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【日記】27クラブを前に

火曜の深夜、空腹の限界を感じて夜な夜な徘徊に出る。ローソンとファミマ二軒を梯子して結局最初に入店したローソンでごぼうサラダ、炙りいかスティック、パリチキ、金麦、氷結。先週深夜のファミコロで胃もたれしたのに全く学んでいない。オモコロの無限メシ回を視聴。恐山の出オチ感。ローソンのごぼうサラダはカロリーが低いのにねっとりとしていて甘い。彼氏からの返信が途絶えて不安になる。眠れなかった。胃もたれ以外の胃痛がした。2時半頃にようやく寝た。

水曜、8時前にアラームをかけていたが、引き続き返信が来ていないのを確認して落ち込み、ベッドから出られなかった。いつも最悪の事態を想定して動けなくなるのは自分の立ち振る舞いに自信がないからだ。このまま寝込んでしまいたいと思いながら嫌々シャワーを浴びて支度する。山手線の車窓から成田エクスプレスが並走して追い越していくのを見て空港へ行きたいと思った。でも空港まで行ったらそのまま東京以外の場所へ逃げたくなってしまうんだろう。やめた方がいい。彼氏から早寝してたと返信が来た。夜は彼のバンドも出るイベント。遅い時間の出順かと思ったらトッパーらしく、定時で行くと間に合わないので上司に私用で早退しますと伝えた。社会人を経験していない大学生にはわからないだろうからあえて言わないけど、ちょっと無理をしている。高校生の頃付き合っていたDJの彼氏に、ノルマのため毎回イベント来てよと言われるのが苦痛だった。それを当時の友人に伝えたら「彼女なのにゲストも出してくれないなんてありえない」と一蹴され、なるほどな〜と理解した。ゲストを出せる範囲はイベンターの寛容度とチケットの捌け具合によるから彼を責める意図はないけど、仕事もあるし毎回は行けないよ、とは事前に伝えておいた。

小学生の頃のリアルな夢は「ホットケーキミックスの液を無限に飲む」とか「アイスケーキを1ホール丸ごと頬張る」とかだった。今思えば発想が既に肥満児のそれだ。でも、ピーク時から20kg痩せた今だってタルトのクッキー生地だけ食べたいとか言ってるし、いくら減量したとて食への感度だけは変わらないのだなと思う。むしろ摂食障害を患っている分、興味関心の類は高まっている気がする。酒(場)と自炊の両方が好き、というのも関与していると思うけど。ちなみにホットケーキミックスの液はコップ一杯分ならすくって飲んだことがあり、アイスケーキは1回食べたことがあるかないかだ。サーティーワンのアイスケーキをクリスマスに買ってもらえる子供に嫉妬している。うちは皆味の好みが違うので、ケーキを買う時は隣の家に住む祖父母にも分けて持っていけるように無難にアップルパイか、さもなくば一人1個のカットケーキだった。

夜、早退して東高円寺へ行く。丸の内線の荻窪行と方南町行では停車駅が違うことを知る。一本道を真っ直ぐに突き進んで地下にあるライブハウスへ潜る。小さいフロアに紙タバコの煙たい匂いが充満し、お世辞にも綺麗とは言えない狭苦しい空間。心身の疲労が積み重なっていて万全の体調とは言えず、彼氏が真っ先に自分を見つけて久しぶりと声をかけてくれたのに「ああ、うん」程度にしか応じられなかった。あからさまに嫌な態度をとる人になりたくないプライドと、あんまり気分良くないですよのアピールをして構ってもらいたい欲求が拮抗している。大人だから、年上だからといって感情を押し殺さなくてはいけないのがしんどいと思う。体調治ってよかったね、だけなんとか伝えられた。時間だからとステージ裏へ向かう背中を見て寂しかった。

彼氏のバンドのライブ観たら気持ち少し回復した。キイチビールやはっぴいえんど直系の懐かしいオルタナ、フォークロックで心地良かった。ドリンクチケットにプラス100円課金して受け取った生ビールを、早く酔いたくて演奏を観ながらすいすい飲んだ。療養明けの彼氏にとっても自分にとってもライブ初めだった。それにしてもブッキングの意図がわからないラインナップだった、多分適当に数合わせで時間都合のつきそうなバンドへオファーしたんだろう。2組目に出演していた40代ぐらいの男女混成バンドは2000年代初頭の国内インディー界隈が散々やってきた展開を未だに引っ張って曲作ってますみたいなイメージがあり率直に言ってあまり好きではなかった。クリープハイプと時雨と嘘つきバービーのハイブリッドみたいだった。案の定というか、その後のフロアの状況を彼氏にLINEで聞いたら「内輪ノリがひどくて場が乱れたから僕らは早々に退散した」らしい。売れるためではなくて趣味でバンドを続けていること自体は結構だけど、彼氏のバンドみたいな若年層もいる場で(しかもたかが小箱のライブハウスで)顔を利かせている俺カッケー、と悦に浸るのは見ていて恥ずかしくなる。

年増のロックンローラーを見て痛々しく思う反面、彼氏といると必然的に自分よりも下の子たちと接することが多く、自分の中のエイジズムを刺激されて無性に哀しくなる。歳を重ねることがただただ怖いと思う。いつまでも若いままでいられない現実を見て死にたくなる。今年で27歳になる。27クラブを背負って、まだこれからなのにねと周囲に言われながら死んでしまうのも悪くないなあと思う。彼氏もすっかりおばさんになった女と街を歩くのは嫌だろう。

もう1組観たいバンドがいたけれど、なんだか疲れていて、猛烈に帰りたくなり2組目を観終えて会場を出た。彼氏のバンドの子たちにありがとうございました、今度一緒に「7文字以上しりとり」やりましょう、と言われて「それはやらんけども」と返した。彼氏が駅まで送るよと言ってくれて2人で来た道を戻る。2週間ぶりとはいえものすごく久しい感覚があって愛しかった。地下鉄のホームへ降りる階段の脇で人目がないことを確認してから数十秒間力いっぱい抱きしめたら全然離れたくなくなってしまい、冗談混じりに「このまま一緒にうち帰る?」と聞いたくらいだ。また週末に、と名残惜しみながら巻きつけた両腕を離す。この世で一番優しい温もりを大事に抱えながら22時前に帰宅した。Aちゃんからもらった山形土産のビールを開けて(ホップの香り高く、水みたいにするすると飲めて非常においしかった)、セブンで買ったサンドイッチといつもの雑に作る野菜オムレツをこさえて食べ、キム・ゴードン姐の新曲を聴き、映画『バビロン』を冒頭40分だけ観て、0時前に寝た。

木曜、アラームかけずに寝落ちしてしまったが時間通り起きる。あまりにも寒すぎる部屋にビビりながら支度して出社。東京に雪が降り積もる夢を見た。ブラコンじゃないのに来月結婚する兄のことを想い「大好きだよ」とLINEで伝える夢も。それでもここ数日で一番深い眠りだった。物哀しさは変わらず、デスクへついても集中力が散漫になる。冬季うつ。ソニック・ユース聴きながらだらだらと校正。やっぱりDry Cleaningのフローレンスはゴードン姐の生まれ変わり(まだバリバリ現役だけど)だよなあと思う。素人ライターに任せてしまったが運の尽きという感じで時間が倍かかっている。年跨ぎのインタビュー記事がまだ数本ストックとして残っていてほとんどがレーベル側の確認待ちだ。自分の取材準備もしなくてはいけないのに一向に進められない。職場の暖房が暑くて逆上せてしまった。退勤して浴びた夜風が心地良い。

週末はやっと彼氏と長い時間過ごせるので楽しみだ。何はせずとも二人でいる時間を優先したい。寺山修司のアングラポスターを観に行こうとは話しているけれど。ボトルショップでビール調達して、お揃いで買ったビールグラスで飲み比べがしたい。どれだけ心が萎れていても身を投げずにいられるのは君のおかげだ、と心の底から思う。悲しくてもできるだけ泣かないで過ごしたい。


*多感な時期のため、切り分けて更新しています。