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環太平洋神在月合同会議

「それでは、今年度の縁結び・縁切り合同会議を始めます」

 出雲大社に集まった全国八百万の神々。様々な事柄が決定される大量の会議の中で、この議題は別の側面を持っていた。

「お手元の資料を元に進めていきたいと思います。えー、正直に申し上げますが……今年度は昨年に引き続き、かなりキツイ状態となっております」

 議長の大国主大神の表情は険しい。自分の発した言葉に深い溜息を一つ、ついでにネクタイも緩めてしまう。

「基本的にはいつもと変わらず、依頼件数に合わせての縁結び及び縁切りとなります。この後、各地域に分かれて打ち合わせをお願いします。ですが」

 ノートパソコンを叩いてスライドを表示。スクリーンに映し出されるのは棒グラフだ。会議室の神々も手にしたタブレットに目をやる。
 棒グラフは右肩上がり。しかも、途中から急激に伸びている。

「気象エネルギーの急増加。気象班との打ち合わせが不要になるほど、この気象エネルギーの余剰は目に余るものがあります」

 縁結びと縁切りは、神々が操る気象現象をトリガーにして実施する。毎年行われるこの会議では、気象班が年度ごとに定める気象現象の最低ラインに抵触しない範囲で操作してよい風や雨、日照などを各地域の予定に照らし合わせて割り振るのだ。
 だが、ここ近年の気象エネルギーの過剰は目に余るものがある。縁結び・縁切りは気象エネルギーをやりくりしながら行うものではなく、そのエネルギーをいかに消費するかというものへと変化してしまっていた。

「えー、これより先は天照さんが説明してくれます。よろしくお願いします」
「はい、マイク大丈夫ですか? 天照です。よろしくお願いします」

 気象班として参加する天照大神。しかし、彼女の出で立ちはいつもと違い、野戦服であった。

「気象エネルギーの過剰現象、それの抜本的解決を行わなければなりません」

 息を吸い、明確に言い切る。

「太平洋上の嵐竜駆除を実施します」

【続く】

恵みの雨に喜んだカエルは、三日三晩踊り続けたという。 頂いたサポートは主に創作活動の糧となります。ありがとうありがとう。