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小説

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ミステリーが中心ですが、SFや人情ものもあります。
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#創作大賞2024

短編『電脳の楽園』 第45回オール讀物推理小説新人賞最終候補作

みなさん、こんにちわ。 西村京太郎、赤川次郎、宮部みゆき、逢坂剛、石田衣良、朱川湊人、門井慶喜・・といえば、いずれも小説家として大変有名な方々です。 実は、ここに挙げた錚々たる顔ぶれにはある共通点があります。それは「オール讀物推理小説新人賞」を受賞してデビューしたということです。 今回紹介する短編は、第45回(2006年度)の「オール讀物推理小説新人賞」において、最終候補作6篇の内の一つに残った私の作品です。 内容は近未来のお話です。現在、バーチャル・リアリティの技術

短編『奇跡のたくらみ』

「クリーンレディ」ってなんだろう? 臼井順子(うすいじゅんこ)の目が求人広告に吸い寄せられた。 その単語が妙に気になった。とくに「レディ」という言葉のもつ響きが心地よい。ふと、銀座のクラブでドレスを着ていたころの自分を思い出した。 さっそく広告主の門を叩いてみることにした。 「何々管理」という会社だ。 秋物のカシミアのセーターに茶のプリーツスカートという地味な装いの彼女の姿を目にするなり、人事部長だという面接の中年男性の顔がパッと輝いた。 いやいやよく来てくれた、

短編『幸せな暴走 夏の奴隷』

「もう、それやめなさいったら!」 美沙が突然、怖い目をして怒鳴った。 おれは一瞬何を怒られているのか分からなかったが、彼女の睨みつけるような目をじっと見るうちに理解した。原因は今しがたフライドポテトの箱をゴミ籠に放り投げたことだった。 いや、正確にいえば、フライドポテトを半分ほど残したまま捨てたその行為が咎められているのだ。 休日の昼下がりの、ぽかぽかした陽気にあふれた日比谷公園での出来事だった。 その日、おれと美沙はランキングインしているハリウッド映画を有楽町で観

短編『脅迫者の報酬』

いきなりですが、小説の、小説らしい点とは何でしょうか? それは「人の内面を克明に描写できること」だと思います。 これは小説の一番の長所です。映像ではなかなか難しいです。だから、心理描写に長けた小説を映画化すると、たいてい失敗作に終わります。 この短編は、実はそういった小説的長所を生かすことを意識しました。 ドラマは外部の世界にだけでなく、人の内面にもあるんですね。 松本清張の『顔』などはその代表例でしょう。 清張先生の偉大なる心理サスペンスを目指して(むろん絶対に

短編ミステリー『もしもし』

みなさん、こんにちわ。 Note誌上では5作目となる短編小説です。 私の投稿リストの中では、短編は圧倒的に読まれない部類です(笑)。 私的には、本当は一番面白いのになあと、思っているのですが・・・。 今回は、ある殺人事件の捜査をめぐる「ベテラン刑事 VS ミステリー作家の戦い」を描いた、いわゆる「本格ミステリーもの」(?)です。 九十九豊(つくもゆたか)という白髪の刑事が完全犯罪に挑みます。 携帯電話が重要なアイテムになっています。 もう十年以上前、「ガラケー」全盛期に書いた

短編『探偵小笠原裕美 ダブルトリック』

みなさん、こんにちは。 またしても短編ミステリーどす。私の投稿記事の中で、小説はもっとも不人気で、読んでいただける方には、本当に感謝しかありません。 ちょっと解説しておきますと、「密室殺人」と「入れ替わり」の二つのトリックを扱っています。 ミステリー好きの人には結構うってつけな作品かと思います。 シリーズものとして、「ビーナス探偵」というタイトルにでもしようかと思っているのですが、とりあえず今はストレートな題名のままで。 へたっぴな挿絵でもつけられたらいいのですが・