商品等の広告として使用する場合

この3つです。

①はブロマイドやポスターなど、肖像ババーン!な商品を作る場合。②は卓上カレンダーのような、型は定形でも肖像を使わなければ商品価値が付かない商品を作る場合。③はそのままですね。わかりやすい

今回USMさんが問題視したのは…なのでしょうか? 調べてるうちに手帳と見えたので。(と思ってちょっと調べたら、(A4写真12枚)を最初にクラファン返礼として打ち出してしまっていたんですね。ダメだわそりゃ。

件のクラファンについて、出版社の弁護士さんはGOを出していた。(こちらのツイートを参照いたしました)ここを不思議に思うスケートファンもいるでしょう。

肖像を雑誌の記事に使うこと、肖像を商品として使うこと

それこそ「ピンク・レディー事件」のあらましを追うとわかりやすいので例を出しましょう。例によりざっくりです。

なぜピンク・レディーの二人が原告になったのか? 請求先(被告)は出版社です。出版社が、雑誌記事の中でダイエットを特集。ピンク・レディーの振り付けの真似をすることがダイエットになる、という記事の中で肖像を無断使用していたのでこれはパブリシティ権=金儲け的にアウトだと訴えた。では、なぜ訴えは退けられたか? あくまでも雑誌記事の中で使用された肖像だったからです。いくら購入者アンケートで評判が良かったページだとしても、表紙でもない。ダイエット企画自体は出版社が考えたものです。たしかに、アーティストの肖像を文中で無理に使う必要性は薄かったでしょう。しかし、雑誌200頁のうちの3頁、そしてカラー写真でもない(不鮮明)となれば、”顧客吸引力の利用を目的”とした記事ではない、と退けられたのです。

雑誌記事を補足する形での肖像の掲載は大丈夫、という判決だった。

でも、記事ではなく、前述した3つの内容だったらNGだと。それでは改めてNG例をおさらいしましょう。

①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
③肖像等を商品等の広告として使用する場合

肖像を勝手に商品化してはいけないのです。

国が違えば判例は違う

しかし、これはあくまで日本の判例。今回USMさんが交渉しているのはフランスの出版社です。

ただですね、フランスって、著作権自体は実は日本よりキッツいんですよ。夜間のエッフェル塔を撮影してインターネット上げるのはクロ寄りのグレーだったりするらしい。なにそれこわい。

(参照:「モンローはOK、ヘップバーンはNG」 企業サイトで画像を使うとき注意すべき著作権と肖像権のお話 https://www.huffingtonpost.jp/six-apart-blog/copyrights-portrait-rights-website_b_7338886.html

『ベルヌ条約』という世界共通著作権のお約束みたいなものを提案したのもフランスです。ベルヌですよ、いかにもフランスっぽい名前でしょう。

ところが、著作権と肖像権は別モノなので、ざっとインターネットで調べた程度ではフランスでパブリシティ権がどう判決されているかわかりません

松本俊輔「表現の自由と肖像権 : 情報法の構造を求めて 外国法研究(2)ドイツ・フランス編」(『相模女子大学紀要. C 社会系』相模女子大学紀要等編集委員会編,75 2011年度,pp.61-76【Z71-Y355】)
https://ci.nii.ac.jp/naid/110008918371 

この相女の紀要にもしかしたら載ってるかな…。大学図書館か国立国会図書館に行くしか読めなさそうですね…。

ただ、ピンク・レディー事件の1年前にこんな紀要が書けるわけですから、フランスでも肖像権の判例がそこそこありそうな気はしますね。

今回の件はいまどういう状況なのか

現在、公式サイトでは単なる「ご報告」をいただいている状況です。

弊社より関係各所を通じ、「Patinage Magazine」誌に対し、
アスリートの肖像使用および商品販売についての経緯と説明を求めておりますが
6月19日現在、
当該サイトでのクラウドファンディングが継続して行われておりますため、急ぎ、
このような形ではございますが
ファンの皆様に事態の経緯をご報告差し上げた次第です。

(上記引用註:一文を抜き出し改行・太字を装飾しました)

この通知の内容から、肖像権がどうこう、著作権者がどうこう、と論じるには早い気がします。

このお知らせを受けて一ファンがやれることといえば、「公式サイトのお知らせ内容を理解すること」「このクラウドファンディングのどこが問題点になっているか考えること」「『肖像』について考えること」ではないでしょうか。

なぜかといえば、サイトのお知らせ文の中で「権」という単語は一語も使われていないですからね。

(ですからこのnoteも早計ということに。概要ですのでお許しあれ)


締め・「肖像」の取り扱い

さ、今回は情報ブログにありがちな言葉で締めましょう。

いかがでしたでしょうか? 「肖像」について理解できましたか?

…すごく煽られているような文句ですよねこれ…(気分を害された方、すみません)

気を取り直して。

肖像というのは、様々な創作物に使う言葉です。報道写真でも、ファンアートでも、指人形にも、つぶやきにまで。

そして、肖像に発生する権利は2面の性質を持つ。プライバシーとパブリシティー。

応援する選手が影響力のある存在であればあるほど。その顔に・体に、顧客吸引力があればあるほど、肖像権というのはややこしくなっていく。

所属先のある選手。特に、マーケティング会社と包括契約を結んでいる選手。特に、スポンサーがついている選手。特に、メディアに出ているスケーター

気をつけましょう。

彼らの肖像を不当に使うことのないように。彼らに、母体に、不利益をもたらさないように。彼らに心労を負わせないように

権利関係というのは複雑で、現法律は現代;IT時代に追いついていない部分があります。

法が追いついていないからこそ、何が彼らの迷惑になるのか?

それは当人の意思で金銭授受が発生しているものなのか?

逐一、立ち止まって考えることが大切だと思っています。

外国語の訳なんかもね、有志の翻訳を一言一句信じるのではなく、自分でもニュアンスを考えるのがいいですよね。いまは自動翻訳もあるんですから。

他人を信じることは美しい精神だと思いますが、いくら名訳を信じていたからといって、他の人がみんなやっていたからといって自らがした行動の責任を転嫁してはいけません。少しくらいは自分で調べましょう。


肖像権を守るためにはひとりひとりの心がけも大切です。

自分は彼らのプライバシーに介入していないか?

自分は彼らの”顔”を使っていい立場なのか?

よく考え、そして行動したい、と改めて感じた公式からのお知らせでした。


最後までご覧いただきありがとうございました。 YC


今回参考にしたWebサイト

D1SK 髙橋大輔公式サイト https://d1sk.com/ 

宇野昌磨公式サイト https://shoma-uno.com/ 

コトバンク https://kotobank.jp/rule/ 

「肖像権について考えよう!」 https://www.jame.or.jp/shozoken/index.html

競技者資格規程 - 日本スケート連盟[PDFデータ] https://skatingjapan.or.jp/assets/file/jsf/04kyougisyasikaku_02.pdf

Twitter [検索:Patinage Magazine 弁護士] https://twitter.com/

肥後橋法律事務所|判例チェックNo.67 http://higobashi.com/publics/index/20/detail=1/b_id=56/r_id=80/

ハフポストJapan内2016年05月19日記事:「モンローはOK、ヘップバーンはNG」 企業サイトで画像を使うとき注意すべき著作権と肖像権のお話 https://www.huffingtonpost.jp/six-apart-blog/copyrights-portrait-rights-website_b_7338886.html

レファ協DB>レファレンス事例詳細 https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000235281

著作権のほうが気になってしまった方向けの参考webページ

著作権法 - e-Gov法令検索 - 電子政府の総合窓口(e-Gov) https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345AC0000000048 

著作権|文化庁 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/ 


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編集履歴:

6/20 17:25 少し語句を修正、追記しました。

6/21 0:40 見出しを2つ付け足しました。語句の修正を行いました。









つぶやき

それにしても…この大量注文からの大量キャンセルでしょう…。どうなるやら…。仏ス連が関わっている雑誌?のようですし。仏選手好きなのでなんとかなって欲しいですTT