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最近見た作品まとめ(聖なるズー、黒牢城、オッドタクシー、ピアノのおもちゃ 他)

・濱野ちひろ『聖なるズー』

犬や馬をパートナーにする動物性愛者を追ったノンフィクション。
面白かったです。

まず最初に言いたいのは、この本に登場するような動物性愛者(愛と了承の上で動物と性交渉する人)は世界的に見てもごく少数で、そういう風習を持つ村や民族がある訳ではないということ。

一応「ゼータ」という動物性愛者の団体が登場しますが、本文を読んだ限り、団体の構成人数もさほど多くは感じられません(20人程度なのではないだろうか)。

だからこの本の内容から統計的な意味を見い出したり、このトピックを社会学的に論じること(つまり彼らの行動原理を社会のあり方から解き明かすような試み)は出来ないと思います。

ただ、こういう考え(行動)をする人間が存在する、という事実自体が、作者や読者個人に対して何かを訴えかけることは出来ます。

その意味で、この研究の目的を「現代社会に疑問を呈す」などではなく「あくまで個人的な性的トラウマと向き合うこと」に設定したのは理性的で合理的な判断だと思います。


内容について言えば、僕は「動物性愛者」の考えや行動について、割とすんなり受け入れることが出来ました。

それは僕がそもそも犬や猫を飼ったことがないからでしょう。
だから世間の人々ほど「愛玩ペットは性とは程遠い愛らしいもの」という感覚が無いのでしょう。

(むしろ、子供の頃に飼っていた小鳥はしきりに僕に求愛をしていたので、むしろ動物は性的なものだという発想があったのかもしれません)

強いて言えば、この本を読む前は
「動物から性行為の了承を得ることは出来ないだろう」という考えがあったので、動物性愛は成り立たない(欺瞞である)のではないかという疑問がありました。

ただ本書によれば、犬や馬が性交渉を求めてくる(誘ってくる)ことが実際にあるし、それは自明と言えるほど分かりやすい行為なのだといいます。
(また文中の説明によれば、人間が自宅で半裸で過ごす習慣がある場合、それを見た動物が性交渉を求めてくることが多いらしいのです。そのために日本では動物性愛は稀ではないかという説明がなされています)


この説明で、僕は納得してしまいました。
犬を飼っている人からすれば、犬が空腹を訴えたり、退屈を訴えたりするのが自然と分かるといいますよね。それと同じく、性的な要求もあり得るだろうと思いました。
これもやはり、犬猫を飼ったことがない故の感じ方なのだと思います。
(もちろん筆者の筆力・説得力による部分も大きいでしょうが)

このようにすんなり納得されてしまった僕は、
筆者が想定したであろう「嫌悪感→納得」の道程を歩めなかったので、勿体なかったかもしれません。


とはいえこの本の面白さは、動物性愛をルポすることそのものではなく、動物性愛(動物との同意あり性交渉)を筆者の受けた性暴力(人間との同意なし性交渉)と対比させた点にあると思います。

結局のところ、「動物とのセックスを許容できるか?」ではなく「自分のセックスは本当に同意が取れていたか? 正しく相手のパーソナリティを尊重していたか?」を思考実験的に考えさせる点がこの本の意義と面白さを感じました。

自分の生き方を「普通だから」という理由で思考停止していい時代ではない、ということですね。


・米澤穂信『黒牢城』

氷菓でおなじみ米澤先生の、時代小説と本格ミステリの融合に挑んだ作品

序盤の話は「ミステリとしては退屈かな~」と思っていましたが、
終盤の真相解明(の連続)は純粋に楽しく、また時代小説らしい生き様、死生観も味わえて大変面白かったです。


この小説を時代物として見た時に、舞台設定がバリバリの時代物であることは勿論のこと、登場人物達の行動原理(死生観や恥の概念)がきちんと戦国時代を反映したものである点が面白く、評価に値するポイントです。

(例えば「謎を放置してしまうと、『神罰だったのだ』と本気で信じてしまう者が増える」とか)


一方で、起きる事件は「凶器の消失」「顔のない死体」「ワイダニット」という風にゴリゴリの本格ミステリなので、オタクからすれば「たまんねぇ~」とニヤニヤしてしまいます。

更に、謎を解けない将軍(荒木村重)が、囚人(黒田官兵衛)に知恵を借りるという構図は言うまでもなく安楽椅子探偵のそれであり、ホームズ以来連綿と続くバディ物でもあるわけです。


更に、「時代物」×「本格ミステリ」というのが、
ことミステリとして見ると、いわゆる「特殊設定」として活きていました。


でも全体を通すと「歴史物としての面白さ」の方が評価されている印象。
何にせよでも完成度は高いです。


・アニメ『オッドタクシー』


東京のタクシードライバーが、女子高生失踪事件、ヤクザの騒動などに関わっていく群像劇。
人物が可愛らしい動物で描かれていたり、会話がコミカルなおかげで楽しげなアニメなのですが、
内容は殺人、美人局、バズりたい大学生、アイドルオタク、重度の廃課金、売れない芸人などなど結構ヘビィ。下手すりゃウシジマくんみたい。

しかもちゃんと犯人捜し(フーダニット)が用意されていてミステリとしてもニヤニヤしてしまいます。


とにかく凄く面白かった! 強くお勧め。
毎日一話ずつ見るのが最高に楽しかったです。


・『100分で名著』エドガー・アラン・ポー特集。


 これも面白かったな。
 ポーはミステリオタクからすれば、推理小説を作った神様みたいな人なんですが、
 ポーが雑誌の敏腕編集者だったというのに妙に納得しました。
 やっぱりミステリというのはエンタメであって、大衆の方を向いていて、その構造で人を楽しませるものなんだな。


・趣味で数学をやりたい。

 皆さん数学って知ってますか。あれ本当に楽しいですよね。
 僕は数学科出身ではない(理工学部の別学科)ので基礎数学しかやっていないのですが、
 本当は数学をもっとやりたかったな。
 特に集合論が好きなので、その辺の本を読んでみたいなと思ってます。
 でも持ってきたはずの『無限と集合』が見当たらないんだよな……もうちょっと探してみます。


・ロールアップピアノを買った


ピアノのおもちゃですね。

0歳の娘用、という建前ですが、実際には自分用です。
楽器を一切やったことがないので、少しはやっておきたいんですよね。

考えがまとまらないときにポロポロっと弾いて気分転換したい。

まあ好きに遊んでみます。





雑多な内容だな! 以上です。

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