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ARTとWell-beingの研究記事 その2:アートと健康の接点とは?5つの分類から知るArt in Healthの関係性

こんにちは。
Art Education Research UMUMの田中令です。

2019年の9月から若手医療チーム マチマニアさんと「アートとWell-being」の研究会「UMUMアートラボ ART×Well-being」を新たにスタートしました。

Well-beingとは、諸説ありますが
直訳すると「良くいること」=「精神の健康」を意味します。
近年Well-beingの考え方がサービスや政策において注目されている一方
現状ではWell-beingに明確な定義はありません。

この研究会の運営メンバーは
医師をはじめ、研究者、医療系会社員、福祉関係者など
様々なプロフェッショナルが集まっています。
ここではその個性を生かし
メンバーのそれぞれの視点&専門分野から研究記事を綴っています◎

これまでの記事はこちら

ARTとWell-beingの研究記事 その1:「UMUMアートラボ ART×Well-being」 開催レポート|UMUM 田中 令 #note  

今回はメンバーの一人で、研究者であり医療従事者でもある、さやかちゃんの記事です。

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アートと健康の接点とは?5つの分類から

こんにちは。
マチマニアメンバーのさやかです。

 先日、マチマニアは、UMUMのれいさんと共に第一回UMUMアートラボ ART×Well-beingを開催しました。

 この記事を読んでいる方はきっと、アートや健康に少なからず関心がある方ではないでしょうか。私もまさにその一人で、近くの美術館やギャラリーに出かけたり、instagramやTwitterで世界中の現代アートの作品を見つけては眺めて過ごしたりすることが多いです。

 そしてその一方で、医療者として病院や診療所で働いたり、研究をしたりしており、自然と人の健康について考える時間が多くなっています。仕事と健康が直接関係がない方にとっても、生活のあらゆる場面で自分の心身のコンディションを気にすることはあるでしょう。

ところで、アートや健康に関心がある方にとって、この二つの言葉の定義は何でしょうか?

−あなたにとって、アートとは?
−あなたにとって、健康とは?
−そして、あなたにとって、アートと健康の接点とは?

これらの問いかけに対してどのような言葉が浮かんだでしょうか?

アート、芸術、表現、Art…
健康、ヘルスケア、Health、Well-being…

それを表す言葉自体も様々なので、なかなか理路整然と定義することは難しいですよね。

もちろん正解はありませんが、

今回は英国のアートとウェルビーイングに関して情報を発信している、National Alliance for Arts, Health, and Wellbeing (NAAHW) やAll-Party Parliamentary Group on Arts, Health and Wellbeing (APPG)などの情報を参考にしつつ、アートと健康に関する取り組みを、5つの分野として紹介したいと思います。

(1) 医療福祉施設の環境づくりにおけるアート

 30年ほど前から欧米を中心に、病院や福祉施設の環境を改善するためにアートやデザインを取り入れようという試みがなされてきました。施設で過ごす患者や家族のためはもちろん、職員にとっても、殺風景でない環境で多くの時間を過ごせることは心身のストレスを緩和することにつながっているでしょう。日本でも10年以上前から、病院などでアートプロジェクトを行う芸術系学生やアーティストが情報を発信しています。既存の無機質な壁を装飾したり、動線を整理してデザインし直すこともあれば、中には病院の計画時点からアーティスト/デザイナーがアイディアを出して設計に参加することもあるようです。


(2) アートプログラム(アートワークショップ)への参加

 心身の病いを抱えている人が、自ら手を動かして物を作ったり、絵を描いたり、演劇をするプログラム等に参加し、クリエイティビティや社会性を高めることを目的とします。家族に勧められて自ら参加する人もいれば、利用している施設で行われることもあります。対象者の考え方は様々であり、中には健康であったとしても、自らのウェルビーイングをより高めるためにこのようなプログラムに参加する人もいるでしょう。


(3) 医療従事者向けのトレーニングとしてのアート

 職業を問わず、何かの技能を習得することを目的としたトレーニングにアートの手法が取り入れられることは多くあります。防災訓練や心肺蘇生のロールプレイングなどもその一つと言えるかもしれません。アート/Artsという言葉の持つ意味は幅広く、手術や技術という意味でも捉えられます。映画を通して医療従事者としてのプロフェッショナリズムや医療倫理を学ぶ、シネメデュケーションという手法もあります。思考するだけでなく、実際に身体を動かしたり、感性を使うという文脈でアートが用いられていそうです。


(4) アートを基にしたセラピー・芸術療法

 治療の一環として、アートを取り入れるものです。演劇、音楽、視覚表現などにおけるいくつかの芸術療法は、心理療法として確立されています。患者が自己表現をすることで、自己解放や自立心を促すプログラムもあります。福祉施設のリハビリテーションとして用いられることもあります。


(5) 処方としてのアート/社会的処方

英国やカナダなどのいくつかの国の医療保険制度では、医療従事者(主に医師)が患者に対して、アートプログラムへの参加を薬と同じように「処方」できることがあります。例えば、患者の不健康の原因が、身体的な問題でなく社会のコミュニティから外れていることにある場合、園芸やチェス、合唱などの文化的活動を勧めることができるシステムです。残念ながら現在の日本の保険制度では文化的活動を「処方」することは難しいですが、日本での実現可能性を検討している団体があります。


以上が、アートと健康に関する5つの分野です。

 これらは医療福祉機関を中心としたアートの取り組みを、ざっくりと分類したものです。5つの分野の境界は明確でないことも多々あります。また逆にアートを中心に据えて考えると、また世界中で様々な取り組みがあると思います。

 アートや健康の接点に関心がある人にとって、上記の5分類が、自分がどう関わるかを考えるきっかけになれば幸いです。

 ちなみにアートと健康の関係については、”Art in Health”や ”Art and Wellbeing”などのキーワードで検索すると英国を中心に良質な記事が見つけられます。興味のある方はぜひ探してみてください。

 ARTとWell-beingの研究記事その2は、ここまで!

 UMUMとマチマニアのコラボ企画、続きます!

さやか

参考:
・“WHAT IS ARTS IN HEALTH?”, Arts Council England, https://www.artshealthandwellbeing.org.uk/what-is-arts-in-health

・”Creative Health: The Arts for Health and WellbeingSecond Edition, July 2017, All-Party Parliamentary Group on Arts, Health and Wellbeing, https://www.culturehealthandwellbeing.org.uk/appg-inquiry/Publications/Creative_Health_Inquiry_Report_2017_-_Second_Edition.pdf

<次回の研究会開催のお知らせ>

第2回UMUMアートラボ ART×Well-being開催決定!!
日時:12月8日(日)9:00~12:00
会場:美学校(〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-20 )
対象:医療福祉従事者、医療従事者
「Well-being」に興味のある方
「健康」と「アート」にピンと来た方
✴︎アート、医療関係以外の方も、テーマが気になる方は大歓迎です!
詳細、お申し込みはこちらから
https://umumlab-aw.peatix.com/

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【UMUMのお知らせ】
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企画詳細&お申し込みはこちら
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UMUMがおじゃまして美術表現の場をひらく「UMUMオーダー」。
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お問い合わせはhello✴︎umum.artまで。
(✴︎を@にご変更ください)
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