「チャンス」に騙される2

三つの扉の実験の続きです。

 扉を消したくないという気持ちが強く、結局損をしてしまう行動に及びやすいことが分かったので、扉を消さないためには、3セント払わなければならないという条件を追加しました。

 これでも結果は同じでした。ますます損失を増やすことになってしまったのです。

 優秀な学生ならば、事前に練習をすれば、何が得か理解できると思って、練習の機会を与えても、その期待は見事に裏切られてしまいました。

 それでもだめなら、消えた扉を1クリックでいつでも復活できるという条件を付け加えました。

 結局、扉が消える不安にまさるものはないということが確認できただけでした。

 チャンス、あるいは可能性を放棄することは、かくもヒトを動揺させるのです。

<<<
 「風と共に去りぬ」のなかで、レット・バトラーが去っていくとき、スカーレット・オハラはレットにしがみついて哀願した。「私はどこへ行けばいいの。何をすればいいの。」ずっとスカーレットの振る舞いに耐えてきたレットはもう限界に来ていた。「正直言って、俺には関係ない。」このせりふが映画史上もっとも心に残るものとして票を集めるのは偶然ではない。これが広く人々の心に訴えるのは、断固として扉が閉じられるからだ。このせりふは、すべての人に閉じなければならない扉ーー小さいものも大きいものもーーがあることを思い出させる戒めとすべきだ。
>>>(「予想通りに不合理」文庫版 P278)

 三つの扉が一つも閉じることのないように維持することにとらわれて、自分の労力もコストも無駄にしてしまう愚かなヒトの性(さが)。いっそのこと一つだけ扉を残して他は無理に閉じてもらった方が幸せになれる、ということをレットは言っているのでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?