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【コンクリートのひび割れ補修】小学生でもわかる・低圧樹脂注入工法とは何か?【ざっくり解説】

こんにちは。フロッグ工房です。

今回は、ひび割れ補修の『低圧樹脂注入工法』を小学生でもわかるように説明する試みです。

(YouTubeでこういう形式のチャンネルがありますね。面白いです。興味のある方は検索してみてください!)

それでは、さっそくですが、ひび割れを見ていきます。


ひび割れた皿
ひび割れた皿

身近なところで、これはお皿のひび割れ。



ひび割れた皿の裏
ひび割れた皿の裏側

ひびは裏まで貫通しています。



ひび割れたカップ
ひび割れたカップ

こちらはカップのひび割れ。


ひび割れたカップの内側
ひび割れたカップの内側

これも内側まで貫通しています。じわ〜と飲み物が漏れ出してきているのに気づいて、わっ!と焦るパターンです。


今度は、外に出てみます。

マンションのひび割れ
マンションのひび割れ

これは、マンションのコンクリート壁のひび割れです。



塀のひび割れ
塀のひび割れ

こちらは、コンクリートでできた塀(へい)のひび割れです。豪快に割れてしまっていますね。

コンクリートのひび割れって、放っておいて大丈夫なのでしょうか?

日本コンクリート工学会(旧日本コンクリート工学協会)によると、0.2mmの幅のひび割れでも補修が必要であるということです。


ひび割れ幅0.2mm
ひび割れ幅0.2mmから防水性の面で補修が必要

0.2mmというと、写真のえんぴつ線の太さ、また、郵便局で売っている官製はがきの厚さくらいです。
なぜ、こんなに細いひび割れでも補修した方が良いかというと、ひび割れの中にコンクリートと鉄筋を劣化させてしまう水分や空気などが入ってきてしまうからです。


洞窟の子供とコウモリ
小さなひび割れでも劣化因子が侵入する

この洞窟に侵入しているキッズやコウモリたちのように、ひび割れの中に二酸化炭素や酸素や水分などが入ってきます。

これは大変。どうしたら良いでしょう?

ひび割れの補修方法は、ひび割れ幅の大きさや原因によって使い分ける必要があります。
国土交通省による公共工事のための仕様書(しようしょ)には、コンクリートのひび割れ補修工法は、以下の三つが記されています。

①樹脂注入工法(基本的に、自動式低圧エポキシ樹脂注入工法)
② Uカットシール材充填工法
③シール工法

工法の言い方は少しずつ違っていたりしますが、今回、説明したいのは①の樹脂注入工法 についてです。別名『低圧樹脂注入工法』、もっと詳しく言うと『自動式低圧樹脂注入工法』です。
②は簡単にUカット工法と呼ばれたりします(Vカット工法というのもあります)。



鍾乳石の隙間
鍾乳石の隙間

念のためですが、ひび割れの形は、モグラやアリの巣のようにトンネル状ではありません。大きく拡大すると、この鍾乳石のすき間のようなイメージです。


洞窟を進む男性

ここはコンクリートの横方向のひび割れだと思ってください。横には広くて奥行きもあるけれど、高さがなくて狭くて怖いです。
赤い服を着たおじさんが、ひび割れに侵入してきました。二酸化炭素さんでしょうか?
二酸化炭素は水分とともに、コンクリートを中性化させてしまう困った方です。



さらに酸素キッズや水分コウモリも入ってくるでしょう。これでは、コンクリートの中性化が進み、中の鉄筋も錆びてしまいます。

ここで、『低圧樹脂注入工法』の出番です!


自動式低圧樹脂注入器具
自動式低圧樹脂注入器具フロッグ


このひび割れに、トロトロのエポキシ樹脂をどんどん入れていきましょう!
少し黄色いトロトロがエポキシ樹脂です。(後に固まります)


洞窟内の男性

二酸化炭素おじさん、驚いていますね。さっさと出て行ってください。このひび割れは貫通していますので、あちらから出られますよ。

容赦はしません。ゆっくり、じわじわとエポキシ樹脂を注入し続けて、隙間は全部、エポキシ樹脂で埋めてしまいます。

実際のコンクリート壁の厚さは15cmとか20cmとか、用途によって異なります。そして目につくほどのひび割れは、お皿やカップのように貫通していることが多いです。



コンクリート塀のひび割れ補修
コンクリート塀のひび割れ補修

実際のひび割れ補修です。ひび割れに樹脂注入器具(フロッグ工房ではフロッグという器具)をセットしたら、後は自動で時間をかけてゆっくりとひび割れの中にエポキシ樹脂が満たされていきます。

強く早く押し入れようとしても、微細なひび割れの隅々にまで樹脂を満たすことは難しいのです。

ひび割れの中に注入されたエポキシ樹脂は約5日間で完全に硬化します。
これで、ひび割れたコンクリートの強度は回復し、空気や水分などの侵入を防ぎ、コンクリートの中性化、内部鉄筋の錆び(さび)を防ぐことができます。



原爆ドーム
原爆ドーム


注入工法で使用するエポキシ樹脂は広島の原爆ドームの保存工事に使用されました。そして20年後の調査でも、接着の強度がほとんど変わらず健全であることが確認された耐久性の高いものです。



一方、② Uカットシール材充填工法と③のシール工法でのひび割れ補修はどうでしょう?
これらは、ひび割れの入り口をふさぐような工法です。


鍾乳石の隙間
鍾乳石の隙間

再び、この石でイメージすると、隙間の手前の方だけ補修材で埋めるのが②Uカットシール材充填工法、隙間の表面だけふさぐ簡単な処理が③シール工法です。


洞窟内の子供とコウモリ


入り口をふさぐ方法は、空気や水分などの新たな侵入を防ぐことはできますが、すでに入っているこの方たちは中に居続けることになりますね・・・

二酸化炭素や酸素、水分などによって起こるコンクリートの中性化、内部鉄筋の錆びを止めることはできません。また、ひび割れの内部は空洞のままですので、強度は回復しません。


自動式低圧樹脂注入工法
フロッグを使った自動式低圧樹脂注入工法

自動式低圧樹脂注入工法、良い仕事します!
ですが、残念ながら一般的には、低圧樹脂注入工法はマイナーなひび割れ補修方法かもしれません。

低圧樹脂注入工法よりUカット工法の方が費用が安いこともあり選ばれることが多いようです。
Uカット工法は、補修材を充填する際に、ひび割れのところを幅1cm深さ1〜1.5cmほど削って溝を作ります。
大切な建物を削ってしまう前に、傷を作らずひび割れの中にエポキシ樹脂を満たしてしっかり補修する低圧樹脂注入工法で施工できないか、検討してみてはいかがでしょうか?


住宅の基礎のひび割れ補修
低圧樹脂注入工法による住宅の基礎のひび割れ補修


ただし、ひび割れが振動などで常に動くような環境では、低圧樹脂注入工法は使えず、Uカット工法で動きに対応するひび割れ補修が適切だったりしますのでご注意ください。

以上、小学生でもわかる・低圧樹脂注入工法とは何か?をざっくり説明する試みでした。


⚫️補足 参考資料
国立研究開発法人土木研究所『コンクリート構造物の補修対策施工マニュアル2022年版』より抜粋

①注入工法は、『劣化したコンクリートの強度回復、鉄筋の防錆効果、鉄筋とコンクリートとの付着回復等が期待できる。また、これらの性能回復と同時に外部劣化因子の侵入防止が行えることによりコンクリート構造物の耐久性向上が期待できる』工法です。

② Uカットシール材充填工法 は『注入工法と比べると、補修効果では見劣りするが、経済性から採用されることも多い』工法です。また、『注入工法とは異なり、ひび割れの一体化による構造的な補修ではないため、構造物建設時の性能までの回復は期待できない』。


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