カルピスの涙

もしもわたしが死んじゃったら、机の上にはお花じゃなくてきみの顔文字をマジックペンで描いてね。先生に渡せなかったラブレターはきみのロッカーに入れて置いたから、代わりに渡しておいてくれたら嬉しいな。そう、帰り道の路地裏の室外機の上でよく眠ってた真っ白い野良猫のこと憶えてる?あの猫はね、カルピスって名前なの。私がつけた名前。真白くてカルピスの前を通るとふわっとあまい香りが流れてきて、そのときわたしがカルピスを飲んでたのもあるんだけど、とにかくカルピスしかない!って思って、あの猫はカルピスになったんだよ。だから、またあの路地裏でカルピスを見かけたら「カルピス」って呼んであげてね。わたしにしか懐かなかったからきみが呼んでも知らんぷりされちゃうかもしれないけど、でも根気強く名前を呼んであげてね。いつか話せるようになるかもしれないよ。もし話せるようになったら、わたしとカルピスの秘密をきみも知るようになるかもしれないね。夢の出口。わかったらきみもわたしの所に来てね。なるべく遅くまで知らないでいてね。じゃあね。短い間だったけど、ありがとうね。

                                                        眠子


(おやすみし損ねた夜をカルピスの涙で溶かして真夜中の自動販売機の右下の飲み物を買うと、夢の出口の鍵が出てくるよ。間違えて左下を押すときみへのラブレターが出てきちゃうから絶対に押しちゃダメだよ、おやすみ)

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