アンカリング効果 1
私が大学に入った45年ほど前に、街中でコンビニを見かけるようになりました。それ以前は地方に住んでいたので、ようやく田舎にもスーパーができたというくらいの時期でした。当時のコンビニは、開いている時間が長いだけで値段が安くないスーパーといった見方をされていて、貧乏学生は余り利用していませんでした。物の値段だけで比較するという考え方から利便性にお金を払うという考え方に思考を転換させるには、かなりの時間がかかりました。スーパーで売っている値段がアンカー(錨;いかり)になって、コンビニで売っている値段は高いと感じていたのです。
今日取り上げるのは、アンカリング(効果)についてです。
アリエリーは、経営心理学を教えている学生に対して、ある日、詩の朗読をしました。彼は、もちろん、芸能関係とは全く関係のない、つまり、詩を朗読してお金をもらうような特別の才能も訓練経験もない、ただの大学の先生です。
朗読した後、アリエリーは、次の金曜の夜に、会場を借りて、短い詩、中くらいの詩、長い詩を朗読することを予定しているが、会場の都合で参加できる数に限りがあるので、オークションで値段を決めたいとして、入札用の用紙を配りました。
ここで学生を二つのグループに分けます。
一方の学生たちには、金額を記入するのに先立って、仮定の話として、10分間の朗読に10ドル払う意思があるかどうかを答えてもらい、その後に、元のオークションの値段を記入してもらいました。
もう一方の学生たちにも、だいたい同じことをやってもらっているのですが、仮定の話の部分だけを変えています。10ドル払ったら10分間の朗読を聴いてもいいかを、オークションに先だって答えてもらったのです。
さて、アリエリーによる詩の朗読に対して、学生たちはいくらの値段を付けたのでしょうか。
10分間の朗読に10ドル払う意思があるかどうかを答えてもらった後に値を付けた学生たちの結果は、平均して、
短い詩・・・・・・約1ドル
中くらいの詩・・・約2ドル
長い詩・・・・・・約3ドル
払うというものでした。
これに対して、10分の朗読に10ドルもらえるなら朗読を聴くかどうかを答えた後に値を付けた学生たちの結果は、平均して、
短い詩・・・・・・約1ドル30セント
中くらいの詩・・・約2ドル70セント
長い詩・・・・・・約4ドル80セント
の金額の支払いを求めたというものした。
同じように、アリエリーによる詩の朗読を聴いた学生たちが、アンカーがあるかないかで、これほど異なる判断をしたということです。
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