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小説

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ミステリーが中心ですが、SFや人情ものもあります。
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#短編小説

短編『電脳の楽園』 第45回オール讀物推理小説新人賞最終候補作

みなさん、こんにちわ。 西村京太郎、赤川次郎、宮部みゆき、逢坂剛、石田衣良、朱川湊人、門井慶喜・・といえば、いずれも小説家として大変有名な方々です。 実は、ここに挙げた錚々たる顔ぶれにはある共通点があります。それは「オール讀物推理小説新人賞」を受賞してデビューしたということです。 今回紹介する短編は、第45回(2006年度)の「オール讀物推理小説新人賞」において、最終候補作6篇の内の一つに残った私の作品です。 内容は近未来のお話です。現在、バーチャル・リアリティの技術

短編『幸せな暴走 夏の奴隷』

「もう、それやめなさいったら!」 美沙が突然、怖い目をして怒鳴った。 おれは一瞬何を怒られているのか分からなかったが、彼女の睨みつけるような目をじっと見るうちに理解した。原因は今しがたフライドポテトの箱をゴミ籠に放り投げたことだった。 いや、正確にいえば、フライドポテトを半分ほど残したまま捨てたその行為が咎められているのだ。 休日の昼下がりの、ぽかぽかした陽気にあふれた日比谷公園での出来事だった。 その日、おれと美沙はランキングインしているハリウッド映画を有楽町で観

短編『脅迫者の報酬』

いきなりですが、小説の、小説らしい点とは何でしょうか? それは「人の内面を克明に描写できること」だと思います。 これは小説の一番の長所です。映像ではなかなか難しいです。だから、心理描写に長けた小説を映画化すると、たいてい失敗作に終わります。 この短編は、実はそういった小説的長所を生かすことを意識しました。 ドラマは外部の世界にだけでなく、人の内面にもあるんですね。 松本清張の『顔』などはその代表例でしょう。 清張先生の偉大なる心理サスペンスを目指して(むろん絶対に