鎮静

薄い雲の層が君を裁断していく
祭壇の上で両手を合わせる 蒼白の祈り
あのとき全身麻酔が抜けなければ
今も僕は病気に守られていたのか
遮光カーテンの向こう側 歪む子どもの声
微熱の角度で傾く背骨をなぞる刃先
安全な剃刀 残酷に加減をする
カラフルな額縁の内側は揃って緑
森の中を彷徨う幻肢痛の行方
不明な点がありましたら
何なりとお申し付けください、と
耳に髪をかける女の仕草を理不尽に憎んだ
床に零した牛乳を拭くための皮膚
ミルフィーユ状の綿飴が僕の身体を引き裂いていく
糖度の高い肉体
四方から伸びてくる無数の舌
生温い脅迫状
そんなものでは僕は促進されない
細分化されていく感情たち
一つが二つに、二つが四つに
層の隙間に卵を産み付けた
誰が?
祭壇を両手で揺する少女
「救うな!救うな!救うな!救うな!」
傾く置物
落下する救済
堕ろさないと、卵
誰との子どもかわからない知りたくない
分娩台に脚を乗せる
「先生、あの時のようにかけてくれませんか」
口を覆うプラスチック
傾く視界の隅で少女の私が両手を合わせる
「救うな!」
危険な剃刀 やさしく加減して
チューブを絶つ

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