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【日記】そのオンボロみたいに僕はなりたい

月曜、昨夜の食事で胃もたれ。腹が痛くて30分遅刻。土日どちらかを彼氏と過ごし、どちらかで働いていると、掃除や洗濯といった家事回りが疎かになるのが今の生活で唯一ネックだ。平日も毎日深夜2〜3時頃になってしまうし。胃を抱えるようにして出社する。昨夜食べた芋が喉につっかえている感じがして気持ち悪い。シンジくん、帰宅が遅くなるってわかっている日は無理して自炊なんかせずに企業努力に頼りなさい。

2割ぐらいのパワーで仕事。幸い、あまりヘビーなものがなく淡々とこなす。健康診断の結果が届いて、昨年F(要検査)だった痛風がC(経過観察)に改善していた。絶対人生で一番酒を飲んだ年だったのに、なんで?身長は0.1cm伸び、体重は-3kg。あと3kg落としたら、拒食症ピーク時の最低体重と同じ数値になる。体力面で何もできなくなるので落とす予定はないけども。彼氏はサークルの定例ライブのち打ち上げ。学生は週明けから自由に酒が飲めて羨ましい、でも社会人になってからの一週間を乗り越えた先にある「華金」の概念は月金労働者の特権なので、彼氏には社会人っていいぞとまじないのように言っている。これはマウントをとるのではなく、早くスーツ姿の君と乾杯して口の上に泡付けたいんだよ、という意味。彼氏が就職する年の頃には自分は28歳。何が変わっているだろうか。何もかも変わっているだろうな。腹の横をさすりながら、2時半すぎに寝た。

火曜、出社。部屋の暖房をガンガンに効かせているので肌が倍速で砂漠化する。ロクシタンのハンドクリームって貰い物でしか使ったことがない。20代前半の頃、数年間好意と憧れを抱いていた年上の男が夢に出てきたが、夢の中で会話を交わすことはなく、男が座っている席の背後を(話しかけようか迷いながら)緊張気味に通りかかるだけで終わった。昨年の大晦日はその彼と出会ったきっかけでもある吉祥寺の某バーで過ごし、元旦の朝にバーの常連とスタッフ同士で毎年恒例の初詣を済ませ、彼と井の頭線に揺られて帰ったが、帰りの電車内、もう何も特別な感情を抱かなくなっていた。都心で裕福な暮らしをしていて、仕事熱心な彼の姿が好きで憧れ続けた結果、自分があの手この手で同等(もしくはそれ以上)のクラスの生活を手に入れたからかもしれない。今年の大晦日はクラブエイジアのカウントダウンのラインナップも個人的にあまり乗り気になれず、某バーにもわざわざ大晦日に中央線の終夜運転を乗り継いで行こうとは思っていない(早い時間に挨拶がてら行くことにはなりそうだけど)。コーヒー屋も肉麦も大晦日まで営業しているらしいので、そちらに出向くことになるだろう。

朝の気温は5℃、でも空が高くて嫌いじゃない天気。正月ってどうして晴れの日が多いんだろうか。不思議と目が冴えていて仕事が捗る。とある仕事、日付を一日間違えていて「ああ今日じゃないのか」と肩の荷が降りる。最近本当に日付感覚がないな、自分の知っている師走の天候じゃないからか。そういえば今年も残り2週間を切っているんだな。

絶対に美味いビールを飲んで日曜の記憶を更新したい欲求とは裏腹に、事務所近辺のビール屋が軒並み休業日(臨時休業込み)で萎える。退勤後、彼氏のクリスマスプレゼントを買ってから渋谷へ。しぶや百軒店の入口にある「スタンドうみねこ SiB100」に行った。1階と2階を繋ぐ大きなガラス戸、インスタで見て印象的だったが実際見てもなかなかの迫力。渋谷なので、チャラい感じの店員さんかな、と思ったら、ゴリゴリタトゥーの髭ロン毛という見た目に反して英語堪能で物腰柔らかい方が出迎えてくれた。隣は韓国人観光客3人組。ヘイジーとシトラスIPAを頼んだが、寒さと、それ以前にお腹の調子があまり良くなかったせいで、味がよくわからなかった。

最寄りのスーパーに寄って袋詰めをしている最中、彼氏から「会いたい」と連絡があり、とりあえず電話をかける。電話でなく、会って話したいことがあると言われたが、会いに行くまでの時間が惜しくて電話口で伝えてもらった。結論から言うと、隠し通して墓場まで持っていこうと決めていたことが第三者の手によって彼の元へ情報が知れ渡ってしまった。その人は知らずのうちに自分のネトストをしていて、彼氏のSNSアカウントを特定し、「あなたも騙されない方がいいですよ」とDMでURL付きの注意喚起をしたらしい。

気温は3℃か4℃だったが、外に出て通話。悲しみよりも落胆が先立って家に帰るまで不思議と涙は零れなかった。同時に「直接会わなくてよかった」とも思った。会って話をされようものなら癇癪を起こしてしまいそうだったからだ。そんな自分の姿を容易に想像できてしまうことさえ情けない。もう終わった、と思い虚無感と自己嫌悪に苛まれたが、結局彼の「びっくりしたけど、僕があなたの立場だったらきっと同じように隠していたと思う」という言葉で関係を継続することになった。代わりに二つの約束をした。今後一切の隠し事をしないことと、来年の春までには足を洗うということ。

正直、隠し通したいと思いながらもいつかは気付かれると思っていた。それこそ同棲しようものなら言い訳のレパートリーなんて早々に尽きる。でも第三者の口から伝わるのは本望ではなかった。まだ直接伝えていた方が互いのためになったのだ。騙していてごめんと何度も謝った。理解を乞いたいなんて図々しいことは思わない。糾弾されて当然。謝る度に「大丈夫だから、あなたが頑張っているから僕も頑張れるんだよ」と伝えられ、余計に苦しい。それでも見捨てられないでよかったと安心してしまう自分がいる。形ばかりの最低限の食事を済ませ、ずっしりと重い石を腹の上に抱えたまま寝た。

水曜、明け方に目が覚めて眠れない。空腹を感じてはいるものの、胸焼けみたいな苦しさが続く。自己責任なのにまだ辛かった。8時半にアラームが鳴ったが、体が縦になれなくて二度寝した。9時すぎに起床して、所用で遅れますと勤怠連絡を入れてからのろのろと会社に出向いた。

昨夜のやりとりの中でもらった言葉を何度も見返し反芻して、夢じゃないかと目を擦る。振らないでいてくれたことに「夢じゃなくてよかった」と安堵する面と、知られてしまった事実に「夢だったらよかった」の思う面と。彼が憧れるような素敵な大人でありたかったのに、第三者の手によって晒されてしまった今はどういう顔をして会ったらいいのかわからない。ただ、秘密を持っていたことに対する罪悪のようなものはこれで跡形もなく消え去った(去ってしまった)。伝わった経緯は本意的ではないものだったが、まだ関係が浅いと言えるうちに知ってもらってよかったのかもしれない。普通なら手を切って当然のところを「それでも愛してる」と信頼して伝えてくれる彼のことを思い、薄情な自分を猛省すると共に、人生においてこういう人のことを手放してはいけないんだなと痛感した。

仕事、大きな原稿が捌けてやることがない。冬季休暇前にもう休んでもよくないか?と思う。生産性のない空白の時間が続く。師走の事務所には人が出たり入ったりして、菓子折の袋が空いたデスクに置かれる音がする。稀に親切心で一人ひとり配って回る人もいるから、そういう時に自分はちょっと、と断れない。お茶請けで出てくるような紙材の袋に包まれたおかきとクッキーを通勤用のトートバックに入れる。いつか食べると思って毎回棄てている。SDGs過激派だと思う。

夜、定時退勤後に返したLINEの既読が何時間もつかなくて不安になる。やっぱり思い直して別れたくなったかなと思いながら風呂に入った。深夜1時半頃にやっと彼氏から着信があって、バイト後に友人と飲んでいてベロベロに酔っ払っているとのことだった。彼の友人が彼の隣で聞いているのに、好きだよ、結婚しよう、愛してるよ、と電話口で言われてくすぐったい。

紆余曲折を経てきて、自分は「結婚」の二文字からは一番遠い人間のまま生きていくんだろうと思っていた。本気で好意を持っている相手とは永遠に結ばれないツキなのだと、半ば諦観していた。彼氏はまだ大学生だし、実現に至るまでは少なく見積もってもあと4〜5年はかかるだろう。けどなんとなく「この人と結婚するのかもしれないな」と思った。ドラマでよくある「なんとなく」のシーンを見て、そんなこと本当にあるか?としかこれまで感じてこなかったが、多分今がきっと「それ」なんだろう。酔っ払っているけど本気だよ、という人生最初のプロポーズを受けて、通話後にサラダチキンやゆで卵を食べ、2時半に寝た。

木曜、出社。午前中は相変わらずほぼやることがなくて暇。正午に取材立会のため外出。2時半に寝たのに眠気はなくすっきりしている。さすがに3時を回るときついが、2時台までは負荷なく耐えられるようになった。外出の直前にディストリビューターからメールでテキストデータが送られてきて、いや〜御社明日が年内最終じゃないですかと思う。緩急があまりにも激しい。

先日ワンマンにお邪魔したMomの取材。初対面なのに、年が近いのと彼のフレンドリーな人柄が手伝って、終始友人同士みたいな距離感で喋っていた。アサインした大学生のインタビュアーは普段Xやnoteで散々音楽レビューを書きつらねているのに、鼓動が聞こえそうなほどガチガチに緊張していた。わかるよ。首都高沿いでの撮影を終え、一駅分歩いて事務所に帰る。全身が冷えきっており、ハンガーにかけていた上着類を全部出して体に纏わせた。少しの外出で体調崩すほど冷えてしまうの本当に嫌な体質。ファミマで買ったホットコーヒーも自分の手が冷たすぎて一瞬で冷めてしまった。


夜、暇で延々と食事動画を観ながら過ごした。お腹がすいているのに今この時間は食べてはいけないとルール化しているので平日は常に飢餓状態にある。好きな男とクリスマスを過ごすのは何年振りだったかと数えたら実に6年振りだった。当時の恋人は元料理人で、手料理のクリスマスメニューをこさえてカルディのワインを赤白買ってグラスに注ぎ振舞ってくれた。自分もそこまでできれば良かったが、あいにくそこまで準備する余裕がないことと、彼氏と是非行きたかった店があったので、店の予約をするに留めた。でもきっとこれが自分たちの正解だと思いたい。常連ほど通い詰めているわけではないが、とても居心地の良いビアバーなので彼氏もきっと気に入ると思う。1時頃にサラダチキンと卵、それからかにかまスティックを食べた。ファミマで売られているキューピーのゆでたまご、醸造酢が使われているせいか甘酸っぱくマヨネーズみたいな味がした。同時間帯にアル中から飲みの電話がかかってきたが、通話には出ず、インスタのDMで行かないよ、とだけ送った。3時前に寝た。

セブンのゆで卵が1番美味しいと思う