先延ばし2

 車の部品は、ざっと2万種類弱くらいあるそうです。それぞれの部品には寿命がありますから、安全に乗り続けるためには、寿命が来る前には交換しなければなりません。問題なのは、部品ごとに寿命が異なっていることです。このようなとき、ヒトは、少しくらい大丈夫だろうと点検や部品交換の時期を先延ばししてしまいます。アメリカのフォードは、点検の時期を客任せにしてあったために、点検が不十分なままの車を野放しにし、同時に、フォード自身が点検による収益を得る機会を失っていました。


 そんなとき、日本のホンダは、すべての点検を三種類の定期点検にまとめていました。たとえば、半年又は7500キロ、1年又は15000キロ、2年又は4万キロの三種類というように分けてまとめ、どの車種や型にも共通のものとしていたのです。エンジニア的には無駄が多くて賛成しかねるものだったようですが、顧客にとってはシンプルで分かりやすかったことから、フォードも同じような定期点検のシステムを導入したところ、点検による収益が激増したそうです。


 選択肢が多く、判断に迷いが生じやすい状況では、ヒトは結論を出すことを先延ばしする傾向が強まりますが、答えを出しやすいシンプルな選択肢にすることで、素早い意思決定を促すことができるということが分かります。
人間ドックも、社会保険から補助が出るというインセンティブに加えて、検査項目がパックになっていてシンプルであることで多くの受診者を確保できており、ひいては日本全体の医療費の削減につながっているのだと思います。

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