「チャンス」に騙される1
アリエリーらは、「扉ゲーム実験」を考案しました。
プログラムを立ち上げると、画面に三つの扉が表示されます。それぞれの扉は、赤、青、緑に塗られています。
被験者は、扉をクリックすれば、どの部屋にでも入ることができます。一つの部屋に入ったら、クリックするたびにある範囲の金額(1セントから10セントのうちの一つの金額)をゲットできます。部屋ごとに、ゲットできる金額の範囲が異なります。部屋から部屋への移動は自由ですが、扉を開けるたびにクリック1回分を使ってしまいます。トータルでは、100回クリックすることができます。獲得した金額は画面に表示されるようになっています。
被験者Aは、最初は赤い扉を選んで中に入りました。そこで1回クリックすると、3.5セントでした。もう1回クリックすると4.1セント、三度目は1セントでした。あと数回試した後、Aは緑の扉の部屋に移動しました。そこで3回クリックすると、3.7セント、5.8セント、6.5セントでした。その後、Aは青い扉の部屋に移動しました。そこで3回クリックすると、いずれも4セント以下でした。Aは緑の部屋に戻って、クリックの残りすべてを使いました。
この後、一つ条件を付け加えました。どの扉も、クリック12回分放置すると、消えてしまうようにしたのです。
この条件で、被験者Bがゲームに取り組みました。青い扉に入って、3回クリックしました。緑と赤の扉が消えるまでの回数が、そこまでで8回に減っていました。赤い扉から入って、消えるまでの回数を12に戻し、そこで3回クリックしました。そこまでで緑の扉の残りが4になったので、そこに移り、3回クリックしました。ここでBは、緑の部屋が一番割が良いらしいと気付きます。しかし、そうでないかもしれない、という考えも頭をよぎり、青と赤の扉が消えてしまうとチャンスを失うことへの不安から、それら二つをあきらめることができず、結局3つの扉を行ったり来たりして、損失を増やしてしまいました。どれか一つに決めれば、たとえ一番割の悪い青の扉であっても、行ったり来たりするよりは多くの利益が得られたはずなのに。
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