密葬

ひんやりと湿った永遠のなか
電線で首を吊った鳥を思い出す
茜と藍の境界をもがき彷徨った親子
規則正しいひかりをいつも探していた
そんなひかりが存在しないことを知りながら
それでも健気に探しているふりをした
たった一つの居場所から消去されないように
不溶性の世界に融けようと必死だった
メトロノームの音で目が覚める
無菌室より白く
プールの底より蒼く
肉が焼かれる釜より紅く
樹海を這いずる細胞より貴い
冷凍保存されたつめたく硬い羽根

" はやくここから出してほしい
融けないうちにはやくここから "

ガラスケースがかたかたと笑う
爪を立てながら上から下へ解凍していく
無数に空いた穴の壁
誰にも見られたくない祈り
見られたら無効になる弔い
白黒の肖像画の偶数の視線
ピアノ線を切って首に巻く
あの日の鳥のように羽根を伸ばして
延び続ける影がグロテスクに美しくて
今なら見られてもいいと思う
見られたいと思う
今見ないと残酷だと思う
首に食い込む銀色がやさしく融ける
ひんやりと湿った呼吸の終わりのなか

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