調律

膜を張る春、幕を閉じる。捲し立てられ破れた鼓膜を張り替えることが出来たら、こんな空想はきっとしなかった。銃口を咥えながら下着を外す女。胎児は子宮で呻き、膣を出たらすぐにでも咆哮がしたいはずなのに、なぜこの女は自分の快楽にこんなにも奔放でいられるのか。たかが一滴のDNAで私の何が分かるのか。鼻を啜りながらヒールで駆けていく少女は幼そうで、とても大人には見えなかったけれど、あの一滴の秘密を知ってしまったからには、子どもと言うには大人すぎてしまった。いいのよ、いつかはみんな大人になって、その一滴のことも知ってしまうんだから。一滴。あなたのわたしの、感情の。精神の一滴、私にも飲ませて、先生。お願い。

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