共有地の悲劇2

 裏切りが人々の不信感を募らせ、結局誰もが損をする「共有地の悲劇」を招き、一度失われた信用は取り戻すことが容易でないと言われています。しかし、信用を回復する方法がないわけではありません。

 1982年9月、シカゴで7人の人が市販薬を服用した後に亡くなりました。テロリストが薬のカプセルにシアン化合物を混入したのが原因であることが判明しました。この薬の製造販売を行っていたP&G社は、この危機の当初から、消費者の安全を最優先に考え、責任がどこにあるにせよ、まずは悲劇が拡大しないことに全力を注ぎました。その薬の生産を自主的に停止し、カプセル状のその薬を市場からすべて回収し、すぐに代替の錠剤を提供しました。これにより、P&G社は、数百万の薬の瓶を回収し、一億ドル以上の費用を掛けることとなりました。

 その薬の売り上げは、事件後に激減しました。多くの専門家は、P&G社ももうおしまいだろうと予想しました。しかし、その後P&G社は、異物混入を防ぐ仕組みのカプセルを導入し、新包装で商品を市場に投入して、大宣伝を行ったところ、急速に売り上げを回復し、株価は2か月ほどで元に戻ったそうです。

 アメリカでは、その後しばらく同様の危機場面で、P&G社のような対応を取る企業は見られなかったようですが、日本では暖房器具などの不良品が出回った後にリコールをして対応するという企業が複数あったように記憶しています。燃費について、うその情報を消費者に提供していた三菱自動車が、顧客に謝罪として一律10万円を支払ったという話も聞いたことがあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?