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こうぞの森から -生物多様性と伝統文化を育む里山-

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里山の資源や環境価値を見直し再構築したい、そんな想いでフィールドを探していたところ、楮(こうぞ)という植物に出会いました。 生産・加工を学び、実践する中で日々感じていることや、…
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2022年9月の記事一覧

楮(こうぞ)の産業分類【後編】

農業界の産業動態 農業や農家という括りだけで、同じ土俵の感覚でいると考えるのは大間違いでした。国や自治体の農業政策のど真ん中にいる食料作物の「米」や「野菜」と違って、工芸作物に分類される作物は、主流に乗りきれない寄せ集めが多いのです。この認識はとても大事です。 工芸作物の中でも、パーム油、カカオ、コーヒー、薬草やゴムのように主要産業に直結するものは、確実な需要があり、国や自治体ではなく第二次産業の企業の専属農家として強力なバックアップ体制を受けられるようです。手厚い手当の

楮(こうぞ)の産業分類【前編】

そもそも楮という植物が栽培されていることすら知らなかった私。生産現場に飛び込んでから初めて知ることがたくさんありました。今回は楮の生産加工がどんな産業として位置付けられているのか、実体験を通じて感じたことをご紹介します。 林業?それとも農業? 最初の疑問はそもそも、楮って林業なんだろうか、それとも農業なんだろうか、という点でした。 林業には木材生産以外に、特用林産物という分類があります。山林から生産される産物のうち木材以外のきのこ類、木炭、竹、桐などの産物をさします。同

私が楮(こうぞ)に出会うまで【後編】

森や里山が生む価値 森林や里山から生み出されるバイオマスは、化石燃料や鉱物などの地下資源に比べると圧倒的に短い期間で生産することができる資源です。一方で廃棄される時も微生物によって分解されて土に還ってゆくので、他の資源のようにエネルギーや化学薬品等に頼らず、比較的短時間で分解されます。つまり地球にかかる負担が少ない資源といえそうです。 さらに、森林は素材以外にも、降雨を長い時間をかけて保水するダムのような水源涵養の役割や、光合成による二酸化炭素の吸収源の役割、そこに集まる生