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別れと出会い

 近くのスーパーに業者が来て、金や銀製品、時計、ブランドバッグなどを買い取る、というチラシをみつけた。2万円以上の取引があったら、商品券を進呈する、とある。我が家はいま、天袋や棚の中を整理中でいくつか見つけ出したお宝?もあり、ショッピングカートに括り付けて、出かけてみた。

 エスカレーター上り口、と書かれていたので行ってみると、小さなカウンターがあり、椅子が二つ、カウンターの上にはヴィトンのバッグが二つあるだけで、人影がない。「すぐ戻ります」の札・・・日本は本当に平和だ、中古とはいえ、ヴィトンのバッグを置いたままで出かけちゃうんだから、と思って眺めていると、「すみませ~~ん」と業者さん。あのテレビ通販「夢グループ」の社長にそっくりだ。

 さっそく銀の舟の彫刻の額を査定してもらった。父が勤続何年かで会社からもらったもので、正直いってセンスがない。それでも記念だからと、とっておいたが場所をとるし重いしで、持ち出した。本人はすっかり忘れているのだから、許されるだろう。予想通り1000円とのこと。
 
 次はわたしのプラダのショルダーバッグ。イタリア旅行中、一生一度のイタリアなんだから、と買ったものだ。でも、わたしはどうもブランド物は苦手で、持って歩いているとむずむずする。お金持ちだろう、とみせびらかしているようで。買わなきゃいいのに、旅には買い物をさせる魔力があるのだ。プラダの証拠のカード、布袋もついている。夢社長は、カードをまず確かめ、バッグをひっくり返して角を調べ、すれているか、傷がないか、ゆっくり回しながら見ている。
「二回しか使ってないから、奇麗でしょう?」とわたし。
「これ、定価4.5万ですね、う~ん、1万円で引き取りですね」と社長。
安い!でも、もう10年以上も前のものだから、こんなもんだろう、わたしは素直だ。父の使わなくなった腕時計(もちろん、ロレックスではない)や、歯につめてあった金なども合わせ、2万円以上になったので、商品券ももらって帰って来た。

 帰りに最近友達と行って気に入ったカフェで、ピザとコーヒーをたのみ、
ふぅ~っと一息。この2万円で、センスがよくて使いやすい、一生使えるバッグを買おうか、プラダは失ったが「迷う」楽しみと出会えた。


白・10ユーロで買った偽物、こちらの方がずっと使いやすかった
黒・本物


             おわり






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