9月の読書メモ

9月から柄にもなく読書メモを付け始めて、さっそくくじけそうになりつつも、一応1か月付けたということでメモから一部抜粋を。レビュー未満のメモ書きだけど、まあせっかくなので何かの参考になればということで。

■『中学聖日記』1〜2巻(かわかみじゅんこ)

ちょっと前からメモできずにいたけれど、9月に改めてメモったので。あらすじ的に書いてしまえば「男子中学生と信任女性教師の恋愛もの」になるのだけれども、恋心を制御、昇華できない少年といまだ「大人のフリ」をするようにしか大人としての自分を確立できていない女性教師という恋模様が異質かつ生々しい。一言でいえば「無垢で不穏」。主人公の黒岩くんの思春期らしい不器用さ(荒っぽさ)が瑞々しい反面、全員が状況に対してコントロールする力を持っておらず、ただ状況に流されていく不穏さがある。怪作。

■『境界のミクリナ』1巻(松本ひで吉)

いやー、積んだ。3か月積んだ。人間界を滅ぼしに来た魔女(幼女)・ミクリナと女子高生の同居コメディ。不憫系かわいいが好きな人にオススメ。

■『深夜のダメ恋図鑑』1〜2巻(尾崎衣良)

9月にTwitterで話題といったらこれ。Kindleはランキング急上昇、昨日見たら地元書店(地方中規模店)でも1・2巻とも面に出されていたので、おそらく紙にも波及したのだと。内容はダメ男のショートエピソードを描くオムニバス。サクサクと読めて快感度が高い。反面、じゃあ男である私が何を快感として読んでいるかと考えると、「自分はさすがにここまでダメじゃない」という優越感なんじゃないかという部分に行き当たってしまうので、その辺は怖いところ。
面白いのは年下のダメ彼氏と付き合う佐和子のエピソードで、ダメでありながら付き合い続けている、案外ラブラブという関係。「ダメだけど譲歩できる」というラインと、「絶対に譲歩できない」というラインは他者からは見えな(理解できな)かったりするというのを改めて感じる関係だ。

■『イケメン共よ メシを喰え』(東田基)

9月に読んだ中で特に大当たりだったタイトル。イケメンの食事シーンをテーマにした作品なのだけれど、絵よし、テンポよしで読み飽きない。ハイテンションの緩急が秀逸。いわゆる女性向けテーマ誌での連載作だけど、このテンポ感のよさは、『波よ聞いてくれ』あたりの沙村作品好きにもオススメしていいんじゃないかなという印象。もうお前らが読まないというなら、俺がビンタしながら送りつけてやるから読め。

■『江川と西本』4巻(森高夕次/星野泰視)

いよいよ江川のドラフト騒動に。この面白さは何だろうと考えていくと、アメトーーク的なマニア語りが一番近いのかもしれないと思ったり。

■『ナゾ野菜』カレー沢薫

最近思うんですけど、カレー沢作品って読めば読むほどハマっていくから、依存性のある薬物でも混ぜてあるんじゃないですか? ということで、最近「脱法マンガ」と呼んでます。

■『推しが武道館いってくれたら死ぬ』2巻(平尾アウリ)

俺も『推しが武道館いってくれたら死ぬ』がアホほど売れてくれたら死ぬ。平尾先生のギャグセンスをよくぞここまで引き出したというテンポのよさ。平尾ヒロイン像はやっぱり徹底してピュアなんだけれど、ギャグテンポのよさで過剰にピュア系に偏らないバランスになっていて読み味抜群。「アイドルマンガ」「百合系」というカテゴライズで敬遠している人は、私が口にこけしを突っ込むので早く読んでください。

■『いいね!光源氏くん』(えすとえむ)

光源氏が現代にタイムスリップしてきてOLの家でニート生活送ってるっていう、説明を書いた時点で脱力感溢れる、この、ね! だいたいタイトルがいい。「いいね」て。「ガルパンはいいぞ」的なというか、「尊い」しか言葉が出てこなくなったオタク的なというか。『いいね!光源氏くん』はいいぞ。あと、えすとえむ先生の描く女性キャラ、私すごい好きです。

■『ニーチェ先生』6巻(ハシモト/松駒)

コンビニネタから始まった連載なわけだけれど、今巻あたりは免許合宿編があったり、これ、巻が進むなかで、形を変えた学園日常ギャグのようなジャンルになっているのかもしれないなと。社会人ではあるのだけど、モラトリアム的な世界。

■『かげきしょうじょ!!』2巻(斉木久美子)

この期に及んで読んでないという人がいたら市中引き回しにしていいんじゃないかなと思ってるんですけど、うーん、市中引き回しにしたら最終的に私が打ち首獄門になるのかな。こんな世の中じゃ、ポイズン。何のレコメンドにもなってないな、これ。

■『てをつなごうよ』1巻(目黒あむ)

目黒あむ先生の新作はブラコン(弟)女子高生と幼なじみのイケメン、そして引っ越してきたイケメンのふんわり三角関係。無表情系ヒロインですよ、奥さん。
特筆すべき……といっていいのかわからないけど、やはり全体から見て珍しいパターンなのは、実質的に主人公にあたるのが男子である点。カバーに描かれているのはヒロイン・小豆なんだけれども、実は彼女の内面は明示的には描かれなくて、むしろ心情が描かれているのは幼なじみのイケメン・千花の方。ここのところ、別マは『俺物語!!』『町田くんの世界』、少し広くとらえれば『虹色デイズ』あたりも含め、男性主人公、男子キャラ視点の作品が着実に増えている印象で、それはけっこう面白い変化なのかもなと。なかでも、ここまでヒロインがブラインドな他者として描かれるのは珍しい。

■『やおろちの巫女さん』1巻(武月睦)

yomina-hareでレビューを書いてますのでそちらで。9月のヤンマガサードタイトルはどれも強烈、ハズレなしなのでもう全部どうぞ。

■『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』2巻(赤坂アカ)

積んだなー(2か月)。2巻からヤンジャン移籍後。「頭脳戦」という部分にフォーカスしたラブコメディという打ち出しなんだけど、本質は何かというと「要するに童貞コメディ」で、2巻はそれがより明確になった感じ。「学園のヒロインで日本屈指のご令嬢」と「イケメンで頭脳明晰で名門学園の頂点の男」の告らせ合いコメディという壮大なハッタリを効かせてスケール感を上げた童貞バカマンガです。皆さん、安心して読んでください。

■『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』1巻(武田一義)

太平洋戦争のペリリュー島での兵士の生活と戦争をテーマにした作品。積んだね(2か月)。戦争もの、歴史ものとして丁寧に……とかそういう魅力ももちろんあるんだけど、ひとつ挙げるならこの作品で圧倒的に説得力があるのは景色。壕に入っているときの狭い感じ、ジャングルの木々に包まれている感じ、そこを抜けたところで一気に視界が広がる感じといった視界の再現が、そこに立っているような臨場感を感じさせてくれる。ある種の生々しさの源泉はたぶんそういう抜群の景色の表現によって裏打ちされてるんだと思う。

■『87CLOKERS』9巻(二ノ宮知子)

いや、これ、ラストすごいよ。オーバークロックという題材、その競技としての面白さと恋模様というストーリーがカチッとハマった見事なラスト。圧巻。

■『ヒナまつり』11巻(大武政夫)

本編はいうまでもなく面白いんですけど、今巻の帯、背の作者名の横に「躍動する平成の怪物!」って入ってるの、ものすごい面白いなっていう(本当にメモ)。

■『初恋の世界』1巻(西炯子)

『娚の一生』『姉の結婚』と30代、40歳目前と年齢がジワッと上がってきて、本作は40代に入った女性が主人公。印象的だったのは友人を止めるために主人公が言った「私たち、40なんだよ」というセリフ。前出の2作だとまだどこかに「このまま恋愛や結婚とはもう無縁なのかな」という迷いのような余地があったのに対して、今作の40代に入った彼女たちは迷いというよりも「もう今から人生の舵を切る年齢ではない」というような感覚を感じる。

■『亜人ちゃんは語りたい』4巻(ペトス)

相変わらずひかりちゃんを見るたびにヨダレをダラダラ垂らすだけの肉人形になってしまう私こと35歳独身なわけですけれども、それはともかくとして、今巻で思ったのは『亜人ちゃんは語りたい』という作品は、やっぱりこれ教師ものなのかもなということ。亜人・日常系という部分の魅力を見せつつ、ドラマとしてはひとつの今求められる教師像を描いているという側面があるんだろうなと。

■『ヤギくんとメイさん』1巻(びっけ)

やったねたえちゃん! 実に4か月積んだよ! という感じでもはや周回遅れどころの騒ぎではない積み方をしてしまっていたんだけれども、いや、ちくしょう面白いな、おい。郵便局を舞台に、郵便、手紙をテーマにしたエピソードを描いていく作品。舞台となる郵便局の局員のメンバーが魅力的。個人的に好きなのは、タイトルにもなっている2人のラブが進むのか、と思いきや、割と1巻では「普通に同僚」というテンション低めな感じなのが、クラスメイト的というか、「学校」のなかであった感覚に近い印象で、非常に心地いい。というか、何年も同じこといってる気がするんですけど、ARIA面白いよ。

■『社畜! 修羅コーサク』1巻(江戸パイン)

9月刊ヤンマガサードタイトル。タイトルの時点でうすうす気がつくと思うんですけど、内容も「修羅の国・墓多(はかた)に左遷された社畜・修羅コーサクのサラリーマンギャグ」っていう、な? 頭悪そうだろ? 頭悪いねん!! 『北斗の拳 イチゴ味』読んだ次にこれ読んだから、もうどんどん知能指数が下がっていくのを感じる。たまらない。ヤンマガは伝統的に頭の悪い作品をこともなげに掲載するわけですけれども(言いがかり)、ヤンマガサードもそういうちょっとどうかしてるスピリットをしっかり持っているんだなと嬉しくなる。
だいたいをして、帯で弘兼憲史先生のコメントを取ってるのが狂気としか思えないし、「私は許した。博多の皆さんも許してやってほしい」ってコメント内容も天才すぎる。本当に許していいんですか、弘兼先生? 「訴えます!!」って書かなくて大丈夫ですか? っていうか、「本家『島耕作』、弘兼憲史先生黙認!!」とかいって、しれっと分家ヅラしてますけど、本当にいいんですか?
あ、見どころですか? イケメンの先輩・ファク山はさまるが、何かにつけて「ファク」って入れて喋るんですけど、「オーマイファック」あたりまではわかるけど、「おかげで予定がファクった」とかもう文脈で読み取るしかないレベルで、読解力を求められる作品なので、うーん、国語の教科書とかに載せたらどうですかね? 国語っていうか、ファク語? 
あと、粉長が修羅コーに後を託して粉末になって消えるシーンが感動的です。何を言ってるかまったくわからないと思うけど、俺は事実しか書いてない。

■『素敵な彼氏』2巻(河原和音)

yomina-hareで書いた『由良くんの10%には秘密がある』のレビューとも絡むけれど、本作の王子役である桐山くんもまた草食的な当たりの柔らかさをベースにしつつ、小悪魔系で引っ張っていく肉食要素がハイブリッドされた王子像なのかもな、というのが感じるところ。引っ張ってくれる男の子、肉食系というのは常に王子像のスタンダードのひとつなのだけれども、一方でヒロイン自身がアクションを行う、強いヒロインというのも少女マンガにおいて重要な要素なわけです。つまり「ただ見初められたお姫様」というのは、なりたい自分像のトレンドとはちょっとズレる。『素敵な彼氏』でもヒロインは元気系で、自分からアクションする女の子でもあるわけだけど、もしかしたらそういうトレンドに対する揺り返しが少しずつ来ていて、俺様系のように「ともすれば怖い」という肉食ではなく、当たりが柔らかいけど引っ張ったり振り回したりしてくれる王子像というのは、そろそろ時代の要請としてトレンドになってくるのかもしれないという予感を改めて感じたり。そういう側面から見ると『水玉ハニーボーイ』なんかも、ズバリ草食系と肉食のハイブリッド感がある。

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