初めて新橋のサイファーを見学したオタクの感想
新橋のサイファー見に行ってきました。
結論から言います。
クッソ楽しかった!
新鮮なうちにこの気持ちを文字に起こします。乱文だけどごめんね。
まずは私の自己紹介から。
岐阜県生まれ、味噌カツ育ち、知ってるやつらだいたいクソレズ!
基本的には非実在女を追い回すオタクであって、渋谷より秋葉が似合うツラ
学生時代に入り浸っていた混沌のエリア、『女子大小路』なんかでは区役所前でスピーカー持ってたむろしてた人はよく見たし、クラブでHIPHOPイベントなんかもよくやっていたものだけれど、あいにく私は背中にレインボーを押された女。中指は立てるのではなく愛でるもの。だからオーバーサイズなパンツを履く彼らは「顔は知ってるけど話したことない隣人」くらいの感覚だった。
音楽は気が向くとたまに聞いてた。nobodyknows+とか。でも、なんとなく「私のものではない」と思っていた。そんな私を変えたのがDOTAMAや輪入道だった。
スーツ着ててもマイクロフォンは持てる。筋金入りのb-boyみてえな人達相手に汗かいて必死にバチバチやりまくるあんたはかっこいい。
リスペクトと会話の中でも音楽は今ここに生まれる。詩情と優しさ、闘志を全てのみ込んで曝け出すあんたはかっこいい。
ここからフリースタイルバトル動画をかじりつくように見始めた。それはもちろんとても楽しいものではあったのだけれど、同時に悔しさが増してきた。
そぎ落とされた録画じゃなくてどうしてリアルを目にできなかったんだ。
あの時、あのスピーカーに足を止めていたら。
あの時、レズビアンやゲイがたむろすクラブに貼られたフライヤーに誘われていたならば。
そう思っていた矢先「街角で一般人がフリースタイルラップやってる集まりがいくつもあるらしい」と耳にする。
「もう少し、まだ自粛を」とのたまうテレビに「今しかねえんだよ」と吐き捨てて、バイクで新橋に走っていた。
新橋に降り立つと、スーツのサラリーマンばかり。ほんまにここでやっとるんかと歩道橋を歩いてその……見つけたけど素通りしました。ごめんなさい。
だってさあ、ここにパンダ柄の公共サービス放り込んだら楽しそうだなって人たちがいっぱいスピーカーの周りでぐるぐるしてんだもん! 私のアカウントアイコン見ろよ。アイアムアヒル。可愛い家畜。日本語が聞こえるし文化を感じるから安心できるけど、それでも輪に入るのは人生初。
ミネラルウォーターを買い、勇気を振り絞って戻ってまたビビる。なんか人数増えてる。20人くらいいるのかな。平日の夜だよなおい。よくよく見ると仕事帰りっぽい人もちらほらいて、ああ新橋だと安心した。
どこに位置取りして見学してたら良いのか分からない。
そこかしこでフリースタイルが生まれてて、少しで良いからその言葉を聞きたい。けれど、いかにも近くで聞いてますという感じで黙って立ってんのも気まずい。とりあえずぼんやりと遠くから雰囲気を感じることにした。
最初は怖いと思ったけれど、少し俯瞰するとどうしてか懐かしさを感じた。
床には格安缶チューハイ。数人の小さな輪では誰かがうまいこと言うと、おおーっと手を叩いて喜びながら次の8小節を蹴とばしていく。
ああ、私が通り過ぎたかつての街だ。
夜明けに腐った生ごみとゲロの匂いが残るあの歩道ではないし、ノーメイクのオネエさまも歩いちゃいない。けれど、今私の胸にいるのは「あの日のスピーカーに足を止めた可能性」だった。
ある程度あったまってきたあたりで、希望者を募って2on2のラップバトルが始まる。これはよく見た。けれど、出てくるのは新鮮な言葉。そうだよ、こういうのだよ。私が求めていたものは。
すげえパンチラインが飛んでくることもある。もちろん楽しい。でも、グダるも楽しい。それがあまりにもリアルだから。見学風情が手なんぞ上げて良いのか分からなかったけど、「好き」を感じたら表現しないと失礼だと思った。
バトルが終わると再びサイファーが始まる。その雰囲気を楽しみながら二回目のトイレが終わった頃、そこにいた人たちは随分と少なくなっていた。いくつもあったはずの輪は一つだけ。おかげで何話してるのかよく聞き取れる。
今自分が着てる服がどうだとか、お前ら終電大丈夫かよとか、おおよそバトルじゃ聞けないような雑談みたいな内容だ。8小節しかないから詰めることは限られている。けれど、誰にもその小節の間は口を挟まれないし、ビートに乗せさえすれば良い。
再び懐かしい感覚がやってきた。「ああ、ここにも人間がいた」という感嘆。
かつては思春期上がりのレズビアンバーでそれを感じた。でも、ここにもあるんだ。「女の子であれば望む限り居場所がある生ぬるい空間」がレズビアンバーであったように、「音に乗せれば望む限り居場所があるゆるい輪」がサイファーなんだ。
この時「HIPHOPはカルチャー」というのがようやくストンと落ちた。特別なスタイルなんて何もない。どれだけワルだろうと地位があろうと関係なく、ここではMCネームとマイクだけが共通言語。逆に言うとそれさえあればすぐに居場所になる。
ここはスペースだし、カルチャーだ。だから輪に入る人がいなければ残ってはいかない。魅せられた以上、このカルチャーには生きてほしいし、次は私がマイクをとる番だと思う。
とりあえず自己紹介ラップ考える練習から始めようかな。シフトだから毎週行けるわけではないし。ワナビーMC、かなり調子いい。はい、雑に踏みました。おあとがよろしいようで。
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