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【Q7.日本の懸垂式モノレールに1日で全て乗る】1.始発より千葉モノレール完全乗車

 早朝五時過ぎに、千葉みなと駅至近のビジネスホテルをチェックアウト。新しいクエストの始まりだ。
 JR京葉線の駅構内を通り抜け、千葉都市モノレール側に向かう。ニューデイズや飲食店はまだ開いていないが、高架下のスーパーマルエツは営業を行っている。二四時間営業のようだ。駅周辺には、他に目立った商業施設も無いようなので、儲かっているのであろう。

 自販機でコーンポタージュスープを買う。朝飯だ。千葉都市モノレールの始発列車、県庁前行きがホームで待機している。この列車に乗るためだけに、わざわざ駅至近のビジネスホテルで前泊したのだ。
 千葉モノレールには、千葉みなと駅と県庁前を往復する系統と、千葉みなと駅と千城台駅を往復する系統の二系統が存在する。千葉みなとから千葉までの区間は二系統とも共通だ。千葉から分岐して県庁前行きは南へ曲がり、千城台行きは北へ曲がる。
 この列車は「県庁前行き」だが、途中千葉駅にて「千城台行き」と接続している旨が、アナウンスにて伝えられる。
 二両編成。車内には数名の乗客が居る。壮年以上の男性の割合が多い。早朝出勤か、もしくは夜勤明けだろう。車両間の移動は出来ない。

 5時37分千葉みなと発。進行方向右側の車窓に、京葉線のプラットホームが見える。まだ暗い。ほとんど照明が点いていない、千葉市中央部のビル群の間を縫って進む。


 幹線道路を跨いで千葉駅に着く。乗客のほとんどがここで下車する。車輛は引き続き、まだ暗いそごうの脇をカーブして南に進む。

 5時47分県庁前駅着。終点まで乗っていたのは私一人だけであった。乗ってきた車輛は、折り返しの千葉みなと行きとなり、三分後くらいに発車する。乗客はまだ少ない。
 不正乗車をしてはならない。一旦改札外に出る。この駅は「関東の駅百選」に選ばれたというが、その駅舎の全貌はまだ暗くて良く見えない。寒い。レールが中空に高く突き出され、途中で途切れている。切断面をそのまま剥き出しにしたような武骨そのものの構造物を、都市空間にさらけ出している。モノレールや新都市交通の終着駅で割と良く見かける、ありがちな風景だ。撮影する。人の気配がほとんどしない荒涼とした風景に、車の走行音と風の音が聞こえる。これはこれで悪くない。寒い。



 モノレールの次の便は6時17分発だ。時間が余る。改札内に再び入るが、何もやることがない。この駅は無人駅だ。待合室のような空間は特に無い。
 6時17分、県庁前発。東側の車窓を眺めていると、次第に明るくなってくる。朝日が昇り、東の空が地表から徐々にオレンジ色に染まる。夜の闇は次第に薄くなり、オレンジとの境目がコバルトブルーに染まる。夜明けだ。


 6時23分千葉駅着。ここで、千城台行きに乗り換えだ。ホームが異なるため、一度階段を降り、また登る必要がある。時間的な余裕は余りない。急ぐ。
 6時25分千葉駅発。駅を出るとすぐに、北に向かって大きくカーブする。次の駅は千葉公園。それなりに広い池を眼下に見下ろす。中々の車窓だと思う。これは公園の池なのか、もしくは千葉城の堀の一部なのか?

 千葉市の中心部から遠ざかるに連れ、車窓には中小の雑居ビルや住宅の姿が増えて来る。住宅地の中に、しばしば空地や森が見られる。途中、高速道路を跨ぐ。京葉道路だ。

 スポーツセンター駅を出ると、広く拓けた地面がある。陸上競技場だ。早朝の、まだ誰もいない競技場の至近距離を、ゆっくりとカーブしながら走る。なかなかの景観だ。


 次の、動物公園駅の付近では、その名の通り公園らしき設備が観察される。珍しい。

 順調に走る。どこまでも住宅地と、団地が広がる。山らしい山が特に存在しないのが、北総から南茨城までの自然地理学的特性であることを、実見により確認する。朝焼けに染まるその平板な台地の上に、送電塔がどこまでも遠くまで連なっている。


 懸垂式モノレールだが、乗り心地は今のところ、普通の跨座式モノレールと特に変わらないように思う。
 
 JR総武本線との接続駅である、都賀駅を過ぎる。地上を走行する総武本線を高架で跨ぐ。
 6時49分、終点千城台駅着。これにて、千葉モノレール完全乗車を達成した。千葉みなと駅を出発したのが5時37分なので、一時間一二分かかったことになるが、そのうち三〇分は県庁前駅での待ち時間だ。本数が少ないこんな早朝ではなく、日中に乗車すれば時間を短縮出来るであろうが、これから先の旅の予定もあるので、止むを得ない。
 窓口の駅員に声をかけ、駅スタンプを借りて押す。ここでもやはり、一度改札を出る。
 改札は歩道橋に繋がっており、道路を跨いだ歩道橋の先は、複合商業施設と団地に続いている。商業施設はまだ開いていないが、その方向から人が次々に向かってくる。世の中の人の正月休みは、既に終わっている。出勤時間だ。

 終点千城台駅の先のレールも、やはり空中で途切れ、市街地にそのまま投げ出されたようになっている。



 
 
 

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