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【日記】それは広く愉快な冒険

土曜、朝起きて店Aへ。退職してから食生活が乱れ、炭水化物をよく摂るようになったせいか、6月半ばあたりまで小さなニキビの赤ちゃんがぽつぽつとでき困惑していたのだけど、以降今までよりも念入りに化粧水と乳液を一日2回怠らず塗布していたらようやく落ち着いてきた。ニキビが発生するまでの機序は個人差があるものと思うが、自分の場合は明らかに糖質だ。高校生の頃、ブラックサンダーに強い信頼を抱いており、塾講師からの誕生日プレゼントに二年連続で箱のそれをもらったことがあるのだけど、バイト帰りの深夜に一日2つかじっていた頃がピークでニキビ面だった。代わりに夜更かし(そもそも朝型なのであまりしないけど)や化粧落とすのを多少怠ったぐらいではビクともしないので、原因は糖質にあると断言していいはずだと思う。

店Aで5時間ほど待機したが、客につかず、正直に申し上げて悔しかった。平日ならまだ許容範囲なのだけど、多くの会社員が休みである土曜日に、というのはかなり精神的にきつい。自分は良くも悪くも店の中で言えば中堅嬢で、本指名の客をそこそこ持っていて、「色白スレンダー」「ショートカット」という他の嬢と被らない明確なキャラクターがある。それでいて誰も来ない日を作ってしまうとは、自分の今の営業戦略に問題があるのか、本当にたまたまそんな日に当たってしまった、と納得させるべきだろうか。まあ、泣くほどツラいとかでは全然ないし、次の出勤はすでに予約が入っているのでここで病む必要は絶対ないのだけど。

待機中、ふとメールボックスをあけたら、CINRAのメルマガに「1122」の原作者インタビューが全文載っていた(メール本文にインタビュー掲載するってすごいけど、PVにカウントされるんだろうか)のと、インスタのストーリー広告で「1122」の漫画版のワンシーンが流れてきたので、これは天啓だ!と思いアマプラで視聴していた。監督は今泉力哉、主題歌は昨年出たスピッツのアルバムから。一人暮らしをしてから一度もテレビを買ったことがなく、だいぶドラマとはご無沙汰だったけれど、それでも今泉監督の手腕あってかすごく面白く、むしろ予約入らないでくれと思いながら(そんなことはないけど)夢中になって視聴した。

第3話の途中でスタッフから申し訳なさそうに帰宅を促されて、まあそういう日もありますから〜と言って店を出る。茶を引いた日、店長から毎回「系列店行ってみる?」とか「別の業態でやってみる?」と提案されるけど、もういい加減その気は起こらないので「いや、今のままで大丈夫です」と貫くことにした。ロンドンに行く渡航費用を最短で、なるべくストレスなく稼ぎたいので、もうすっかり慣れ親しんだ今の店、AとB以外に新しい環境を提示されたくない。

18時頃になって、笹塚のパイントロジーへ。扉を開けると何やら騒がしく、オーナー夫婦の友人であるアメリカ人の男女がベイビーシャワーの飾り付けをしていた。この男女のさらに友人が8月に出産を予定しているらしく、夜は数人で集まってボウリング→飲み会の流れだそう。日本にはあまり馴染みのない文化なのもあって、話を聞くだけでなんだか羨ましくなってしまった。楽しそう。

パイントロジーでStu Mostowのバナナゴーゼ、これがまたとてもおいしくてするりするりと飲み干してしまった、を空けて会計してから、歩いて肉麦に寄る。帰ってもよかったのだけど、今日をただ待機してただけの無生産な日にしたくなく、夜を引き伸ばしたかった。店はディナー帯でほぼ満席、カウンターでトートピアのMellowphobiaをいただく。スイカのさっぱりした甘味がきいてほぼジュース。パイントサイズでゴクゴク飲みたい味。

自分のすぐ後に隣席に座った女性が、スタッフのRちゃんとMellowphobiaおいしいねえ、と話しているのを聞いて「私もそれにします」と言ってくれた。布教成功。その流れで雑談していたら、なんと自分の地元の2駅先に最近まで住んでいたらしい。しかも仕事はかつて自分が目指していた管理栄養士。すぐに意気投合してインスタを交換した。もっとちゃんと話したかったけど、近所に住んでいるとのことだったのでまたの機会に。

21時頃帰宅して夕食。ずっとストックにしまっていたプルダックの激辛を食べる。あんまり辛くないと思ってしまった。食べ進めながら「1122」の続き。「机を挟んだ二人を俯瞰して撮る構図」と、「過去の自分を今の自分が茫然と立ったまま眺めている構図」に今泉イズムを強く感じる。あとは一見シリアスな展開なのにあえて軽めのインストをつけて視聴者を遠ざけないところも。シーズン1、計5話を半日たらずで完走。集中力のない自分にとってはすごいこと。

内容に関して、30代中盤の夫婦の話、という設定から、どうしても27歳の自分と切り取って考えることが避けられなかった。長男は33歳で結婚して、29歳の次男もおそらく今の彼女と数年のうちにゴールインする。周囲を見ても圧倒的に結婚や出産を経験している友人が多く、かくいう自分は、27歳にもなって「特に何もビジョンはないけど日本を出たい」と恋愛も仕事も投げうって一人海外へ行こうとしている。敷かれたレールを歩くのならば、今年の初めまで付き合っていた子と関係を継続させていた方が確実な道であり健全なのだ。

でも、いくら確実で健全な道という保証があるとはいえ、自分は本当にそうしたいだろうか?夫婦別姓とかあらゆる日本の結婚における束縛を取り除いても、自分はまだ個の人生を尊重して歩くだけの権利とポテンシャルがある。世界で一番好きだった人に結婚をせがまれたら話は別かもしれない(脆弱)が、「その人を超える存在にこの先二度と出会わない」と確信をもって伝えられない限りは、自分はリスクを背負っても岩壁を登ってしまう。その方がトータルで見たときに楽しいからだ。「1122」のような、二人の信頼をもってして乗り越えていく夫婦像を批判する気は全くなく、どこかで運命の引き合わせがあれば自分もそうなりたいなと思うぐらいの気持ちでいるのではあるけど、少なくとも今は頑丈に育った自分の茎が伸びて開花するまでの過程を優先してやりたい。


過日、沖縄で移住生活を始めた長年の親友に、「どうして沖縄にしたの?」と聞いたら「あったかいから」と素っ頓狂な答えが返ってきた。あったかいから。「1122」を観ながらスマホでLINEをひらくと、「もう最高!!私が求めてたのはこれだったんだって感じ」という文面と共に、沖縄の青く澄み切った広大な空の写真が添付されていた。