短編『幸せな暴走 夏の奴隷』
「もう、それやめなさいったら!」
美沙が突然、怖い目をして怒鳴った。
おれは一瞬何を怒られているのか分からなかったが、彼女の睨みつけるような目をじっと見るうちに理解した。原因は今しがたフライドポテトの箱をゴミ籠に放り投げたことだった。
いや、正確にいえば、フライドポテトを半分ほど残したまま捨てたその行為が咎められているのだ。
休日の昼下がりの、ぽかぽかした陽気にあふれた日比谷公園での出来事だった。
その日、おれと美沙はランキングインしているハリウッド映画を有楽町で観