女は分娩台の上で脚を広げている

僕は子宮のなかでそれを眺めていた

女の澄ました顔が臍の緒に障る

羊水の嘔吐する音

首を絞められた時に出る

妹のか細い喘鳴

川の向こうに出たかった仲間は

川の手前で溺死した

袋詰めされたぬいぐるみの名前を叫ぶ男が

一つ二つと石を拾い上げ、積み、罪、詰み

埃の被ったベビーベッドの傍ら

まぐわう双子はどこまでも独り

存在しない住所に、存在する人宛に遺書を送る

赤い口に白い長方形を挿れる

「またね」

赤い口の奥から聞こえる耳障りな声

知らない人の声

でももうすぐ知る人の声

不快な声

私の声

嬌声

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?