Ⅰ-4.義務教育内でのウィンタースポーツの扱い

訪問ありがとうございます。フィギュアスケートを考えるnoteです。

この記事では、保健体育教育におけるスケート競技について書いています。

引用がとにかく多いので、引用部分以外を読むのがオススメな記事です。


文科省の役割

皆様、文部科学省という行政組織をご存知でしょうか。

文科省と略されるこの省は、外局として、スポーツ庁(オリンピック・パラリンピック課を含む)、文化庁(著作権を管理しているところ)を含み、本庁では教育・科学や技術の振興・理科学的な研究部門などがあり…と、このnoteで取り上げる内容全般にほぼ間違いなく絡んでくる組織です。

とりあえずリンクをぺたり。 https://www.mext.go.jp/

今回のnoteはその中でも特に教育、更には「スケート」というスポーツの取り扱いに着目した内容です。


“新しい学習指導要領”

文科省が行っている大切なことのひとつが『学習指導要領』の作成です。

一昨年、2018(平成30)年度、幼稚園ではいち早くこの“新しい学習指導要領”が導入されました。

今年度、2020(令和2)年4月1日から小学校で導入。来年2021(令和3)年度からは中学校で導入され、更に翌年の2022(令和4)年度からは高等学校で、と順次導入されていくはずでした。

感染症対策のため公立学校を休校せざるを得ないというイレギュラーから始まった令和2年度。いったいこの指導要領、今後の導入はどうなってゆくのか…。

数年越しの企画(企画と言うと途端に軽く…)のため、中学、高校に新指導要領を導入する年度は来年、再来年で変わることはないとは思いますが、現場は大変ですよね…。先生方、SSSの方々、お体大切になさってください…本当に…。


学習指導要領からの引用~保健体育編 より

雑談はほどほどに、実際に学習指導要領から「スケート」という単語を拾ってみましょう。

小学校学習指導要領(平成29(2017)年告示):科目別解説 【体育編】

第3章(2)内容の取扱い

(9) 自然との関わりの深い雪遊び,氷上遊び,スキー,スケート,水辺活動などの指導については,学校や地域の実態に応じて積極的に行うことに留意すること。  ~~中略~~  (9) は,諸条件の整っている学校に対して,自然との関わりの深い運動の指導を奨励していることを示したものである。


中学校学習指導要領(平成29(2017)年告示):科目別解説 【保健体育編】

第2章・第2節〔体育分野〕(3)内容の取扱い

(4)自然との関わりの深いスキー,スケートや水辺活動などの指導については,学校や地域の実態に応じて積極的に行うことに留意するものとする。
 自然の中での遊びなどの体験が不足しているなど,現在の生徒を取り巻く社会環境の中では,自然との関わりを深める教育が大切であることから,諸条件の整っている学校において,スキー,スケートや水辺活動など,自然との関わりの深い活動を積極的に奨励しようとするものである。
 指導に当たっては,季節,天候,地形などの自然条件の影響を受けやすいことから,自然に対する知識や計画の立て方,事故防止について十分留意する必要がある。


高等学校学習指導要領(平成30(2018)年告示):全体

第3章 主として専門学科において開設される各教科・第10節 体育

第6 スポーツⅤ (※引用者注:スポーツⅤ=野外の運動)
 1 目標 ~~割愛~~
 2 内容
 1に示す資質・能力を育成するため,次の〔指導項目〕を指導する。
〔指導項目〕
(1)自然体験型の野外の運動への多様な関わり方
(2)競技型の野外の運動への多様な関わり方
 3 内容の取扱い
(1)〔指導項目〕の(1)又は(2)のいずれかを選択して扱うことができる。
(2)〔指導項目〕の(1)については,キャンプ,登山,遠泳などの水辺活動の中から,(2)については,スキー,スケートの中から適宜取り上げるものとし,その他の運動についても,機械等の動力を用いない活動を中心に,学校や地域の実態に応じて扱うことができる。
(3)特定の期間に集中的に校外で授業を行う場合は,安全対策に十分配慮するものとする。

【保健体育編 体育編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 (PDF:3.2MB)  こちらの科目別解説ではもっと具体的にスケートを体育科目として行う際に指導する要領を書いています。PDFをCtrl+Fしてみてください。(引用が多くなりすぎて主客転倒するので案内のみですみません…)

スポーツへの関わり方の変化

はい。

小学校、中学校、高校と、3パターンの学習指導要領が出揃いました。

今回、指導要領改訂を読む中で特に重要に感じたのが、従来の『スポーツの「振興発展」に寄与する資質や能力を育てる』という文言をチョッピリ変化させて『スポーツの「推進及び発展」に寄与する資質・能力を育成する』という言い回しにしていることです。

「する,みる,支える,知る」…実践を通して、スポーツに共に関わっていこうよと、そう改訂したようなのです。

そして、小中学校教育からの高校教育をシームレスにつなぐ…12年間の教育を前提に科目を設定しているようにも読めました。

今はなかなか攻めているんだな~と感じましたね。

学習指導要領まとめ~小中学校

では、戻りまして学習指導要領の考察をしていきます。

小学校と中学校、義務教育のなかでは、スケートはあくまで“自然との関わりの深い運動”であり、“学校や地域の実態に応じて行う”、以上の言及がありません。

これはつまり、義務教育において、地域の実態がない場合は、雪遊びや氷上遊び、スキー、スケート、水辺活動…季節性のあるスポーツに課題として触れる機会はないということです。

逆を言えば、地域の実態があれば良いわけであって、降雪する地域では当然雪遊びをするでしょう。水が凍る土地では氷上遊びをするでしょうし、スキー場があれば課外授業はスキー場で行われるはずです。スケート場がある、ならばスケートをしようと。

これだけ地域差がある内容です。

当然、義務教育で課せるはずがありません。

極端に例えるなら、沖縄県内の学校でスケートを必須授業にしろと言っても難しいですよね。サザンヒルしかないもんね…。

学習指導要領まとめ~高等学校

しかし、高等学校の指導要領になりますとグッと傾向が変わります。

まず、高等学校=高校はすべての人が進学する所ではありません。そのためでしょうか、指導要領の中で言及しているスポーツの幅が広くなっています。(指導要領で「スケート」を検索すると目に入る「レスリング」がいい例です。日本レスリング強いよな。)

高等学校の指導要領では「スケート」という言葉にたくさん出番があって、項目的には(Ⅰ 採点競技及び測定競技)及び(Ⅴ 野外の運動)の、各選択科目中の一課題になっています。(https://www.mext.go.jp/content/1407073_07_1_2.pdf 科目一覧254頁参照)

高校からはスケートを滑る活動が単位になるということですね。やったぜ!

言われてみれば、某リンクで高校の生徒さん達が1/3貸し切りしているのを目撃したことがあります。あれは選択授業だったんですね…!


締め・スケートを学ぶ機会、スケートに触れる機会

こんな風にわざわざ学習指導要領をひかなくても、昔からスケーターをしていた人は近ごろのスケートリンクで何が起こっているのかをご存知かもしれません。

自分が目撃したように、学校の生徒さん達がスケートに実際に触れている光景を何度も目にしていることでしょう。足取りおぼつかない壁友スケーターにちょっとした指導をしたという方もいらっしゃるかもしれません。お若い男女が小さな樹脂パネルのリンクを体感している光景を見る機会もあったでしょう。季節性のリンクには昔から今まで子供達の姿が絶えることはないでしょうし、そんなお子さんに手を焼く親御さんをそっと補佐してあげたこともあるかもしれません。

何かの技能を習得するとき、独学で習得するのと、他者から教えを受けて習得するのとでは効率が格段に違います。

2020年現在、日本のスケート競技は世界的にも高い水準を推移しています。

学校で学ぶ授業としてのスポーツ、興味があってやってみるスポーツ。

どちらも地域の格差なく、初心者向け指導がもっと確立し、技術力別で集まる場所を確保できるのなら…?

まとめを作りながら、そんな感情が改めて浮かんできました。

もっとたくさん、滑るための場所があるならば。教育科目として、身近なスポーツとして、もっともっとスポーツ人口を増やせるのではと思うのですが…。


最後までご覧いただきありがとうございました。 YC


今回参考にしたWebサイト

文部科学省 https://www.mext.go.jp/

学習指導要領「生きる力」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

エナジックスポーツワールド・サザンヒル https://southern-hill.com/ (いつか行ってみたいリンクです!)

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